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第4章〜推しが、燃えるとき〜⑦

ー/ー



 11月17日(月)

 ◆  ◆  ◆
 石塚会長辞意 出直し選へ
 ◆  ◆  ◆

 今月7日に、生徒会選挙に当選した石塚雲照(いしづかうんしょう)生徒会長が14日、辞意を表明し、出直し選挙を行う意向であることを表明した。石塚会長は17日に正式に辞意表明を行い、出直し選挙として実施される生徒会選挙に立候補する意向。
 新たな生徒会選挙は、21日に公示、投票日は28日となる模様。
 
 ◆  ◆  ◆

 週末の石塚会長の会見を受けて、一宮(いちのみや)高校には、ふたたび混沌としたムードが漂いはじめる。

「石塚会長に、もう一度、全校生徒の民意を届けたい! 石塚会長がんばれ!」

 という会長擁護の声も聞かれたが、多くの生徒は、

「また、選挙をやるの……?」

と、困惑および、ゲンナリとした気分になっているようだ。
 また、生徒会に自治権が与えられている一宮高校と言えども、予算という現実的な側面には勝てず、出直し選挙は、実質、一週間という短期決戦で行われる。

 それだけに、他の候補の準備が整わない、現行の生徒会の支持率が高い期間であれば、出直し選挙は、現職が圧倒的に有利だ。

 先日の生徒会選挙の正当性が問われたとき、石塚雲照ならどうするだろう―――?

 そう考えて、生徒会条例などの規則をあらためて読み直していた僕は、フェザーン社との関係が明るみに出た時点で石塚会長が、この手段に打って出てくるだろう、とあらかじめ予測していた。

 放課後に集まった放送室で、僕は後輩の女子生徒から質問を受ける。

「ケイコ先輩と佐々木先輩は、石塚会長が、出直し選挙をすることがわかっていたんですか?」

 ミコちゃんの問いに、軽くうなずいて、

「まあ、これまでのことを考えると、十分に予想できたかな……」

と、苦笑する。
 一方のケイコ先輩は、表情を変えないまま、あごに手を当ててつぶやく。

「でも、これは石塚くんにとっても大きな賭けだと思うんだよねぇ……」

「どうしてですか? 佐々木先輩は、石塚会長が圧倒的に有利だと見ているみたいですけど……」

 ミコちゃんの質問に、先輩は思案顔のまま答えた。
 
「それはどうかな? 正直、クラブ連盟をはじめとして、まだ全校生徒の約4割は反石塚派だろうし、もう今度は、降谷通(ふるやとおり)とのいわゆる()()()()()と、比良野(ひらの)社長が支援するSNSの広報戦略の二つの手段が使えないから……そのことについて、このあと、選挙管理委員会から、なにか発表があるみたいよ」

 ケイコ先輩の言うように、先日の選挙結果に、内心では納得していない生徒は多そうだ。さらに、十条委員会の屋良(やら)委員長に告発された降谷通(ふるやとおり)は、停学処分となって、生徒会選挙への立候補資格が無くなる可能性が高い。
 
 そして、新たに選挙が行われることで延期となってしまった、先日の生徒会選挙の期間中に、明らかなデマ情報を流した女子バスケ部の松島いのりに対する十条委員会の証人喚問に変わって、僕のクラスメートのmichiこと間未知(はざまみち)が代表を務める選挙管理委員会が、公式会見を開くという。

 その会見を取材するため、僕たちは会場として指定された生徒会室の隣の会議室に移動した。

 学内だけでなく、学外にも大勢のファンを持つmichiが会見するということもあって、会場の会議室には、固苦しいイメージの選挙管理委員会の会見とは思えないほど、多くの生徒が集まっている。
 すでに着席している選挙管理委員会のメンバーの背後には、吊り下げ式の大型プロジェクター・スクリーンが降りていた。

 ありがたいことに、放送・新聞部用の席を四人分用意してくれていたので、その椅子に僕らが着席すると、会見用のテーブルを前にして、中央に座っていたmichiが口を開く。

