3 ぽんこつナイト再び
ー/ー ミチルが目を開けると、超イケメンのどアップがあった。
彼は目をぎゅっと閉じてミチルを守るように抱き締めている。
わーお、なんていい匂い。ってそうじゃない!
「アニー、アニー!」
ミチルはアニーの腕をポンポンと叩いて呼びかける。
それでアニーはやっと目を開けた。
「ん……んん?」
「アニー、だいじょぶ?」
アニーは突然意識をはっきりさせてから、クワッと目を見開いた。
「ミチルこそ! 平気? 何ともないかい?」
「う、うん……多分、だいじょぶ……」
だがアニーはミチルを離すことはせず、その腕に収めたまま辺りを見回した。
「ここは……どこの森だ?」
ミチルには周りの景色はよくわからなかった。目の前にはアニーの胸しかない。
だが、陽の光を感じる。おかしい。真夜中だったはずなのに。
「朝……? 何故……?」
アニーは用心深く周りを見回していた。そしてこう結論づける。
「知らない森だ」
「あの、アニー……」
「うん?」
「オレ、くしゃみ、したんだよね……」
そうして二人はやっと思い出した。
ミチルが突然鳥の羽根の大群に囲まれたこと。
はずみでくしゃみをしたこと。
必死で、お互いにしがみついたこと。
「オレ、また転移しちゃったんだ……」
しかも今度は。
「アニーも、一緒、に……?」
ミチルはようやく顔を上げてアニーの顔を見た。
輝くようなイケメンは、てへっと笑って答える。
「……きちゃった♡」
「ええええっ!?」
ミチルの大声でアニーは顔を顰めながら笑っていた。
「何ここ、もう……どこ、ここぉ?」
ミチルとアニーは当てどなく森を歩いていた。
もう30分は歩いたのに、一向に変わらない景色にミチルはうんざりだった。
「ミチル、少し休もうか」
「うん……」
そうして二人は大きな木の下に腰かける。
しばらくするとそよそよと涼しい風が木陰から吹いてきた。
「ごめん、アニー。オレのせいで変な所に連れてきて……」
ミチルは心底情けなくなった。
くしゃみが出そうな時点でヤバいと思ってしまった。
一人でまた知らない所に飛ばされたくない。助けて。
そんなことを願ってしまった。アニーの都合など構わずに。
ルブルムから遠く離れた大陸だったらどうしよう。
いや、もし、今度こそ別の異世界だったら?
アニーまで連れてきてしまって、そんな責任の重さにミチルは半べそをかく。
だが、アニーはケロッとしていた。
「俺は、これで良かったと思ってるよ」
「ええ!? ウソ!」
信じられないミチルがその顔を見ると、アニーはこの上なく優しく笑っていた。
それからミチルの頬に手を伸ばす。
「あのままミチルを一人で行かせたら俺は後悔で死ぬところだった。もう君がいない世界は考えられない」
「へ……」
ほっぺを撫で撫でされながらミチルは固まった。
何それ、何の口説き文句? え、マジ? 口説かれてんの!?
やだあ! またうまいこと言ってえ! そんなに気を使わなくていいのにぃ!
……と軽口が言えたら良かったのに。
なのに、アニーの瞳が熱っぽくてミチルは何も言えなかった。
「あー、でもひとつだけ残念だなあ」
「何?」
アニーはミチルの戸惑いを感じ取ったのか、頬から手を離して明るい声で呟いた。
「いつの間にか朝になっちゃってるじゃん……今夜キめられると思ったんだけどなあ」
「ナニが?」
「まあ、チャンスはいくらでもあるよねえ。これからもずーっと一緒なんだから!」
「だからナニがあああぁ!」
ミチルは昂った感情を大声で発散し、アニーはそれを笑って躱した。
イケメンは自信と余裕があるので長期戦を選んだのだ。
ミチルがいつものようにギャーギャー騒いでいると、森の木々もそれにつられてザワザワと揺れた。
キャーキャーと猿が遠くで鳴くような声が聞こえる。ぼんぼろぼーんと何かが鳴く声も。
「──!」
急にアニーは顔に緊張を走らせ、立ち膝で警戒する。
その雰囲気はミチルにもすぐに伝わった。
「な、何?」
「ミチル、静かに。俺から離れないで」
アニーはミチルを背に匿う。
しばしの静寂の後、すぐ側の茂みから黒い獣がゆっくりと姿を現した。
「ベスティア!?」
それは小さいけれど獰猛な牙を剥いた狐型のベスティアだった。
「マジかよ……本当に昼間でも黒いんだな……」
アニーは緊張を孕んだ声でベスティアと対峙する。腰に装備しているナイフに手をかけた。
狐ベスティアはアニーに狙いを定めてにじり寄ってくる。
アニーは威嚇の意をこめて、大振りな動作でナイフを構えた。
青い刃がキラリと光って、狐ベスティアは一瞬怯んだ。
「──今だ!」
アニーは一歩踏み出して、ナイフをベスティアの喉元に突き刺そうとした。
だが。
ザンッ!!
「!」
狐ベスティアはアニーの攻撃を受けるよりも先に、大きな斬撃を受けて霧散した。
「なっ……」
それは、圧倒的で、無慈悲な大きな力だった。
アニーの小手先など埃を払うようなもの。絶大な一撃だった。
「……怪我はないか?」
そうして茂みの中から大きな人影が現れる。
黒髪短髪。涼しげな目元の超イケメン。
「ジェイ!?」
ミチルの声が森に響く。
ぽんこつナイトがそこに立っていた。
彼は目をぎゅっと閉じてミチルを守るように抱き締めている。
わーお、なんていい匂い。ってそうじゃない!
