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第72話 思わぬ幸運

ー/ー



ガレグ鬼を撃破した後、町に戻るまで異形やアンデッドには遭遇しなかった。
そしてその道中での会話もほとんどなかったが、俺は頭の中で色々と考えていた。
ガレグ鬼が残した言葉の意味は勿論だが、なぜ奴は俺達の居場所を知っていたのか。
なぜアンデッドに俺達を襲わせることが出来たのか。
そして、奴はおそらくどこかの組織の所属だが、それが一体どんな組織なのか。
山積みの気になる事たちは、まともに考えても答えが出ない事が薄々わかるような事ばかりだったが、考えずにはいられなかった。 







町につくと、亮達はすぐに猶の元へ向かった。
猶は町の酒場におり、亮の姿を見ると両手を広げ、喜びの声を上げた。
「おぉー、亮よ!久しぶりだな!」

「おう、猶。私たちの力が必要なんだな?」

「ああ、そうだ」
猶は、詳しい事情を亮に説明した。
それで思ったのだが、ここに来るまでに事情を説明すればよかったかもしれない。



  
「なるほど…確かに奴らが単独行動しているというのは妙だ」

「姜芽達を迎えに行かせてる間に改めて聞き込みをしたんだが、やっぱりこの町に本来アンデッドはいないらしいし、奴らを見たって話もなかった」
猶の話を遮り、亮が喋りだした。
「それについてなんだが、実は私達もこちらへ来る途中でアンデッドに遭遇したんだ。しかも、村の近くには死人の心臓もあった。それを置いたのは、道中で襲ってきた悪魔系の異形だったんだが、何やら"ブレイヴ"のことを知っていたようでな…」
亮は俺達のチームの事を知っていたのか。
まあ、猶の知り合いならおかしくはない。
「俺達のことを知ってた?本当か?」

「ああ。最近の活躍が気に入らない…などと言っていたな」
ここで、俺が補足を付け足した。
「あいつ、『我ら』って言ってたし、俺達を潰すために派遣された…とも言ってたから、仲間…というか同じ組織のメンバーがいるっぽいぜ」

「なるほど」
猶は腕を組んで考え込んだ。
「言葉を喋る時点で、相応の階級の異形であるのは明らかだ。でも、アンデッドを率いていた…となると、途端にわからなくなるな」
そもそも異形がアンデッドを統率するなんてことあるのか?と聞いたが、猶と亮の答えは否に近いものだった。
「無くはないが…普通は、亡霊系か邪霊系の異形、それも高位のものが稀に従えているくらいだ。滅多にない、と言っていいな」

「ほぼないに等しいな。そもそもアンデッドは基本的に異形から毛嫌いされるし、仮に引き込まれるとして、高位のアンデッドでもなきゃ奴らの計画にろくに貢献出来ないだろう。だが、高位のアンデッドは凶暴で制御が難しい。そこまでしてアンデッドを使おうとする異形は、そういないだろう」

「高位のアンデッド…ってどんなのがいるんだ?」

「そうだな…代表的なのは『リッチ』、高位の魔法種族がアンデッドになったものだ」

「え、異人がアンデッドになることがあるのか?」

「ああ。理由は色々だが、力や永遠の若さ、あるいは命を求めた結果である事が多いな」
そんなテンプレな理由でアンデッドになるのか。
まあ、そういう悪役は大抵、主人公やヒーローに倒されるものであるが。
「他には吸血鬼だな。奴ら自体が高位のアンデッドだけど、特に上位の階級…アビス、ディープの吸血鬼は実力も知名度も高くて、強力なアンデッドの代表的な存在だな」