「多くの生徒の皆さんに集まっていただいたので、少し早いですが、選挙管理委員会から、今後の生徒会選挙における当選管の方針を発表させていただきます。まずは、こちらの映像をご覧ください」

 彼女がそう言って、プロジェクターの操作を行うと、以前、耳にしたことのある音楽とともに、見覚えのある生徒がスクリーンに映し出された。

 顔の部分にはボカシ処理が施され、声は本人のモノとわからないよう、ボイスチェンジャーで加工されているが、それは、本来なら、この日に開催される予定だった十条委員会で証人喚問されるはずだった松島いのりが、先日の選挙期間中、(ティックタック)にアップロードされていたショート動画だった。

 動画の再生が終わると同時に、michiがふたたび発言する。

「当選挙管理委員会では、先日の生徒会選挙期間中にインターネット上にアップロードされたこの動画の中で主張されている内容が、生徒会選挙立候補者の選挙公約とは異なり、完全な虚偽であると認定しました。すでに、この動画をアップロードした生徒には調査を行い、今後、このように正確性に欠ける情報発信を行わないという誓約をいただいています」

 キッパリとした口調で発表内容を語る選挙管理委員会の代表者の言葉に、会議室に集まった生徒たちからは、ざわついた声が漏れる。

「この動画をはじめとして、先日の生徒会選挙では、事実と異なる情報が非常に多く拡散され、投票行動に影響を与えた、という声が生徒から上がっています。そこで、我々、選挙管理委員会としては、今週末に公示を迎える次回の生徒会選挙において、ネット上でのファクトチェックを行い、虚偽の情報であることが確認された場合には、即座に情報訂正の発信を行い、誤情報を発信したアカウントの照会を行って、当該生徒を教職委員会に告発することに決定いたしました」

 その一言に、いよいよ会議室の喧騒が大きくなる。

「あわせて、先般の選挙で指摘された、自らの当選を目指さない、いわゆる『二馬力選挙』についても、対抗策を講じることになりました。この対策の詳細については、今週末の生徒会選挙公示日までに、あらためて発表させていただきます。以上です」

 選挙管理委員会の代表者であるmichiが告げた発表内容を歓迎しつつ、僕は、彼女の真意を探り、彼女と選管のメンバーが、僕たち放送・新聞部の持っている情報を活用する考えがあるのかを確かめようと、質問をするため手を挙げた。


