「ぎひひ、よく、来たな」
「……」
シェルターを想起する広い空間。
そこでバニーハートと鷹守幽は対峙した。
「ここは旧日本軍の、実験施設のひとつ、だったそうだ」
そんなことは知っている。
ウサギ少年の言葉に、黒衣の暗殺者はそんなしぐさをした。
「鷹守幽、ここがおまえの、墓場になる」
それはこっちのセリフだ。
今度はそんなふうにほほえんで見せる。
「ぎひ、たっぷりと、切りきざんでやるぞ」
お互いの口角がきしりとゆがんだ。
両者、前方へ歩み出し、じわじわと間合いを詰めていく。
そしてついに、制空権が触れた。
「どうした? かかって、こないのか?」
「……」
相手の「起こり」を狙おうと、探りあっているのだ。
「ぎひ、そのきれいな顔を八つ裂きに――」
「バニーハート」
ここではじめて、バニーハートに対し、鷹守幽は言葉を発した。
ウサギ少年は内心、びっくりしている。
「なんだ、おまえ……口が、利けたのか」
グッと身を寄せて、黒衣の暗殺者はささやく。
「愛してる」
「……」
バニーハートの顔面に、拳がめり込んだ。
「ぶぎゃっ――」
後方へ吹き飛ぶも、トンボ返りをして着地する。
「ぎひ……」
自分としたことが迂闊だった。
まさかこんな機先の制し方があったとは……
鼻が折れているな。
しかし、そんなことはどうでもいい。
屈辱、屈辱だ。
この僕が、こんなやつにまんまと乗せられ、遅れを取るなど……
鷹守幽はニヤニヤと笑っている。
「かわいい、ウサちゃん」
断片的なセリフが恐怖をあおる。
「ぎふ、許さないぞ? 僕にこんな真似をして」
バニーハートは鼻を戻し、袖で血をふいた。
「僕は、人形」
腰の両サイドにくくりつけてある、対のジャックナイフを抜く。
「おまえも、人形」
両手をクロスさせ、姿勢を落とし、かまえを取る。
「どっちも、人形」
「何が、言いたいんだ?」
クスリと笑う。
「どっちの人形が、強いかな?」
「……」
得体の知れないやつ。
怪人・バニーハートをして、そう思わせた。
彼も負けじと、袖からアイアン・クロウを露出させる。
「この僕が、おまえなんかに、負けるとでも?」
ウサギの爪が大きく広げられる。
「みんな、そう言っていた。僕に、負けたやつらは」
このセリフには、いやおうなく火がつけられた。
「なめくさりやがって……今度こそ、八つ裂きにしてやる……!」
「おいで、ウサちゃん」
「幽うううううっ――!」
「――っ!」
バニーハートと鷹守幽。
宿命にも似た彼らのラウンド3は、このようにしてその幕を開けた。