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災厄の壺 4

ー/ー



「世の中には色んな考えがあるんだよ、その中でも多数意見を元にルールや倫理なんかが考えられる」

 銀髪の少年は語り続ける。

「100年前は亜人は奴隷だという考えが世間で正しかった」

「でも今は違うんだろ!?」

 ムツヤは避けながら食って掛かった。

「そうかもしれないね、でも僕たちはそう思わない」

「いい加減にしろ!!」

 ムツヤは槍を取り出して少年に近づく。毒の壁の外から攻撃をしようとしたのだ。

 だが、その考えは少年が毒の壁を厚くすることによって防がれてしまった。

 残された道は1つ、また全力の魔法を使って少年を殺してしまうことだ。

「少なくとも僕達は亜人と分かり合うなんてできない」

「これ以上邪魔をするなら……」

「僕を殺すかい?」

 ムツヤは言おうとしていた言葉を言われて驚く。

「ほら、僕と君も分かりあえずに殺し合いをするんだ」

「違う、それはお前がやめないから……」

「僕も亜人にやめてと懇願しても、彼奴等はやめてくれなかったよ」

 この少年もやはり亜人と悲しい過去があるのだろう。

「どっちの考えが正しいか、少なくともこの場では戦いに勝った方が正しいことになるよ」

 そんなやり取りの中、ムツヤは後ろから人の気配を感じ取っていた。キエーウの増援かと思いパッと向くと

「ヨーリィ!?」

 ヨーリィがちょこんと居た。長い黒髪が月明かりを受けてキラキラと輝いている。

「あぁ、例の枯れ葉少女だね、残念だけど死んでもらうよ」

 毒の風がヨーリィを襲う。

「ヨーリィィィ!!!」

 ムツヤはヨーリィを押し倒して避けようとするが間に合わない。毒の風を受けてヨーリィの髪と服が激しくはためく。

 しかし、倒れるでもなくヨーリィはその場に立ち続けていた。

「ヨーリィ、大丈夫なのか!?」

「私はもう死んでいますから」

「やれやれ、これはまずい事になったね」

 まるで他人事のように銀髪の少年は言うと、ムツヤは微かに勝機を感じる。

「ヨーリィごめん、俺じゃ近寄れないんだ!!」

「はい、任せてお兄ちゃん」

 右手に短剣を、左手に木の杭を持ち、少年に向かって走った。

 まずは木の杭を投げるが、風で吹き飛ばされてしまう。その風が止んだ後にヨーリィが飛びかかる。

「無駄だよ」

 少年の後ろから突風が吹いて、体の軽いヨーリィは吹き飛ばされた。

 その間にも木の杭を投げ続けたが、届かずに終わる。

 着地したヨーリィの体は所々が枯れ葉に変わっていた。

 風魔法とは本来、風の中に毒や砂粒、小石を混ぜてそれで攻撃するものなのだ。

 少年は実に風魔法の基本に忠実な戦いをしている。風の中に混じった小石がヨーリィの体を傷つけていた。

 ムツヤは覚悟を決めた。あの少年は手加減して勝てる相手じゃない。遠距離で攻撃力の強い魔法の詠唱を始める。

「させないよ」

 そんなムツヤを見逃すわけもなく、毒の風が襲いかかった。

「くそっ」

 詠唱をしながらムツヤはそれを躱す、動きながら高度な魔法の詠唱は上位の魔法使いでも中々出来る者は居ない。

「やっぱり、お嬢ちゃんより君の方が先みたいだね」

 少年はデタラメに攻撃をしているわけでは無かった、ムツヤを取り囲むように毒を散布していたのだ。

 気付いたムツヤは上空高く飛んで逃げようとしたが、もうドーム状に毒が蔓延してしまっていた。

「おしまいだね」

 少年は毒のドームをギュッと小さくして言う。中に人間が居たら絶対に助からないだろう。

――

――――

――――――

「次はお嬢ちゃんの番だ」

 ヨーリィに毒が効かないことを知った少年は腕輪を光らせた。すると毒は消えて無くなる。

 これで風の魔法に専念できると思った矢先に気付いたことがあった。

 ムツヤの死体が無い。少年はハッとし周りを見渡しながらまた毒を撒き散らす。

 前、左、右、居ない。後ろ、上空にも居ない。嫌な予感がする。

 そして、下を見る。そこから湧いて出た土くれの化け物に少年はバクリと食われた。

「降参しろ!!」

 少年は足と手といった動くための骨が折れていたが、まだ息はある。

 土くれの化け物の中でまだ生きていた。

「こんな戦いの中で降参だなんて随分悠長じゃないか」

「お前は負けだ、降参しろ!!!」

「しないよ」

「どうしてだ!!」

 ムツヤと少年の押し問答が始まる。

「ムツヤ、君はキエーウのメンバーを殺したことがあるね?」

「っ!! それは……」

 大爆発でキエーウのメンバーを殺めてしまった事をムツヤは思い出した。

「僕はね、僕の考えを間違っていると思わない。変える気も無い。だったら亜人の敵になる僕を君は殺さなきゃならないんだ」

 ムツヤは言葉に詰まってしまい、なんて言い返せば良いのかわからない。

 何か良くない予感がして土くれの化け物に食われたままの少年から距離を取る。

 その口からは毒が漏れ出ていた。

 魔法を解くと化け物はただの土に変わり、ボロボロと崩れ落ちた。その中から出てきた少年は既に。

 死んでいた。毒を吸って自害していたのだ。

「何が……」

 ムツヤはダンっと地面を踏んで言う。

「何が人をここまでそうさせるんだ!!!」

「答えてやろう、憎しみだよ」

