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悪巧みサイドC③

ー/ー



数時間前―。

「…なーんで皆して腕っぷしのある妖怪連れてきておらんのじゃにゃーー!!」

古泉さんは学校行事ってこともあっていつも身につけている霞香姫(かこうき)っていう香炉を用いる妖怪の子しか連れてきておらず、結緋さんは肝だめしの為に人に対してほぼ害の無い妖怪を。しかも多数を連れてきている。いくら元々の力が長けているとはいえ分散させているせいで本人は烏天狗に抱っこされたまま空の上からガミガミ言ってるだけで何もできない様子。そして師匠は…

「すみませんねっ…!こちとら訳アリで消耗しちゃってるんでこれくらいしか…できないわっ!」

訳アリってのは僕が鬼門送りにしたせい、だね。
師匠はそれでも走ったり飛んだりして針を飛ばしてはいるけど大きなダメージには至っていないみたい。まぁ、まだしばらくは大丈夫そうだと思うから3人が相手している間に僕はこの後どうすべきか考えないと。

結果的に秋緋を閉じ込められたのは良かったけど、我ながらよく平静を装ってられたと思う。想定外なんだよね、師匠がこのタイミングで戻って来ちゃったのとこの土蜘蛛。

僕のさとりも万能じゃ無い。
それは僕自身に問題があるせいなんだけど一定の範囲にいないとさとれないというハンデ。それもあって出来る限り周辺の人や妖怪、幽霊とかその類のものを探って数日動いてはいたものの。こんな気配もなしにしかも結界内に入り込ませるなんて。
とりあえず師匠からどうにかしなきゃと戻ってきたけど…あらら。そろそろヤバそうかな?

「にゃー!いつもなら簡単に(ほふ)れるというのになんにゃのじゃー!あんにゃろめーー!」

誰がやったのかわかってる感じかな?これはうまく探る必要がありそう。でも、探る前に土蜘蛛の処理だね。

「師匠!秋緋は安全なところに閉じ込めときましたよ。」

「壱弥っ!お前…!あぁ!くそ!とりあえずこいつどうにかすんぞ!」

消耗してくれてて助かった、かな。のんびり戻ってきた僕にそこまでかまっていられないみたいだ。土蜘蛛もさっきより動きが鈍いね。師匠の蓄積ダメージが効いてるみたい。

「壱弥くん!私たちじゃここにとどまらせるしかできないの!何とかできるかな??」

もちろん。今この中で唯一攻撃的な使役妖怪を連れてるのは僕だけだからね。

「頼むよ、鵺。」

「心得た。」

ボールペンに入れてるとはいえ実力はちゃんとあるんだからね、鵺は。今はしがない花屋のアルバイトやってるけど…。

飛び出した鵺は僕のさとりの力を合わせた動きと本来持っている素早さで翻弄し攻撃をかわす。太く硬く、鋭い鵺の爪は重く深い傷を与える。
土蜘蛛の外殻は硬い蜘蛛の体毛に覆われていて簡単に攻撃は通らない。けれど、師匠の毒針術(どくしんじゅつ)での細かい攻撃。古泉さんの妖怪の香。致命傷には至らないもののようだけど防御系統に対して弱体化を(うなが)す効果を持ってるみたい。これなら。

「グギャァァァッ!!」

汚い声。
弱くなっていた外殻と、元々急所であろう首と胴体のつけ根の部分を外殻もろ共体液を撒き散らすくらいえぐり裂かれればそんな声になるかな。

「…終わりましたね、皆さんご無事ですか?」

声を上げた後、動かなくなった土蜘蛛を確認してから師匠たちに声をかけた。息も絶え絶え…文字通り3人とも肩で息をしてる。

冷静なのは僕だけ。
冷静ってのは少し違うか。緊張が正しいかも?だって師匠に睨まれちゃってるからね。そんな僕と師匠の間を割くように結緋さんが地上に下りてきたけど。

八塚(やつか)のせがれじゃな!おぬし、もうここまで力をつけておったのか!ようやった!」

褒め散らかしてくれるのはありがたいけど視線が痛いね。どうしようかな。

「壱弥…お前いくらなんでも―」

「あーーーー!!!!」

師匠もあれかな。秋緋に似て大事なところで邪魔される体質持ってる感じかな?ふふ、さすが親子ってかんじ。

「結緋さん、猫さん解けてますよ!私も!」

なにかと思えば皆の猫化が解けてるだけ…まって。何故このタイミングで?

