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第三話「戦闘チート令嬢、父と対面する」

ー/ー



──私は、何かがおかしいと確信していた。

剣を握った瞬間、身体が勝手に動き、頭の中に鮮明な戦闘知識が流れ込んできた。
あまりにも自然すぎて、まるで生まれつき剣の扱いを知っていたかのよう。

これが……スキル《剣聖》の力?

ただの貴族令嬢が持つはずのない、戦闘に特化した才能。
私は間違いなく普通ではない──そんな確信が湧いてくる。

しかし、その異常さに気づいたのは、私だけではなかった。

「……お嬢様……?」

隣で私の動きを見ていたメイドのミレーヌが、顔を真っ青にしていた。
彼女は怯えたような目で、震える声を絞り出す。

「お、お嬢様……なぜ、そのような剣の扱いを……?」

「……えっと、なんとなく?」

まったく説得力がない。
実際、私自身もどうしてこんなことができるのか分からないのだから仕方がない。

だが、ここで変に誤魔化そうとすると、かえって怪しまれる気がした。
とりあえず、何も考えずに無邪気を装うのが最適解かもしれない。

「ほら、こうやって剣を振ると、なんだか楽しいですわね!」

私はあえて明るく振る舞いながら、軽く剣を振ってみせた。
ひゅん、と風を切る音が響く。
それだけで、ミレーヌの顔はさらに青ざめた。

──が、その時だった。

「何をしている?」

低く響く男の声。

背筋がピンと張るような重みのある声音。
振り向くと、そこには鋭い青の瞳を持つ父、レオン・フォン・エルフェルト公爵が立っていた。

ミレーヌはすぐさま深く頭を下げる。

「ご、ご当主様……! 申し訳ありません、お嬢様が……!」

「お嬢様が?」

レオン公爵の視線が、私の手に握られた剣へと移る。
そして、次の瞬間──彼の瞳が、微かに揺らいだ。

「……その剣、お前が握ったのか?」

「ええ、そうですわ」

私が頷くと、父は一瞬だけ何かを考えるように沈黙した。
その後、彼は重い口を開く。

「……少し、付き合え」

「え?」

気づけば、父の手には一振りの剣が握られていた。

──数分後、私はエルフェルト公爵家の私設訓練場へと連れてこられた。

そこは、騎士たちが日々鍛錬を積むための広大な空間。
訓練用の木剣や標的の並ぶその場所で、私は父と向かい合っていた。

「お前の剣技を見せろ」

「……私の?」

「いいから、かかってこい」

父は短く言い、剣を構える。
……えっ? これってまさか、本気の模擬戦?

「ちょっと待ってくださいませ!?」

突然の申し出に、私は慌てた。

しかし、父は動じることなく、静かに言葉を続ける。

「リリアナ、お前は今、確実に普通ではない」

「……っ」

「さっきの剣捌きを見た。まるで熟練の騎士のような動きだった。
だが、たった数回剣を振っただけで、そんな動きができるはずがない」

──確かに、その通りだった。

私自身も、なぜこんなに剣が扱えるのか分からない。
でも、今この場で「スキルがあるから」と言っても、普通に信じてもらえるのか分からない。

「……お父様は、私を試そうとしているのですか?」

「……違う。お前が、何者なのかを知りたいだけだ」

鋭い目が、私を射抜く。

これまで厳格な貴族の父親として接していたレオン公爵の顔が、
今はまるで戦場に立つ騎士のように見えた。

──どうやら、逃げることは許されないらしい。

私は、静かに息を吸い込み、そして剣を握った。

「……分かりましたわ」

「よし、なら構えろ」

父が剣を構えた瞬間──

スキル発動──《剣聖》

私の身体が、勝手に動き始めた。

──ガキィンッ!!

一瞬の衝突。

鋭い刃が交差し、重たい衝撃が走る。
だが、驚くべきことに──私は、その衝撃をまるで受け流すように対処していた。

──否、完全に圧倒していた。

「……なっ!?」

父が驚愕の表情を浮かべる。
それも当然だった。

私は、一撃目から父の剣を弾き飛ばしていたのだから。

「お、お嬢様が、公爵様の剣を……!?」

周囲の騎士たちがどよめく。
その様子を見て、私はようやく気づいた。

──これ、ヤバいのでは?

私はただ、身体に流れ込んでくる「最適な動き」に従っただけだった。
けれど、結果として、公爵家の当主である父の剣を、私が完全に上回ってしまったのだ。

父はしばらく呆然としていたが、やがて深く息を吐き出した。

「……リリアナ」

「は、はい」

「……お前、本当に俺の娘なのか?」

そんなことを聞かれましても。

──私は、ただの転生者なんですけど!?