「アニー、アニー!」
ミチルはアニーの腕をポンポンと叩いて呼びかける。
それでアニーはやっと目を開けた。
「ん……んん?」
「アニー、だいじょぶ?」
アニーは突然意識をはっきりさせてから、クワッと目を見開いた。
「ミチルこそ! 平気? 何ともないかい?」
「う、うん……多分、だいじょぶ……」
だがアニーはミチルを離すことはせず、その腕に収めたまま辺りを見回した。
「ここは……どこの森だ?」
ミチルには周りの景色はよくわからなかった。目の前にはアニーの胸しかない。
だが、陽の光を感じる。おかしい。真夜中だったはずなのに。
「朝……? 何故……?」
アニーは用心深く周りを見回していた。そしてこう結論づける。
「知らない森だ」
「あの、アニー……」
「うん?」
「オレ、くしゃみ、したんだよね……」
そうして二人はやっと思い出した。
ミチルが突然鳥の羽根の大群に囲まれたこと。
はずみでくしゃみをしたこと。
必死で、お互いにしがみついたこと。
「オレ、また転移しちゃったんだ……」
しかも今度は。
「アニーも、一緒、に……?」
ミチルはようやく顔を上げてアニーの顔を見た。
輝くようなイケメンは、てへっと笑って答える。
「……きちゃった♡」
「ええええっ!?」
ミチルの大声でアニーは顔を顰めながら笑っていた。
「何ここ、もう……どこ、ここぉ?」
ミチルとアニーは当てどなく森を歩いていた。
もう30分は歩いたのに、一向に変わらない景色にミチルはうんざりだった。
「ミチル、少し休もうか」
「うん……」
そうして二人は大きな木の下に腰かける。
しばらくするとそよそよと涼しい風が木陰から吹いてきた。
「ごめん、アニー。オレのせいで変な所に連れてきて……」
ミチルは心底情けなくなった。
くしゃみが出そうな時点でヤバいと思ってしまった。
一人でまた知らない所に飛ばされたくない。助けて。
そんなことを願ってしまった。アニーの都合など構わずに。
ルブルムから遠く離れた大陸だったらどうしよう。
いや、もし、今度こそ別の異世界だったら?
アニーまで連れてきてしまって、そんな責任の重さにミチルは半べそをかく。
だが、アニーはケロッとしていた。
「俺は、これで良かったと思ってるよ」
「ええ!? ウソ!」
信じられないミチルがその顔を見ると、アニーはこの上なく優しく笑っていた。
それからミチルの頬に手を伸ばす。
「あのままミチルを一人で行かせたら俺は後悔で死ぬところだった。もう君がいない世界は考えられない」
「へ……」
ほっぺを撫で撫でされながらミチルは固まった。
何それ、何の口説き文句? え、マジ? 口説かれてんの!?
やだあ! またうまいこと言ってえ! そんなに気を使わなくていいのにぃ!
……と軽口が言えたら良かったのに。
なのに、アニーの瞳が熱っぽくてミチルは何も言えなかった。
「あー、でもひとつだけ残念だなあ」
「何?」
アニーはミチルの戸惑いを感じ取ったのか、頬から手を離して明るい声で呟いた。
「いつの間にか朝になっちゃってるじゃん……今夜キめられると思ったんだけどなあ」
「ナニが?」
「まあ、チャンスはいくらでもあるよねえ。これからもずーっと一緒なんだから!」
「だからナニがあああぁ!」
ミチルは昂った感情を大声で発散し、アニーはそれを笑って躱した。
イケメンは自信と余裕があるので長期戦を選んだのだ。
ミチルがいつものようにギャーギャー騒いでいると、森の木々もそれにつられてザワザワと揺れた。
キャーキャーと猿が遠くで鳴くような声が聞こえる。ぼんぼろぼーんと何かが鳴く声も。
「──!」
急にアニーは顔に緊張を走らせ、立ち膝で警戒する。
その雰囲気はミチルにもすぐに伝わった。
「な、何?」
「ミチル、静かに。俺から離れないで」
アニーはミチルを背に匿う。
しばしの静寂の後、すぐ側の茂みから黒い獣がゆっくりと姿を現した。
「ベスティア!?」
それは小さいけれど獰猛な牙を剥いた狐型のベスティアだった。
「マジかよ……本当に昼間でも黒いんだな……」
アニーは緊張を孕んだ声でベスティアと対峙する。腰に装備しているナイフに手をかけた。
狐ベスティアはアニーに狙いを定めてにじり寄ってくる。
アニーは威嚇の意をこめて、大振りな動作でナイフを構えた。
青い刃がキラリと光って、狐ベスティアは一瞬怯んだ。
「──今だ!」
アニーは一歩踏み出して、ナイフをベスティアの喉元に突き刺そうとした。
だが。
ザンッ!!
「!」
狐ベスティアはアニーの攻撃を受けるよりも先に、大きな斬撃を受けて霧散した。
「なっ……」
それは、圧倒的で、無慈悲な大きな力だった。
アニーの小手先など埃を払うようなもの。絶大な一撃だった。
「……怪我はないか?」
そうして茂みの中から大きな人影が現れる。
黒髪短髪。涼しげな目元の超イケメン。
「ジェイ!?」
ミチルの声が森に響く。
ぽんこつナイトがそこに立っていた。
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