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第76話 邪霊の洞窟

ー/ー



山を登りきった先には、山頂地点らしき所に建てられた石碑と小さなくぼ地があった。
そしてそのくぼ地を覗き込むと、中に洞穴があった。
いや…洞穴ではない。よく見ると、それは洞穴というにはかなり深く、底が見えなかった。
おそらく、メリムの言う気配はここからだろう。
「洞窟…だなこりゃ。ダンジョンっぽいな」

「だな。メリムが言ってたのはここだな?」
秀典はメリムの方を見る。
「はい。この中に、異形が潜んでいます」
言われなくとも雰囲気で感じる…というのはさておき、忠告してくれるのは助かる。
奴らに物理は効きづらいらしいので、武器は納めておき、すぐに術を使えるようにしておく。
「よし、行こう」


洞窟の中は意外にも明るかった。
照らす必要がなくていいな、と思う反面異様な魔力が満ちているのが感じ取られ、不気味に思えた。
「明るいのは助かるが…不気味だな」

「それなりに強い異形がいるっぽいな…用心していこう」

通路は一本道だったが、しばらく進むと天井が崩落したのか、大量の岩で塞がれていて通れない所が出てきた。
「ありゃ、もう行き止まりか?」

「邪霊系異形はものをすり抜ける事が出来ます。この程度なら活動に問題はないのでしょう」

「なるほど…となると、こいつを何とかしてどかさなきゃないわけだ」
試しに、岩を一個持ち上げてみた。
そこまで重くはなく、持つ事自体は簡単だが、これを全て避けるとなると時間がかかりそうだ。
「そんなことする必要ないだろ。秀典にふっ飛ばしてもらえばいいじゃんか」
康介に言われてはっとしたが、秀典はいや…と否定した。
「言っただろ?おれは術はあまり得意じゃないんだ」

「無理か?」

「いや、できなくはないだろうが…ちょっと時間かかるぞ。手でやるよりは早いだろうけど」
それなら、とメリムが秀典に掌を向けて言った。
「己が業を磨かんとする者よ、汝の試みをここに助けん…」
すると、秀典の体がほのかにオレンジ色の光に包まれた。
「秀典…?」

「おぉ…なんだかわからんが、今なら出来そうな気がする!」
そして秀典は手を伸ばし、岩に向かって叫んだ。
「[ストームラッド]!」
緑の魔弾が複数飛び出し、通路を塞ぐ岩をきれいに破壊した。
「おお、すげえ!」
康介が歓喜の声を上げる。
「本当だ…すげえ…」
自分でも信じられないという顔をする秀典に、メリムが説明した。
「私の異能で、あなたの体に流れる魔力の流れを活性化させました。それによって、魔弾の威力が上がったんです。長続きはしませんが、結構有効な効果だと思います」

「普通に助かるぜ!これがありゃ、あの異形どもも楽に倒せる!」

「そう、ですね。…」
メリムは、どこか複雑な表情をしているように見えた。




洞窟の奥には、外でも見かけたドゥラムのほかに青白い肉塊のような異形や、真っ赤で足のない人間のような姿の異形がいた。
前者は「カーズ」と呼ばれる氷の異形で火に弱いらしく、俺とメリムで簡単に焼き払えた。
後者は「アンガー」と呼ばれる異形で、火に強いが水や風に弱いという性質を持つ。
こちらは秀典やキョウラが中心となって対処した。

属性的に相性が良い相手が出てこず、出番がなく寂しそうにしていた康介も、メリムの異能のおかげで術の威力を底上げされた事で自信を持ち、異形たちに術で立ち向かっていた。
「地法 [ストンレイン]!」
柳助と同じ、尖った岩を降らせる術を放って一度に複数の異形を倒して見せる。
こう言ってはなんだが、柳助と同じ術を使うあたり、本当に術は苦手なのだろう。
まだ決めつけは軽率だが、ハンマー使いは魔力が低い傾向にあるのかもしれない。




