王女様は変わったお性癖

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隣国との戦争で王は「敵将の首をとった者の願いを叶えよう」と声を高らかに宣言した。

戦は終結し、勝利をおさめた英雄が願いを申し出る。

「王の愛娘から一人、我が妻として迎えたい」と。

頭を抱えて唸るばかりの王の前に、愛娘の一人が名乗り出る。

「お父様。私が此度の英雄のもとへ嫁ぎましょう」


その英雄は見上げるほどに大きな銀色の毛並みをした狼だった。

瞳は左右で色が異なり、左目は黄金、右目は深紅でまるで宝石のよう。

ふさふさの尻尾が右に大きく揺れているのをみて王女・ルーナは目を輝かせた。

(な、なんて立派な!)

うずうずとした気持ちを押し込め、伸びそうになった手を後ろに引っ込めると咳払いをする。

「あ、あなたが英雄様でいらっしゃいますか?」

ルーナの問いに狼は濡れた鼻をスンと鳴らす。どうやら質問に対し、そうだと言っているようだ。

黒いちょぼっとした鼻を突きたくなる欲求を抑え込み、息を吐いて胸に手を当てる。

「私、アイスノ王国・第一王女のルーナと申します。あなた様の嫁になるため参りました。どうぞよろしくお願いいたします」

「……来い」

草を踏む軽い足音が遠ざかっていく。

(喋りましたわ)

土にうっすらと足跡がついており、丸みのあって人間のものと異なっていた。

それを見てルーナの口元が歪みそうになるが、なんとか堪えて咳払い。

「お待ちください、旦那様!」

足場の悪い森でもルーナの浮き立つ気持ちによって足取りは軽い。

これは生け贄といっても過言ではない獣への嫁入りだ。

だというのにルーナの目はキラキラと輝いており、高揚感を隠しきれていない。

狼だから自然と共に生きるのだろうか。

いつか衣服も身にまとうことなく、四つ足で大地を走るようになるだろうか。

嗅覚が発達して、手足で相手をバシバシ叩くかもしれない。

時には毛づくろいとして銀の毛並みを舐めているかも……。

(いやん。私ってば、まだ早いですわよ)

ルーナははじめから銀狼に嫁ぎたくて、自ら名乗り出た。

雄々しく美しき銀狼、そのウワサに下腹部がぽわぽわと疼いたから。

想像しただけで「この銀狼が運命のお相手」と、人ならざるものへの抵抗もない。

銀の狼と結婚をするという未知の領域に踏み込みながらもワクワクが上回っていた。


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頭を抱えて唸るばかりの王の前に、愛娘の一人が名乗り出る。
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瞳は左右で色が異なり、左目は黄金、右目は深紅でまるで宝石のよう。
ふさふさの尻尾が右に大きく揺れているのをみて王女・ルーナは目を輝かせた。
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それを見てルーナの口元が歪みそうになるが、なんとか堪えて咳払い。
「お待ちください、旦那様!」
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これは生け贄といっても過言ではない獣への嫁入りだ。
だというのにルーナの目はキラキラと輝いており、高揚感を隠しきれていない。
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いつか衣服も身にまとうことなく、四つ足で大地を走るようになるだろうか。
嗅覚が発達して、手足で相手をバシバシ叩くかもしれない。
時には毛づくろいとして銀の毛並みを舐めているかも……。
(いやん。私ってば、まだ早いですわよ)
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雄々しく美しき銀狼、そのウワサに下腹部がぽわぽわと疼いたから。
想像しただけで「この銀狼が運命のお相手」と、人ならざるものへの抵抗もない。
銀の狼と結婚をするという未知の領域に踏み込みながらもワクワクが上回っていた。