「おぉぉ!本当じゃの!秋緋が覚醒でもしたのかの?!はっ!?秋緋!秋緋はどこじゃー!!」

「あ、秋緋ならこの先の旧校舎に…」

「急ぐのじゃ!一人で寂しがっているに違いないのじゃ!」

場所を教えたらすぐダッシュ。なんという過保護。心配すべきところがズレてるというかなんというか。これに乗じて師匠のこともスルーできれば…は、無理か。

「…壱弥、まずは礼を言う。助かった。」

ゆっくりと僕に近づき「向かいながら話すぞ」と背中を叩かれた。

「壱弥、俺は怒ってる。何故かわかるか。」

だんまりをしていたらコツン!とげんこつで頭を叩かれた。なのに、痛くはなかった。

「いいか、壱弥。まだ現世で生のある妖怪を簡単に鬼門に送るんじゃねぇ。そんなことは俺らが簡単にしちゃならねぇ事だ。そこは間違えるんじゃねぇよ?」

「それだけ…ですか…?」

拍子抜けもいいところ。こんなことで許される?僕はあなたも送ったのに?

「ん?俺は鬼門に入ったところでなんともないぞ?知らなかったか?鬼門は俺の嫁さんのテリトリーでな。特殊な【鬼印(きいん)】のおかげで出入りは問題ないんだ。出入りは…。」

僕の調べもまだまだ甘かったみたいだね。なんとなく大丈夫かなとは思っていたし、邪魔になるから遠くにいてもらおうとしただけだけど。早く戻ってきたのもうなずけるや。

「じゃあなんでボロボロで…?」

「…嫁さんに会ってな。すずめも無事保護されててお礼も兼ねてお話ししてたんだが…。めっちゃ怒られてお説教とお仕置きされてこのザマよ。だからもうこんなことしちゃだめだぞ!俺が怒られるから!!怒ると怖いの!!マジで!!」

な、なるほどね。夫婦関係がよくわかるお話だったよ師匠。ありがとう。

「あとお前の『約束』ってやつ。」

本題、だね。

「…あの時のだな?」

僕は静かに頷いた。

「まったく。基本的にはお前の好きに動けばいい。だが、今回みたいに(ことわり)を破るようなことはするんじゃねぇぞ。あいつもそんな事望んでねぇだろ。聞いたらぜってぇ怒るぞあいつは。秋緋の為に必死になってるのはお前だけじゃない。俺も結緋さんも同じだ。ひとりで全部やろうとするな。」

「確かにですね。必死になりすぎて、師匠も秋緋と口聞いてもらえなかったですもんね。」

うるせぇ!とチョップされちゃった。
それにしてもまさかの展開、かな。今の真砂家の事情が僕と秋緋が小さい時にした約束と都合がいいのだろう。少し怒られただけで済むってことはそういう事なんだろう。

「…っと、あそこだな。おぉおぉ。無理やりお前の結界破いてるぞ結緋さん。おっかないなぁ…。」

結緋さんがそれ聞いたら奥さんの何倍もひどい目に合いそう。

そして今―。
約束を果たせる筈だったけど、結果的に失敗しちゃったな。皆がここまでこられたらもうどうしようもない状況だ。

「僕は別に…。」

何もできなかった。挽回しようにも、師匠の「好きにしろ」は「監視はつけることになるが俺が許せる範囲内なら構わない」ってことだ。優しい言い方で牽制してるだけ。

って、あれ。考え事しながら返事しちゃったけど…今、目の前にいる秋緋に違和感がある。行動もそうだけど僕にあんなふうに言えるっけ?更に言えば心が読めないのがおかしい。皆メロメロになってるのもおかしい。この違和感の正体、突き止めなきゃ。


