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40日間 2

ー/ー



 エルフの村へ戻ると、各地から押し寄せた治安維持部隊が待っていた。

 50名にもなるその数はキエーウの支部に残る隊員を拘束し、捜査するには充分な数だろう。

「私からうまい事言っておく、お前たちはリースを頼む」

 アシノはそう言い残して治安維持部隊の隊長の元へと向かった。残されたムツヤ達はリースの眠る馬車を引いてどうしたものかと考えていた。

「あ、あの、勇者様達ですよね?」

 声を掛けてきたのはエルフの宿屋の娘『カノイ』だ。

 とりあえず、モモは事情を説明することにした。

「カノイ、だったな。急な話で申し訳ないのだが、私達の仲間が…… 命を落とした」

 それを聞いてカノイは思わず両手を口に手を当て「何てこと……」と言う。

「遺体の損傷も激しく、出身地もわからないんだ。出来たらこの村の墓地に埋葬してほしいのだが」

「お仲間ですのに、ご出身地を…… 存じ上げないのですか?」

 カノイが不思議そうに聞くとモモは余計なことを言ったと思ってしまった。やり取りを聞いていたルーも何か言おうとしたが、モモの方が先だった。

「すまない、全て正直に話そう」

「それでしたら村長も一緒のほうが良いと思います。皆様にお礼が言いたいとも言っていたので」

「わかった、行こう」

 カノイに案内され皆は村長の元へやってきた。

「勇者様方、この度は私達の愚行をお許し下さった上に村をお救い下さり、まこと、なんと感謝をすればいいものやら」

 人間の見た目で言えば白髪の初老といった感じの村長がムツヤ達を出迎える。

「頭を上げて下さい村長様、私はルーと申します。勇者アシノは治安維持部隊と話をしています」

 ルーが丁寧に挨拶をするとモモに目配せをした。後は自分の言葉で伝えようと心に決めた。

「私達の仲間、リースが戦死しました。その遺体をこの村の墓地に葬って頂きたいのですが」

 モモの言葉を聞いて村長は悲しそうな表情をして言う。

「なんと…… お悔やみを申し上げます。勇者様の御一行でしたら村を上げて盛大に弔わせて頂きます」

 このまま黙っていればリースは自分たちの仲間として丁寧に供養されるだろうが、モモは言いにくいことを言わずにはいられなかった。

「リースは…… リースは、元キエーウのメンバーでした」

 それを聞いた村長は目を丸くする。

「キエーウの……? それはどういった事でしょうか?」

「リースは亜人…… オークに両親を殺された恨みからキエーウに入りました。しかし、和解することができ、共に人間と亜人が生きる未来のために生きると誓ってくれたのです」