「おっ!」
突然、康介が何かに駆け寄った。
その目線の先にあったのは黒っぽい箱。
「ん?なんだ?」

「宝箱だぜ、宝箱!」

「え、これが…?」
ちょっと、とても宝箱には見えないのだが…これがこの世界の宝箱なのだろうか。
「あ、本当だ。開けてみようぜ」
秀典もこう言ってるあたり、本当にそうらしい。
多少の違和感を感じながらも開けてみると、綺麗な青色の宝玉?が入っていた。
「これは…?」
俺はそれが何かわからなかったが、キョウラは違ったようだった。
「あら、これは魔幻のオーブではありませんか。こんな珍しいものがここにあるなんて」
すると、秀典達も囃し立てた。
「おお!こりゃなかなかのお宝だな!」

「魔幻のオーブ…!?すげえ!こんなとこにあるのか!」
もちろん、俺は丁重に説明を願った。
「魔幻のオーブは、この世界に存在する強大が魔力が宿った宝玉…『オーブ』の一つです。所有者の全ての魔力を2倍にする、という強力な効果があります」

「おお…そりゃ強いな」

「ですが、誰が持ちましょうか…」
俺はキョウラからそれを受け取り、渡す相手を選んだ。
そしてこれを、ここまでで最大の貢献者に渡そうと考えた。
だが、メリムは受け取ってはくれなかった。
「それは、私にはもったいありません。どうか、姜芽さんたちが使ってください…」

「そ、そうか…じゃあ…」
とりあえず、俺が持つことにする。
持ってみた感じ、特に何か変わったという感じはしないが…まあ、実戦で効果が出てればオーケーである。

ちなみにその横にも二つ宝箱があった。
片方にはボロボロの剣、もう片方にはオレンジ色の石が入っていた。
前者は「朽ちた剣」というもので、長い年月の果てに朽ち果てて使えなくなった武器だが、特殊な鉱石を使って加工すると元の姿に復元できるらしい。
そして後者は「オード鉱石」という鉱石で、ちょうどその朽ちた武器の加工に必要な鉱石であるとのこと。