 声のする方に目をやるとキエーウの幹部であり、ムツヤの裏の道具を盗んだ犯人であるウートゴが居た。


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「世の中には色んな考えがあるんだよ、その中でも多数意見を元にルールや倫理なんかが考えられる」
 銀髪の少年は語り続ける。
「100年前は亜人は奴隷だという考えが世間で正しかった」
「でも今は違うんだろ!?」
 ムツヤは避けながら食って掛かった。
「そうかもしれないね、でも僕たちはそう思わない」
「いい加減にしろ!!」
 ムツヤは槍を取り出して少年に近づく。毒の壁の外から攻撃をしようとしたのだ。
 だが、その考えは少年が毒の壁を厚くすることによって防がれてしまった。
 残された道は1つ、また全力の魔法を使って少年を殺してしまうことだ。
「少なくとも僕達は亜人と分かり合うなんてできない」
「これ以上邪魔をするなら……」
「僕を殺すかい?」
 ムツヤは言おうとしていた言葉を言われて驚く。
「ほら、僕と君も分かりあえずに殺し合いをするんだ」
「違う、それはお前がやめないから……」
「僕も亜人にやめてと懇願しても、彼奴等はやめてくれなかったよ」
 この少年もやはり亜人と悲しい過去があるのだろう。
「どっちの考えが正しいか、少なくともこの場では戦いに勝った方が正しいことになるよ」
 そんなやり取りの中、ムツヤは後ろから人の気配を感じ取っていた。キエーウの増援かと思いパッと向くと
「ヨーリィ!?」
 ヨーリィがちょこんと居た。長い黒髪が月明かりを受けてキラキラと輝いている。
「あぁ、例の枯れ葉少女だね、残念だけど死んでもらうよ」
 毒の風がヨーリィを襲う。
「ヨーリィィィ!!!」
 ムツヤはヨーリィを押し倒して避けようとするが間に合わない。毒の風を受けてヨーリィの髪と服が激しくはためく。
 しかし、倒れるでもなくヨーリィはその場に立ち続けていた。
「ヨーリィ、大丈夫なのか!?」
「私はもう死んでいますから」
「やれやれ、これはまずい事になったね」
 まるで他人事のように銀髪の少年は言うと、ムツヤは微かに勝機を感じる。
「ヨーリィごめん、俺じゃ近寄れないんだ!!」
「はい、任せてお兄ちゃん」
 右手に短剣を、左手に木の杭を持ち、少年に向かって走った。
 まずは木の杭を投げるが、風で吹き飛ばされてしまう。その風が止んだ後にヨーリィが飛びかかる。
「無駄だよ」
 少年の後ろから突風が吹いて、体の軽いヨーリィは吹き飛ばされた。
 その間にも木の杭を投げ続けたが、届かずに終わる。
 着地したヨーリィの体は所々が枯れ葉に変わっていた。
 風魔法とは本来、風の中に毒や砂粒、小石を混ぜてそれで攻撃するものなのだ。
 少年は実に風魔法の基本に忠実な戦いをしている。風の中に混じった小石がヨーリィの体を傷つけていた。
 ムツヤは覚悟を決めた。あの少年は手加減して勝てる相手じゃない。遠距離で攻撃力の強い魔法の詠唱を始める。
「させないよ」
 そんなムツヤを見逃すわけもなく、毒の風が襲いかかった。
「くそっ」
 詠唱をしながらムツヤはそれを躱す、動きながら高度な魔法の詠唱は上位の魔法使いでも中々出来る者は居ない。
「やっぱり、お嬢ちゃんより君の方が先みたいだね」
 少年はデタラメに攻撃をしているわけでは無かった、ムツヤを取り囲むように毒を散布していたのだ。
 気付いたムツヤは上空高く飛んで逃げようとしたが、もうドーム状に毒が蔓延してしまっていた。
「おしまいだね」
 少年は毒のドームをギュッと小さくして言う。中に人間が居たら絶対に助からないだろう。
――
――――
――――――
「次はお嬢ちゃんの番だ」
 ヨーリィに毒が効かないことを知った少年は腕輪を光らせた。すると毒は消えて無くなる。
 これで風の魔法に専念できると思った矢先に気付いたことがあった。
 ムツヤの死体が無い。少年はハッとし周りを見渡しながらまた毒を撒き散らす。
 前、左、右、居ない。後ろ、上空にも居ない。嫌な予感がする。
 そして、下を見る。そこから湧いて出た土くれの化け物に少年はバクリと食われた。
「降参しろ!!」
 少年は足と手といった動くための骨が折れていたが、まだ息はある。
 土くれの化け物の中でまだ生きていた。
「こんな戦いの中で降参だなんて随分悠長じゃないか」
「お前は負けだ、降参しろ!!!」
「しないよ」
「どうしてだ!!」
 ムツヤと少年の押し問答が始まる。
「ムツヤ、君はキエーウのメンバーを殺したことがあるね?」
「っ!! それは……」
 大爆発でキエーウのメンバーを殺めてしまった事をムツヤは思い出した。
「僕はね、僕の考えを間違っていると思わない。変える気も無い。だったら亜人の敵になる僕を君は殺さなきゃならないんだ」
 ムツヤは言葉に詰まってしまい、なんて言い返せば良いのかわからない。
 何か良くない予感がして土くれの化け物に食われたままの少年から距離を取る。
 その口からは毒が漏れ出ていた。
 魔法を解くと化け物はただの土に変わり、ボロボロと崩れ落ちた。その中から出てきた少年は既に。
 死んでいた。毒を吸って自害していたのだ。
「何が……」
 ムツヤはダンっと地面を踏んで言う。
「何が人をここまでそうさせるんだ!!!」
「答えてやろう、憎しみだよ」
 声のする方に目をやるとキエーウの幹部であり、ムツヤの裏の道具を盗んだ犯人であるウートゴが居た。