 続けてモモは話し続けた。

「今回のキエーウの支部を壊滅できたのも、リースの案内があってこそでした。短い間でしたがリースは仲間でした、どうかお願いします」

 モモが頭を下げると重い空気が場を支配する。誰もが村長の言葉を待っていた。

「そういう事でしたら、わかりました」

 思わず頭を上げてモモは村長を見る。

「リースさんはこの村で永久にご供養させて頂きます」

「ありがとうございます!」

 モモは思わず目から涙が溢れていた。

 アシノが治安維持部隊から帰還するとムツヤ達と合流した。リースの件を告げると「そうか」と短く返す。

 今日はまたカノイの宿にお世話になり、明日リースの葬儀を行うことになった。

 そして、アシノの話によると、治安維持部隊は今からキエーウの支部である枯れたダンジョンへ向かうらしい。

「とりあえず、今日は皆休むぞ」

 焦りを隠しきれないアシノはそれだけ言って風呂へ行ってしまった。

「ごめんね。多分サズァン様の言っていたことでアシノはカリカリしてるみたい」

 だがそれは皆同じであった。ムツヤは自分の道具のせいで亜人が危ないことに悩んでいるし、当事者のモモも気が気でない。

 それぞれが考え事をして、うまく眠れない夜を過ごした。




 エルフの生と死というものへの考え方は、大雑把に説明すると、自然から生まれた命がまた自然へと帰るといったものだ。

 墓地には新たな穴が掘られ、その隣にリースは厚い布に包まれて眠っていた。

 棺桶は存在せず、代わりに村中のエルフが土の中へ入れられたリースを埋め尽くす花を散りばめて、美しい歌を歌う。

「この歌は、死者の安らかな眠りと、また巡り巡って誕生することを祈るものです」

 歌が終わった後カノイはそう教えてくれた。土をかけるとリースとはお別れだ。

 モモは思わずしゃがみ込んで泣いてしまったし、ムツヤも立ったまま下を向いて泣いている。

 ユモトも祈りを捧げ、ルーも帽子で顔を隠して一筋涙が溢れた。

「リースさんのお墓は、私がご先祖様と一緒にお掃除して、お花も添えて、祈りを捧げます」

 カノイは改めて言ってくれる。ムツヤ達は頷いて、モモは「頼む」と一言う。

 悲しみに浸っていたいが、事態はそれを許してくれない。もう残された日数は39日しかないのだ。

 葬儀が終わると宿屋で音の妨害魔法を貼り、今後の方針について会議が行われた。


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 エルフの村へ戻ると、各地から押し寄せた治安維持部隊が待っていた。
 50名にもなるその数はキエーウの支部に残る隊員を拘束し、捜査するには充分な数だろう。
「私からうまい事言っておく、お前たちはリースを頼む」
 アシノはそう言い残して治安維持部隊の隊長の元へと向かった。残されたムツヤ達はリースの眠る馬車を引いてどうしたものかと考えていた。
「あ、あの、勇者様達ですよね?」
 声を掛けてきたのはエルフの宿屋の娘『カノイ』だ。
 とりあえず、モモは事情を説明することにした。
「カノイ、だったな。急な話で申し訳ないのだが、私達の仲間が…… 命を落とした」
 それを聞いてカノイは思わず両手を口に手を当て「何てこと……」と言う。
「遺体の損傷も激しく、出身地もわからないんだ。出来たらこの村の墓地に埋葬してほしいのだが」
「お仲間ですのに、ご出身地を…… 存じ上げないのですか?」
 カノイが不思議そうに聞くとモモは余計なことを言ったと思ってしまった。やり取りを聞いていたルーも何か言おうとしたが、モモの方が先だった。
「すまない、全て正直に話そう」
「それでしたら村長も一緒のほうが良いと思います。皆様にお礼が言いたいとも言っていたので」
「わかった、行こう」
 カノイに案内され皆は村長の元へやってきた。
「勇者様方、この度は私達の愚行をお許し下さった上に村をお救い下さり、まこと、なんと感謝をすればいいものやら」
 人間の見た目で言えば白髪の初老といった感じの村長がムツヤ達を出迎える。
「頭を上げて下さい村長様、私はルーと申します。勇者アシノは治安維持部隊と話をしています」
 ルーが丁寧に挨拶をするとモモに目配せをした。後は自分の言葉で伝えようと心に決めた。
「私達の仲間、リースが戦死しました。その遺体をこの村の墓地に葬って頂きたいのですが」
 モモの言葉を聞いて村長は悲しそうな表情をして言う。
「なんと…… お悔やみを申し上げます。勇者様の御一行でしたら村を上げて盛大に弔わせて頂きます」
 このまま黙っていればリースは自分たちの仲間として丁寧に供養されるだろうが、モモは言いにくいことを言わずにはいられなかった。
「リースは…… リースは、元キエーウのメンバーでした」
 それを聞いた村長は目を丸くする。
「キエーウの……? それはどういった事でしょうか?」
「リースは亜人…… オークに両親を殺された恨みからキエーウに入りました。しかし、和解することができ、共に人間と亜人が生きる未来のために生きると誓ってくれたのです」
 続けてモモは話し続けた。
「今回のキエーウの支部を壊滅できたのも、リースの案内があってこそでした。短い間でしたがリースは仲間でした、どうかお願いします」
 モモが頭を下げると重い空気が場を支配する。誰もが村長の言葉を待っていた。
「そういう事でしたら、わかりました」
 思わず頭を上げてモモは村長を見る。
「リースさんはこの村で永久にご供養させて頂きます」
「ありがとうございます!」
 モモは思わず目から涙が溢れていた。
 アシノが治安維持部隊から帰還するとムツヤ達と合流した。リースの件を告げると「そうか」と短く返す。
 今日はまたカノイの宿にお世話になり、明日リースの葬儀を行うことになった。
 そして、アシノの話によると、治安維持部隊は今からキエーウの支部である枯れたダンジョンへ向かうらしい。
「とりあえず、今日は皆休むぞ」
 焦りを隠しきれないアシノはそれだけ言って風呂へ行ってしまった。
「ごめんね。多分サズァン様の言っていたことでアシノはカリカリしてるみたい」
 だがそれは皆同じであった。ムツヤは自分の道具のせいで亜人が危ないことに悩んでいるし、当事者のモモも気が気でない。
 それぞれが考え事をして、うまく眠れない夜を過ごした。
 エルフの生と死というものへの考え方は、大雑把に説明すると、自然から生まれた命がまた自然へと帰るといったものだ。
 墓地には新たな穴が掘られ、その隣にリースは厚い布に包まれて眠っていた。
 棺桶は存在せず、代わりに村中のエルフが土の中へ入れられたリースを埋め尽くす花を散りばめて、美しい歌を歌う。
「この歌は、死者の安らかな眠りと、また巡り巡って誕生することを祈るものです」
 歌が終わった後カノイはそう教えてくれた。土をかけるとリースとはお別れだ。
 モモは思わずしゃがみ込んで泣いてしまったし、ムツヤも立ったまま下を向いて泣いている。
 ユモトも祈りを捧げ、ルーも帽子で顔を隠して一筋涙が溢れた。
「リースさんのお墓は、私がご先祖様と一緒にお掃除して、お花も添えて、祈りを捧げます」
 カノイは改めて言ってくれる。ムツヤ達は頷いて、モモは「頼む」と一言う。
 悲しみに浸っていたいが、事態はそれを許してくれない。もう残された日数は39日しかないのだ。
 葬儀が終わると宿屋で音の妨害魔法を貼り、今後の方針について会議が行われた。