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数時間前―。
「…なーんで皆して腕っぷしのある妖怪連れてきておらんのじゃにゃーー!!」
古泉さんは学校行事ってこともあっていつも身につけている|霞香姫《かこうき》っていう香炉を用いる妖怪の子しか連れてきておらず、結緋さんは肝だめしの為に人に対してほぼ害の無い妖怪を。しかも多数を連れてきている。いくら元々の力が長けているとはいえ分散させているせいで本人は烏天狗に抱っこされたまま空の上からガミガミ言ってるだけで何もできない様子。そして師匠は…
「すみませんねっ…!こちとら訳アリで消耗しちゃってるんでこれくらいしか…できないわっ!」
訳アリってのは僕が鬼門送りにしたせい、だね。
師匠はそれでも走ったり飛んだりして針を飛ばしてはいるけど大きなダメージには至っていないみたい。まぁ、まだしばらくは大丈夫そうだと思うから3人が相手している間に僕はこの後どうすべきか考えないと。
結果的に秋緋を閉じ込められたのは良かったけど、我ながらよく平静を装ってられたと思う。想定外なんだよね、師匠がこのタイミングで戻って来ちゃったのとこの土蜘蛛。
僕のさとりも万能じゃ無い。
それは僕自身に問題があるせいなんだけど一定の範囲にいないとさとれないというハンデ。それもあって出来る限り周辺の人や妖怪、幽霊とかその類のものを探って数日動いてはいたものの。こんな気配もなしにしかも結界内に入り込ませるなんて。
とりあえず師匠からどうにかしなきゃと戻ってきたけど…あらら。そろそろヤバそうかな?
「にゃー!いつもなら簡単に|屠《ほふ》れるというのになんにゃのじゃー!あんにゃろめーー!」
誰がやったのかわかってる感じかな?これはうまく探る必要がありそう。でも、探る前に土蜘蛛の処理だね。
「師匠!秋緋は安全なところに閉じ込めときましたよ。」
「壱弥っ!お前…!あぁ!くそ!とりあえずこいつどうにかすんぞ!」
消耗してくれてて助かった、かな。のんびり戻ってきた僕にそこまでかまっていられないみたいだ。土蜘蛛もさっきより動きが鈍いね。師匠の蓄積ダメージが効いてるみたい。
「壱弥くん!私たちじゃここにとどまらせるしかできないの!何とかできるかな??」
もちろん。今この中で唯一攻撃的な使役妖怪を連れてるのは僕だけだからね。
「頼むよ、鵺。」
「心得た。」
ボールペンに入れてるとはいえ実力はちゃんとあるんだからね、鵺は。今はしがない花屋のアルバイトやってるけど…。
飛び出した鵺は僕のさとりの力を合わせた動きと本来持っている素早さで翻弄し攻撃をかわす。太く硬く、鋭い鵺の爪は重く深い傷を与える。
土蜘蛛の外殻は硬い蜘蛛の体毛に覆われていて簡単に攻撃は通らない。けれど、師匠の|毒針術《どくしんじゅつ》での細かい攻撃。古泉さんの妖怪の香。致命傷には至らないもののようだけど防御系統に対して弱体化を|促《うなが》す効果を持ってるみたい。これなら。
「グギャァァァッ!!」
汚い声。
弱くなっていた外殻と、元々急所であろう首と胴体のつけ根の部分を外殻もろ共体液を撒き散らすくらいえぐり裂かれればそんな声になるかな。
「…終わりましたね、皆さんご無事ですか?」
声を上げた後、動かなくなった土蜘蛛を確認してから師匠たちに声をかけた。息も絶え絶え…文字通り3人とも肩で息をしてる。
冷静なのは僕だけ。
冷静ってのは少し違うか。緊張が正しいかも?だって師匠に睨まれちゃってるからね。そんな僕と師匠の間を割くように結緋さんが地上に下りてきたけど。
「|八塚《やつか》のせがれじゃな!おぬし、もうここまで力をつけておったのか!ようやった!」