「これはもう…武器屋に行くしかないな!」
康介に言われるまでもなく、そう思った。
「だな。でも、まずはここをクリアしよう」

「あ、そうだったな。異形どもを全部、片付けてからだな!」
康介は秀典共々元気だ。
そんな二人を見て、キョウラは楽しそうに笑う。
もちろん、メリムもだ。



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山を登りきった先には、山頂地点らしき所に建てられた石碑と小さなくぼ地があった。そしてそのくぼ地を覗き込むと、中に洞穴があった。
いや…洞穴ではない。よく見ると、それは洞穴というにはかなり深く、底が見えなかった。
おそらく、メリムの言う気配はここからだろう。
「洞窟…だなこりゃ。ダンジョンっぽいな」
「だな。メリムが言ってたのはここだな?」
秀典はメリムの方を見る。
「はい。この中に、異形が潜んでいます」
言われなくとも雰囲気で感じる…というのはさておき、忠告してくれるのは助かる。
奴らに物理は効きづらいらしいので、武器は納めておき、すぐに術を使えるようにしておく。
「よし、行こう」
洞窟の中は意外にも明るかった。
照らす必要がなくていいな、と思う反面異様な魔力が満ちているのが感じ取られ、不気味に思えた。
「明るいのは助かるが…不気味だな」
「それなりに強い異形がいるっぽいな…用心していこう」
通路は一本道だったが、しばらく進むと天井が崩落したのか、大量の岩で塞がれていて通れない所が出てきた。
「ありゃ、もう行き止まりか?」
「邪霊系異形はものをすり抜ける事が出来ます。この程度なら活動に問題はないのでしょう」
「なるほど…となると、こいつを何とかしてどかさなきゃないわけだ」
試しに、岩を一個持ち上げてみた。
そこまで重くはなく、持つ事自体は簡単だが、これを全て避けるとなると時間がかかりそうだ。
「そんなことする必要ないだろ。秀典にふっ飛ばしてもらえばいいじゃんか」
康介に言われてはっとしたが、秀典はいや…と否定した。
「言っただろ?おれは術はあまり得意じゃないんだ」
「無理か?」
「いや、できなくはないだろうが…ちょっと時間かかるぞ。手でやるよりは早いだろうけど」
それなら、とメリムが秀典に掌を向けて言った。
「己が業を磨かんとする者よ、汝の試みをここに助けん…」
すると、秀典の体がほのかにオレンジ色の光に包まれた。
「秀典…?」
「おぉ…なんだかわからんが、今なら出来そうな気がする!」
そして秀典は手を伸ばし、岩に向かって叫んだ。
「[ストームラッド]!」
緑の魔弾が複数飛び出し、通路を塞ぐ岩をきれいに破壊した。
「おお、すげえ!」
康介が歓喜の声を上げる。
「本当だ…すげえ…」
自分でも信じられないという顔をする秀典に、メリムが説明した。
「私の異能で、あなたの体に流れる魔力の流れを活性化させました。それによって、魔弾の威力が上がったんです。長続きはしませんが、結構有効な効果だと思います」
「普通に助かるぜ!これがありゃ、あの異形どもも楽に倒せる!」
「そう、ですね。…」
メリムは、どこか複雑な表情をしているように見えた。
洞窟の奥には、外でも見かけたドゥラムのほかに青白い肉塊のような異形や、真っ赤で足のない人間のような姿の異形がいた。
前者は「カーズ」と呼ばれる氷の異形で火に弱いらしく、俺とメリムで簡単に焼き払えた。
後者は「アンガー」と呼ばれる異形で、火に強いが水や風に弱いという性質を持つ。
こちらは秀典やキョウラが中心となって対処した。
属性的に相性が良い相手が出てこず、出番がなく寂しそうにしていた康介も、メリムの異能のおかげで術の威力を底上げされた事で自信を持ち、異形たちに術で立ち向かっていた。
「地法 [ストンレイン]!」
柳助と同じ、尖った岩を降らせる術を放って一度に複数の異形を倒して見せる。
こう言ってはなんだが、柳助と同じ術を使うあたり、本当に術は苦手なのだろう。
まだ決めつけは軽率だが、ハンマー使いは魔力が低い傾向にあるのかもしれない。
「おっ!」
突然、康介が何かに駆け寄った。
その目線の先にあったのは黒っぽい箱。
「ん?なんだ?」
「宝箱だぜ、宝箱!」
「え、これが…?」
ちょっと、とても宝箱には見えないのだが…これがこの世界の宝箱なのだろうか。
「あ、本当だ。開けてみようぜ」
秀典もこう言ってるあたり、本当にそうらしい。
多少の違和感を感じながらも開けてみると、綺麗な青色の宝玉?が入っていた。
「これは…?」
俺はそれが何かわからなかったが、キョウラは違ったようだった。
「あら、これは魔幻のオーブではありませんか。こんな珍しいものがここにあるなんて」
すると、秀典達も囃し立てた。
「おお!こりゃなかなかのお宝だな!」
「魔幻のオーブ…!?すげえ!こんなとこにあるのか!」
もちろん、俺は丁重に説明を願った。
「魔幻のオーブは、この世界に存在する強大が魔力が宿った宝玉…『オーブ』の一つです。所有者の全ての魔力を2倍にする、という強力な効果があります」
「おお…そりゃ強いな」
「ですが、誰が持ちましょうか…」
俺はキョウラからそれを受け取り、渡す相手を選んだ。
そしてこれを、ここまでで最大の貢献者に渡そうと考えた。
だが、メリムは受け取ってはくれなかった。
「それは、私にはもったいありません。どうか、姜芽さんたちが使ってください…」
「そ、そうか…じゃあ…」
とりあえず、俺が持つことにする。
持ってみた感じ、特に何か変わったという感じはしないが…まあ、実戦で効果が出てればオーケーである。
ちなみにその横にも二つ宝箱があった。
片方にはボロボロの剣、もう片方にはオレンジ色の石が入っていた。
前者は「朽ちた剣」というもので、長い年月の果てに朽ち果てて使えなくなった武器だが、特殊な鉱石を使って加工すると元の姿に復元できるらしい。
そして後者は「オード鉱石」という鉱石で、ちょうどその朽ちた武器の加工に必要な鉱石であるとのこと。
「これはもう…武器屋に行くしかないな!」
康介に言われるまでもなく、そう思った。
「だな。でも、まずはここをクリアしよう」
「あ、そうだったな。異形どもを全部、片付けてからだな!」
康介は秀典共々元気だ。
そんな二人を見て、キョウラは楽しそうに笑う。
もちろん、メリムもだ。