「まあ吸血鬼…っていかにも強いアンデッドって感じだしな」

「確かにな。他にもいくつかいるが…今はこんな所でいいか。それより、輝たちの所に行こう。亮たちの加入を知らせようぜ」



輝達の所へ行くと、二つのいいニュースが入ってきた。
一つは、新たな仲間が加入したこと。
メリム、という女の戦士だ。
武器は、大剣とムチを使うそうだ。
煌汰が酒場でスカウトしたらしく、煌汰はその腕を大いに買っているようだが、ラギルの弟2人は微妙なようだ。
と言っても、詳しく聞いてみれば2人がメリムをナンパしようとしたが失敗したのが原因で拗ねているだけのようだが。

二つは、馬車の改築が完了したこと。
なんでもメリムが「勤勉」という異能を持っているらしく、そのおかげで輝達の作業速度が大幅に上がったらしい。
メリムは「私なりのご挨拶です」と言ってたが、それにしては助かり過ぎな気もする。
皆が彼女に感謝の言葉を述べたが、メリムはどこか切なげな表情で「こちらこそ」と言うだけだった。

これからどうすればいいのか。
それを調べるため、ナイアに異能を使ってもらった。
その結果、得られたヒントは一つだけだった。
「メゾーヌへ行け」というものである。
正直、そこまでにもっといろいろあるのかと思ったが…まあいいだろう。


馬車の中に入ると、リビングからして前より広く、そして豪華になっていた。
おそらく50畳はある。もはや、豪邸のリビングである。
「すご…!こんなので旅してるの!?」

「なるほど、こういうことか。考えたな」

「わあ、広い…この上で個室もあるんだよね?これなら、長旅も楽勝じゃん!」
吸血鬼狩りのメンバーは、口々にそう言ってくれた。
まあ、俺が作ったわけではないが。

ちなみに町での補給は、酒だけはそれなりに出来たらしい。
この町…というかこの国では酒が豊富に産出されるため、今の状況でも酒には困らないらしい。
水分補給にはならないが、まあ士気を上げるのには役立つだろう。
メゾーヌへは数日で着く見込みとのことだった。

