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桔平くんが個展の話を引き受けた数日後、またスミレさんからお茶に誘われた。今度はコーヒーチェーン店ではなく、ホテルのスイーツバイキング。桔平くんを説得してくれたお礼なんだって。
「こういうところ、桔平とは来ないでしょ? 彼は、甘いものがあまり好きじゃないから」
「そ、そうですね……」
なんだか「私は桔平をよく知っている」というマウントに聞こえてしまった。こう受け取る私は、やっぱり性格が悪いんだろうな。それでも、面白くないものは面白くない。
この人は私の知らない桔平くんを、たくさん知っている。私はそのことをサッパリと割り切れる性格じゃないから、スミレさんがこういう仕事をしていなければ、絶対に関わりたくはない。どうせ子供ですし。
まぁいいや。奢ってくれるって言うし、今日は思いきり食べてやる。……夕ご飯は、控えめにするけれど。
さすがホテルのバイキングだけあって、美味しそうなスイーツがずらりと並んでいる。全種類食べられるかなぁなんて、お行儀の悪いことを考えてしまった。いや、でもやっぱり全部食べたい。
ふと見ると、スミレさんはもうテーブルについている。あまり待たせると悪いから、ひとまず適当にピックアップして、急いで自席へと戻った。
「す、すみません。お待たせしてしまって」
「別にいいのよ。せっかくなんだし、たくさん食べて」
2品しか持ってきていないスミレさんに対して、お皿いっぱいにケーキを盛っている私。き、気にしないようにしよう。
「愛茉さんに、言っておきたいことがあって」
フルーツタルトを淑やかに食べながら、スミレさんが口を開いた。
「桔平とは、打ち合わせや取材で何度も顔を合わせることになるけど……言うまでもなく、ビジネスの話だけだから。仮に帰りが遅くなっても、それは打ち合わせが長引いているだけ。だから気を揉まないでね」
「わ、分かっています。別に、気にしないので……」
「そう? 桔平がずいぶんと貴女のことを気にしていたから、理解のある振りをしてるだけで、嫉妬深いのかと思っていたけど。気にしないのならよかった」
……この前の親近感を返してほしい。これって私への嫉妬もあるのかな。言葉が、めちゃくちゃトゲトゲしている。
恋愛という面では相手に執着しないらしいけれど、スミレさんはいま、桔平くんにどんな感情を抱いているんだろう。
「私、貴女みたいな女性って嫌いなのよね」
唐突に言われて、ケーキを口に運ぼうとしたまま固まってしまう。い、いま、嫌いって言った?
スミレさんはブラックコーヒーを口にして、間抜け面の私へ冷めた視線を向けた。
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「そ、そうですね……」
なんだか「私は桔平をよく知っている」というマウントに聞こえてしまった。こう受け取る私は、やっぱり性格が悪いんだろうな。それでも、面白くないものは面白くない。
この人は私の知らない桔平くんを、たくさん知っている。私はそのことをサッパリと割り切れる性格じゃないから、スミレさんがこういう仕事をしていなければ、絶対に関わりたくはない。どうせ子供ですし。
まぁいいや。奢ってくれるって言うし、今日は思いきり食べてやる。……夕ご飯は、控えめにするけれど。
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ふと見ると、スミレさんはもうテーブルについている。あまり待たせると悪いから、ひとまず適当にピックアップして、急いで自席へと戻った。
「す、すみません。お待たせしてしまって」
「別にいいのよ。せっかくなんだし、たくさん食べて」
2品しか持ってきていないスミレさんに対して、お皿いっぱいにケーキを盛っている私。き、気にしないようにしよう。
「愛茉さんに、言っておきたいことがあって」
フルーツタルトを淑やかに食べながら、スミレさんが口を開いた。
「桔平とは、打ち合わせや取材で何度も顔を合わせることになるけど……言うまでもなく、ビジネスの話だけだから。仮に帰りが遅くなっても、それは打ち合わせが長引いているだけ。だから気を揉まないでね」
「わ、分かっています。別に、気にしないので……」
「そう? 桔平がずいぶんと貴女のことを気にしていたから、理解のある振りをしてるだけで、嫉妬深いのかと思っていたけど。気にしないのならよかった」
……この前の親近感を返してほしい。これって私への嫉妬もあるのかな。言葉が、めちゃくちゃトゲトゲしている。
恋愛という面では相手に執着しないらしいけれど、スミレさんはいま、桔平くんにどんな感情を抱いているんだろう。
「私、貴女みたいな女性って嫌いなのよね」
唐突に言われて、ケーキを口に運ぼうとしたまま固まってしまう。い、いま、嫌いって言った?
スミレさんはブラックコーヒーを口にして、間抜け面の私へ冷めた視線を向けた。