葵
ー/ー 昨日に引き続き、謎のお部屋に入る葵ちゃん……を、追跡しております天の声こと、私です。
「よっし、今日も沢山作っちゃりましょう!」
先に言いますけどここ、ほまれちゃんが思ってるような怪しい部屋じゃないんですよね、設備としては。葵ちゃん=お菓子のイメージが付いていると思いますので予想通りとは思いますがここは厨房です。
もちろん、お菓子作りに特化した。
大量の卵やバター、牛乳、砂糖等。卓上に収まらないくらいの材料たちの中で埋もれてる葵ちゃんが、なにやらブツブツと言いながらメモ用紙を確認していますね。
「今日はクッキーを300枚と、パウンドケーキを250人前、プリンを……350個、とな?……んぁー?!流石に多くない?!」
私も聞いたことない数ですよ、仕事終わりの僅かな時間にひとりで作るってのは……まぁ、それができてしまうのが葵ちゃんですけれど。
では、ここから彼女の物語を簡単に混じえながらお話しましょう。
彼女は元々パティシエを目指して専門学校に通う女の子でした。その子は学校帰り、意図的ではなくて事故なのですが、駅のホームから突き落とされ死んだあと……とある異世界に転生しました。そこは菓子職人自動人形が活躍するお菓子の国でした。なかなか特殊。
この人形ってのは1体が1個の製造工場くらいの能力を持ってる人形、個々に個性や感情を持っていて、予めプログラムされたひとつのレシピを元に菓子を完璧に作り上げる。
ただこの世界、ひとつの国に所有できる人形の数は決まっていて、最新の人形が開発されたらコンテストを開催して順位の低い人形は廃棄処分。というなかなかハードモード。そこに半分人間で半分機械の個体に葵ちゃんが転生。
そもそもハーフアンドハーフは禁忌なのと、転生前の記憶がある葵ちゃんはひとりで何種類もの菓子を作ることができた!さらにさらに!もちろんこれだけではなくスキルも持ってます!それは、葵ちゃんが作った菓子には全てステータス向上効果や、身体に何らかの影響が!簡単に言うと、バフが付いちゃうやつですね。
「よっし!同時進行出来るところはしてるからあとはプリンの卵液作ってから……バニラビーンズどこやーい?」
今はこんな感じで楽しくお菓子作りしている彼女ですが、結果的に廃棄処分されたのが結末。全身機械であれば機能停止するのはそこまで苦じゃ無いでしょうけど、半分人間の体ですから相当痛い思いしたのではないですかね?
それでも、葵ちゃんは元々ポジティブですから?深く考えずにこの世界で転生し直したのだと思いま――、
「さてさて?クッキーは良く出来た方かな?即死効果!それにプリンは遅効性の神経毒が、河豚も真っ青だわ!パウンドケーキはマヒ効果(弱+)かぁ……少し弱いけど脳神経麻痺さして植物人間くらいはいけるか」
とんでもねぇの出来上がってましたね?これは、俗に言う飯テロってやつですか?
「まぁなんにせよ、美味しいもの食べて死ねるんならみんな幸せよね!局長に報告しなきゃ!」
なにも考えて無いわけでは無さそう、笑顔でこんなもの作るとは。どこか心に闇があるのでしょう。
闇があるのは葵ちゃんに限らず、なんですけどね?
こんなの作ってるんだから鍵付きの部屋じゃなきゃやってられないのは分かりますが、ほまれちゃんにどう説明すべきでしょう?
意気消沈な私ですが……帰り際にコウサカくんを見つけましたよ。こちらもまた面白いことをしてるみたいで……ほまれちゃんに追及される前に、事前に偵察といきましょうか。
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