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「桔平を支えたいと思っているなら、愛茉さんも本気で考えてみて。貴女の今後にも関わることよ」

 私は、ここまで考えてあげられていた? 桔平くんが自分で考えて決めたのなら、それが一番いいんだって思い込んでいただけじゃない?

 ひとりで悩まないでなんて言いながら、私は結局、桔平くんだけに押しつけていた。スミレさんの言う通り、私の今後にも関わることなのに。

 確かに一番大切なのは桔平くんの気持ちだけど、前向きになるようサポートするのも、私の役目なのかもしれない。スミレさんが桔平くんへ直接言わず、私に説得を頼んだのは、きっとそのため。

「分かりました……桔平くんと、もう一度話してみます」

 私の言葉に、スミレさんが目を細めて頷いた。さっきよりも、ずいぶんと穏やかな顔をしている気がする。

「ただ……いま、桔平くんは遠出しているんです」
「遠出? もしかして、またひとり旅?」
「はい。昨日から4泊5日で、沖縄へ行ってます」
「一緒に暮らしているんでしょ? それなのに可愛い彼女を置いて行くなんて、相変わらずなのね」

 呆れ顔で言うスミレさん。なんだろう。最初は怖かったのに、いまは少し親近感が湧いている。やっぱり実際に話してみないと、人って分からないんだな。
 そもそも、あの桔平くんが好きになったんだもん。言葉がキツいだけで、絶対に根は優しい人だよね。

「話すのは、桔平が帰ってきてからでいいわ。なにかあれば、ここに連絡して」

 スミレさんの名刺を受け取って、その日は別れた。

 ふたりで話したって聞いたら、桔平くんはどんな顔をするんだろう。今カノと元カノが会うって、普通はちょっと不穏だよね。

 でもスミレさんとは、この先も関わっていくことになるはず。それなら私もいい関係を築いていかないと、桔平くんの画家としての活動に支障が出ちゃう。子供っぽい嫉妬をしている場合じゃない。

 桔平くんは、世界的な画家になれる素質を持っている。そんな人を支えるには、もっともっと強くならなくちゃダメだ。
 そして誰よりも、桔平くんの才能を信じなきゃ。絵に詳しくなくても、信じることはできる。桔平くんなら絶対に、浅尾瑛士さんを超える画家になれるはずだって。

 そう考えたら、やっぱり個展の話は挑戦すべきだと思った。たとえ納得できる絵が描けなかったとしても、桔平くん自身の才能は確実に評価される。新しいモチベーションにもつながるんじゃないかな。

 桔平くんはいま、臆病になっている。それはきっと、スミレさんと再会したから。トラウマになっているあの絵のことを、ハッキリと思い出してしまったせいだと思う。

 だけどこれを乗り越えなきゃ、桔平くんが本当に求めている絵は描けない。どうすれば乗り越えられるのかは分からないけれど、一緒にその方法を探していきたいと思った。


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「桔平を支えたいと思っているなら、愛茉さんも本気で考えてみて。貴女の今後にも関わることよ」
 私は、ここまで考えてあげられていた? 桔平くんが自分で考えて決めたのなら、それが一番いいんだって思い込んでいただけじゃない?
 ひとりで悩まないでなんて言いながら、私は結局、桔平くんだけに押しつけていた。スミレさんの言う通り、私の今後にも関わることなのに。
 確かに一番大切なのは桔平くんの気持ちだけど、前向きになるようサポートするのも、私の役目なのかもしれない。スミレさんが桔平くんへ直接言わず、私に説得を頼んだのは、きっとそのため。
「分かりました……桔平くんと、もう一度話してみます」
 私の言葉に、スミレさんが目を細めて頷いた。さっきよりも、ずいぶんと穏やかな顔をしている気がする。
「ただ……いま、桔平くんは遠出しているんです」
「遠出? もしかして、またひとり旅?」
「はい。昨日から4泊5日で、沖縄へ行ってます」
「一緒に暮らしているんでしょ? それなのに可愛い彼女を置いて行くなんて、相変わらずなのね」
 呆れ顔で言うスミレさん。なんだろう。最初は怖かったのに、いまは少し親近感が湧いている。やっぱり実際に話してみないと、人って分からないんだな。
 そもそも、あの桔平くんが好きになったんだもん。言葉がキツいだけで、絶対に根は優しい人だよね。
「話すのは、桔平が帰ってきてからでいいわ。なにかあれば、ここに連絡して」
 スミレさんの名刺を受け取って、その日は別れた。
 ふたりで話したって聞いたら、桔平くんはどんな顔をするんだろう。今カノと元カノが会うって、普通はちょっと不穏だよね。
 でもスミレさんとは、この先も関わっていくことになるはず。それなら私もいい関係を築いていかないと、桔平くんの画家としての活動に支障が出ちゃう。子供っぽい嫉妬をしている場合じゃない。
 桔平くんは、世界的な画家になれる素質を持っている。そんな人を支えるには、もっともっと強くならなくちゃダメだ。
 そして誰よりも、桔平くんの才能を信じなきゃ。絵に詳しくなくても、信じることはできる。桔平くんなら絶対に、浅尾瑛士さんを超える画家になれるはずだって。
 そう考えたら、やっぱり個展の話は挑戦すべきだと思った。たとえ納得できる絵が描けなかったとしても、桔平くん自身の才能は確実に評価される。新しいモチベーションにもつながるんじゃないかな。
 桔平くんはいま、臆病になっている。それはきっと、スミレさんと再会したから。トラウマになっているあの絵のことを、ハッキリと思い出してしまったせいだと思う。
 だけどこれを乗り越えなきゃ、桔平くんが本当に求めている絵は描けない。どうすれば乗り越えられるのかは分からないけれど、一緒にその方法を探していきたいと思った。