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──私は、何かがおかしいと確信していた。
剣を握った瞬間、身体が勝手に動き、頭の中に鮮明な戦闘知識が流れ込んできた。
あまりにも自然すぎて、まるで生まれつき剣の扱いを知っていたかのよう。
これが……スキル《剣聖》の力?
ただの貴族令嬢が持つはずのない、戦闘に特化した才能。
私は間違いなく普通ではない──そんな確信が湧いてくる。
しかし、その異常さに気づいたのは、私だけではなかった。
「……お嬢様……?」
隣で私の動きを見ていたメイドのミレーヌが、顔を真っ青にしていた。
彼女は怯えたような目で、震える声を絞り出す。
「お、お嬢様……なぜ、そのような剣の扱いを……?」
「……えっと、なんとなく?」
まったく説得力がない。
実際、私自身もどうしてこんなことができるのか分からないのだから仕方がない。
だが、ここで変に誤魔化そうとすると、かえって怪しまれる気がした。
とりあえず、何も考えずに無邪気を装うのが最適解かもしれない。
「ほら、こうやって剣を振ると、なんだか楽しいですわね!」
私はあえて明るく振る舞いながら、軽く剣を振ってみせた。
ひゅん、と風を切る音が響く。
それだけで、ミレーヌの顔はさらに青ざめた。
──が、その時だった。
「何をしている?」
低く響く男の声。
背筋がピンと張るような重みのある声音。
振り向くと、そこには鋭い青の瞳を持つ父、レオン・フォン・エルフェルト公爵が立っていた。
ミレーヌはすぐさま深く頭を下げる。
「ご、ご当主様……! 申し訳ありません、お嬢様が……!」
「お嬢様が?」
レオン公爵の視線が、私の手に握られた剣へと移る。
そして、次の瞬間──彼の瞳が、微かに揺らいだ。
「……その剣、お前が握ったのか?」
「ええ、そうですわ」
私が頷くと、父は一瞬だけ何かを考えるように沈黙した。
その後、彼は重い口を開く。
「……少し、付き合え」
「え?」
気づけば、父の手には一振りの剣が握られていた。
──数分後、私はエルフェルト公爵家の私設訓練場へと連れてこられた。
そこは、騎士たちが日々鍛錬を積むための広大な空間。
訓練用の木剣や標的の並ぶその場所で、私は父と向かい合っていた。
「お前の剣技を見せろ」
「……私の?」
「いいから、かかってこい」
父は短く言い、剣を構える。
……えっ? これってまさか、本気の模擬戦?
「ちょっと待ってくださいませ!?」
突然の申し出に、私は慌てた。
しかし、父は動じることなく、静かに言葉を続ける。
「リリアナ、お前は今、確実に普通ではない」
「……っ」
「さっきの剣捌きを見た。まるで熟練の騎士のような動きだった。
だが、たった数回剣を振っただけで、そんな動きができるはずがない」
──確かに、その通りだった。
私自身も、なぜこんなに剣が扱えるのか分からない。
でも、今この場で「スキルがあるから」と言っても、普通に信じてもらえるのか分からない。
「……お父様は、私を試そうとしているのですか?」
「……違う。お前が、何者なのかを知りたいだけだ」
鋭い目が、私を射抜く。
これまで厳格な貴族の父親として接していたレオン公爵の顔が、
今はまるで戦場に立つ騎士のように見えた。
──どうやら、逃げることは許されないらしい。
私は、静かに息を吸い込み、そして剣を握った。
「……分かりましたわ」
「よし、なら構えろ」
父が剣を構えた瞬間──
スキル発動──《剣聖》
私の身体が、勝手に動き始めた。
──ガキィンッ!!
一瞬の衝突。
鋭い刃が交差し、重たい衝撃が走る。
だが、驚くべきことに──私は、その衝撃をまるで受け流すように対処していた。
──否、完全に圧倒していた。
「……なっ!?」
父が驚愕の表情を浮かべる。
それも当然だった。
私は、一撃目から父の剣を弾き飛ばしていたのだから。
「お、お嬢様が、公爵様の剣を……!?」
周囲の騎士たちがどよめく。
その様子を見て、私はようやく気づいた。
──これ、ヤバいのでは?
私はただ、身体に流れ込んでくる「最適な動き」に従っただけだった。
けれど、結果として、公爵家の当主である父の剣を、私が完全に上回ってしまったのだ。
父はしばらく呆然としていたが、やがて深く息を吐き出した。
「……リリアナ」
「は、はい」
「……お前、本当に俺の娘なのか?」
そんなことを聞かれましても。
──私は、ただの転生者なんですけど!?