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 新たな生徒会選挙は、21日に公示、投票日は28日となる模様。
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 週末の石塚会長の会見を受けて、|一宮《いちのみや》高校には、ふたたび混沌としたムードが漂いはじめる。
「石塚会長に、もう一度、全校生徒の民意を届けたい! 石塚会長がんばれ!」
 という会長擁護の声も聞かれたが、多くの生徒は、
「また、選挙をやるの……?」
と、困惑および、ゲンナリとした気分になっているようだ。
 また、生徒会に自治権が与えられている一宮高校と言えども、予算という現実的な側面には勝てず、出直し選挙は、実質、一週間という短期決戦で行われる。
 それだけに、他の候補の準備が整わない、現行の生徒会の支持率が高い期間であれば、出直し選挙は、現職が圧倒的に有利だ。
 先日の生徒会選挙の正当性が問われたとき、石塚雲照ならどうするだろう―――?
 そう考えて、生徒会条例などの規則をあらためて読み直していた僕は、フェザーン社との関係が明るみに出た時点で石塚会長が、この手段に打って出てくるだろう、とあらかじめ予測していた。
 放課後に集まった放送室で、僕は後輩の女子生徒から質問を受ける。
「ケイコ先輩と佐々木先輩は、石塚会長が、出直し選挙をすることがわかっていたんですか?」
 ミコちゃんの問いに、軽くうなずいて、
「まあ、これまでのことを考えると、十分に予想できたかな……」
と、苦笑する。
 一方のケイコ先輩は、表情を変えないまま、あごに手を当ててつぶやく。
「でも、これは石塚くんにとっても大きな賭けだと思うんだよねぇ……」
「どうしてですか? 佐々木先輩は、石塚会長が圧倒的に有利だと見ているみたいですけど……」
 ミコちゃんの質問に、先輩は思案顔のまま答えた。
「それはどうかな? 正直、クラブ連盟をはじめとして、まだ全校生徒の約4割は反石塚派だろうし、もう今度は、|降谷通《ふるやとおり》とのいわゆる|二《・》|馬《・》|力《・》|選《・》|挙《・》と、|比良野《ひらの》社長が支援するSNSの広報戦略の二つの手段が使えないから……そのことについて、このあと、選挙管理委員会から、なにか発表があるみたいよ」
 ケイコ先輩の言うように、先日の選挙結果に、内心では納得していない生徒は多そうだ。さらに、十条委員会の|屋良《やら》委員長に告発された|降谷通《ふるやとおり》は、停学処分となって、生徒会選挙への立候補資格が無くなる可能性が高い。
 そして、新たに選挙が行われることで延期となってしまった、先日の生徒会選挙の期間中に、明らかなデマ情報を流した女子バスケ部の松島いのりに対する十条委員会の証人喚問に変わって、僕のクラスメートのmichiこと|間未知《はざまみち》が代表を務める選挙管理委員会が、公式会見を開くという。
 その会見を取材するため、僕たちは会場として指定された生徒会室の隣の会議室に移動した。
 学内だけでなく、学外にも大勢のファンを持つmichiが会見するということもあって、会場の会議室には、固苦しいイメージの選挙管理委員会の会見とは思えないほど、多くの生徒が集まっている。
 すでに着席している選挙管理委員会のメンバーの背後には、吊り下げ式の大型プロジェクター・スクリーンが降りていた。
 ありがたいことに、放送・新聞部用の席を四人分用意してくれていたので、その椅子に僕らが着席すると、会見用のテーブルを前にして、中央に座っていたmichiが口を開く。
「多くの生徒の皆さんに集まっていただいたので、少し早いですが、選挙管理委員会から、今後の生徒会選挙における当選管の方針を発表させていただきます。まずは、こちらの映像をご覧ください」
 彼女がそう言って、プロジェクターの操作を行うと、以前、耳にしたことのある音楽とともに、見覚えのある生徒がスクリーンに映し出された。
 顔の部分にはボカシ処理が施され、声は本人のモノとわからないよう、ボイスチェンジャーで加工されているが、それは、本来なら、この日に開催される予定だった十条委員会で証人喚問されるはずだった松島いのりが、先日の選挙期間中、《ティックタック》にアップロードされていたショート動画だった。
 動画の再生が終わると同時に、michiがふたたび発言する。
「当選挙管理委員会では、先日の生徒会選挙期間中にインターネット上にアップロードされたこの動画の中で主張されている内容が、生徒会選挙立候補者の選挙公約とは異なり、完全な虚偽であると認定しました。すでに、この動画をアップロードした生徒には調査を行い、今後、このように正確性に欠ける情報発信を行わないという誓約をいただいています」
 キッパリとした口調で発表内容を語る選挙管理委員会の代表者の言葉に、会議室に集まった生徒たちからは、ざわついた声が漏れる。
「この動画をはじめとして、先日の生徒会選挙では、事実と異なる情報が非常に多く拡散され、投票行動に影響を与えた、という声が生徒から上がっています。そこで、我々、選挙管理委員会としては、今週末に公示を迎える次回の生徒会選挙において、ネット上でのファクトチェックを行い、虚偽の情報であることが確認された場合には、即座に情報訂正の発信を行い、誤情報を発信したアカウントの照会を行って、当該生徒を教職委員会に告発することに決定いたしました」
 その一言に、いよいよ会議室の喧騒が大きくなる。
「あわせて、先般の選挙で指摘された、自らの当選を目指さない、いわゆる『二馬力選挙』についても、対抗策を講じることになりました。この対策の詳細については、今週末の生徒会選挙公示日までに、あらためて発表させていただきます。以上です」
 選挙管理委員会の代表者であるmichiが告げた発表内容を歓迎しつつ、僕は、彼女の真意を探り、彼女と選管のメンバーが、僕たち放送・新聞部の持っている情報を活用する考えがあるのかを確かめようと、質問をするため手を挙げた。