褒め散らかしてくれるのはありがたいけど視線が痛いね。どうしようかな。
「壱弥…お前いくらなんでも―」
「あーーーー!!!!」
師匠もあれかな。秋緋に似て大事なところで邪魔される体質持ってる感じかな?ふふ、さすが親子ってかんじ。
「結緋さん、猫さん解けてますよ!私も!」
なにかと思えば皆の猫化が解けてるだけ…まって。何故このタイミングで?
「おぉぉ!本当じゃの!秋緋が覚醒でもしたのかの?!はっ!?秋緋!秋緋はどこじゃー!!」
「あ、秋緋ならこの先の旧校舎に…」
「急ぐのじゃ!一人で寂しがっているに違いないのじゃ!」
場所を教えたらすぐダッシュ。なんという過保護。心配すべきところがズレてるというかなんというか。これに乗じて師匠のこともスルーできれば…は、無理か。
「…壱弥、まずは礼を言う。助かった。」
ゆっくりと僕に近づき「向かいながら話すぞ」と背中を叩かれた。
「壱弥、俺は怒ってる。何故かわかるか。」
だんまりをしていたらコツン!とげんこつで頭を叩かれた。なのに、痛くはなかった。
「いいか、壱弥。まだ現世で生のある妖怪を簡単に鬼門に送るんじゃねぇ。そんなことは俺らが簡単にしちゃならねぇ事だ。そこは間違えるんじゃねぇよ?」
「それだけ…ですか…?」
拍子抜けもいいところ。こんなことで許される?僕はあなたも送ったのに?
「ん?俺は鬼門に入ったところでなんともないぞ?知らなかったか?鬼門は俺の嫁さんのテリトリーでな。特殊な【|鬼印《きいん》】のおかげで出入りは問題ないんだ。出入りは…。」
僕の調べもまだまだ甘かったみたいだね。なんとなく大丈夫かなとは思っていたし、邪魔になるから遠くにいてもらおうとしただけだけど。早く戻ってきたのもうなずけるや。
「じゃあなんでボロボロで…?」
「…嫁さんに会ってな。すずめも無事保護されててお礼も兼ねてお話ししてたんだが…。めっちゃ怒られてお説教とお仕置きされてこのザマよ。だからもうこんなことしちゃだめだぞ!俺が怒られるから!!怒ると怖いの!!マジで!!」
な、なるほどね。夫婦関係がよくわかるお話だったよ師匠。ありがとう。
「あとお前の『約束』ってやつ。」
本題、だね。
「…あの時のだな?」
僕は静かに頷いた。
「まったく。基本的にはお前の好きに動けばいい。だが、今回みたいに|理《ことわり》を破るようなことはするんじゃねぇぞ。あいつもそんな事望んでねぇだろ。聞いたらぜってぇ怒るぞあいつは。秋緋の為に必死になってるのはお前だけじゃない。俺も結緋さんも同じだ。ひとりで全部やろうとするな。」
「確かにですね。必死になりすぎて、師匠も秋緋と口聞いてもらえなかったですもんね。」
うるせぇ!とチョップされちゃった。
それにしてもまさかの展開、かな。今の真砂家の事情が僕と秋緋が小さい時にした約束と都合がいいのだろう。少し怒られただけで済むってことはそういう事なんだろう。
「…っと、あそこだな。おぉおぉ。無理やりお前の結界破いてるぞ結緋さん。おっかないなぁ…。」
結緋さんがそれ聞いたら奥さんの何倍もひどい目に合いそう。
そして今―。
約束を果たせる筈だったけど、結果的に失敗しちゃったな。皆がここまでこられたらもうどうしようもない状況だ。
「僕は別に…。」
何もできなかった。挽回しようにも、師匠の「好きにしろ」は「監視はつけることになるが俺が許せる範囲内なら構わない」ってことだ。優しい言い方で牽制してるだけ。
って、あれ。考え事しながら返事しちゃったけど…今、目の前にいる秋緋に違和感がある。行動もそうだけど僕にあんなふうに言えるっけ?更に言えば心が読めないのがおかしい。皆メロメロになってるのもおかしい。この違和感の正体、突き止めなきゃ。