夜、俺はいつも通り部屋にこもった。
前にもらった魔法の参考書を読んでいたのだが、100ページも読まないうちに寝落ちしてしまった。






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ガレグ鬼を撃破した後、町に戻るまで異形やアンデッドには遭遇しなかった。そしてその道中での会話もほとんどなかったが、俺は頭の中で色々と考えていた。
ガレグ鬼が残した言葉の意味は勿論だが、なぜ奴は俺達の居場所を知っていたのか。
なぜアンデッドに俺達を襲わせることが出来たのか。
そして、奴はおそらくどこかの組織の所属だが、それが一体どんな組織なのか。
山積みの気になる事たちは、まともに考えても答えが出ない事が薄々わかるような事ばかりだったが、考えずにはいられなかった。 
町につくと、亮達はすぐに猶の元へ向かった。
猶は町の酒場におり、亮の姿を見ると両手を広げ、喜びの声を上げた。
「おぉー、亮よ!久しぶりだな!」
「おう、猶。私たちの力が必要なんだな?」
「ああ、そうだ」
猶は、詳しい事情を亮に説明した。
それで思ったのだが、ここに来るまでに事情を説明すればよかったかもしれない。
「なるほど…確かに奴らが単独行動しているというのは妙だ」
「姜芽達を迎えに行かせてる間に改めて聞き込みをしたんだが、やっぱりこの町に本来アンデッドはいないらしいし、奴らを見たって話もなかった」
猶の話を遮り、亮が喋りだした。
「それについてなんだが、実は私達もこちらへ来る途中でアンデッドに遭遇したんだ。しかも、村の近くには死人の心臓もあった。それを置いたのは、道中で襲ってきた悪魔系の異形だったんだが、何やら"ブレイヴ"のことを知っていたようでな…」
亮は俺達のチームの事を知っていたのか。
まあ、猶の知り合いならおかしくはない。
「俺達のことを知ってた?本当か?」
「ああ。最近の活躍が気に入らない…などと言っていたな」
ここで、俺が補足を付け足した。
「あいつ、『我ら』って言ってたし、俺達を潰すために派遣された…とも言ってたから、仲間…というか同じ組織のメンバーがいるっぽいぜ」
「なるほど」
猶は腕を組んで考え込んだ。
「言葉を喋る時点で、相応の階級の異形であるのは明らかだ。でも、アンデッドを率いていた…となると、途端にわからなくなるな」
そもそも異形がアンデッドを統率するなんてことあるのか?と聞いたが、猶と亮の答えは否に近いものだった。
「無くはないが…普通は、亡霊系か邪霊系の異形、それも高位のものが稀に従えているくらいだ。滅多にない、と言っていいな」
「ほぼないに等しいな。そもそもアンデッドは基本的に異形から毛嫌いされるし、仮に引き込まれるとして、高位のアンデッドでもなきゃ奴らの計画にろくに貢献出来ないだろう。だが、高位のアンデッドは凶暴で制御が難しい。そこまでしてアンデッドを使おうとする異形は、そういないだろう」
「高位のアンデッド…ってどんなのがいるんだ?」
「そうだな…代表的なのは『リッチ』、高位の魔法種族がアンデッドになったものだ」
「え、異人がアンデッドになることがあるのか?」
「ああ。理由は色々だが、力や永遠の若さ、あるいは命を求めた結果である事が多いな」
そんなテンプレな理由でアンデッドになるのか。
まあ、そういう悪役は大抵、主人公やヒーローに倒されるものであるが。
「他には吸血鬼だな。奴ら自体が高位のアンデッドだけど、特に上位の階級…アビス、ディープの吸血鬼は実力も知名度も高くて、強力なアンデッドの代表的な存在だな」
「まあ吸血鬼…っていかにも強いアンデッドって感じだしな」
「確かにな。他にもいくつかいるが…今はこんな所でいいか。それより、輝たちの所に行こう。亮たちの加入を知らせようぜ」
輝達の所へ行くと、二つのいいニュースが入ってきた。
一つは、新たな仲間が加入したこと。
メリム、という女の戦士だ。
武器は、大剣とムチを使うそうだ。
煌汰が酒場でスカウトしたらしく、煌汰はその腕を大いに買っているようだが、ラギルの弟2人は微妙なようだ。
と言っても、詳しく聞いてみれば2人がメリムをナンパしようとしたが失敗したのが原因で拗ねているだけのようだが。
二つは、馬車の改築が完了したこと。
なんでもメリムが「勤勉」という異能を持っているらしく、そのおかげで輝達の作業速度が大幅に上がったらしい。
メリムは「私なりのご挨拶です」と言ってたが、それにしては助かり過ぎな気もする。
皆が彼女に感謝の言葉を述べたが、メリムはどこか切なげな表情で「こちらこそ」と言うだけだった。
これからどうすればいいのか。
それを調べるため、ナイアに異能を使ってもらった。
その結果、得られたヒントは一つだけだった。
「メゾーヌへ行け」というものである。
正直、そこまでにもっといろいろあるのかと思ったが…まあいいだろう。
馬車の中に入ると、リビングからして前より広く、そして豪華になっていた。
おそらく50畳はある。もはや、豪邸のリビングである。
「すご…!こんなので旅してるの!?」
「なるほど、こういうことか。考えたな」
「わあ、広い…この上で個室もあるんだよね?これなら、長旅も楽勝じゃん!」
吸血鬼狩りのメンバーは、口々にそう言ってくれた。
まあ、俺が作ったわけではないが。
ちなみに町での補給は、酒だけはそれなりに出来たらしい。
この町…というかこの国では酒が豊富に産出されるため、今の状況でも酒には困らないらしい。
水分補給にはならないが、まあ士気を上げるのには役立つだろう。
メゾーヌへは数日で着く見込みとのことだった。
夜、俺はいつも通り部屋にこもった。
前にもらった魔法の参考書を読んでいたのだが、100ページも読まないうちに寝落ちしてしまった。