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ー/ー
「なんで……そんなに……お前さぁ……背負うなよ、なにもかも……」
どうして翔流が、ここまで泣くのか。オレのそばに寄ってくるのは、こういう人間ばかりのような気がする。涙もろかったり情に厚かったり、人間味があって感情が豊か。オレもこんなふうに感情を出せたら、もっと違っていたのだろうか。
「悪かったよ、心配かけて。ただこればかりは、ひとりで背負ってもどうしようもねぇし。またちゃんと、スミレと話すから」
なかなか泣き止まない翔流に声をかける。
馬鹿なのは自分でも分かっていた。それでもオレは、スミレが好きだった。
「いいか。ちゃんと食ってちゃんと寝ろよ。スミレさんとのことは、もう口出しはしないけどさ。これだけは約束してよ」
しばらくして、翔流はそう言い残して帰っていった。見慣れた部屋なのに、ひとりになるとやたらと広く感じるし、妙に静かだ。
点滴のおかげか、体の怠さは少し軽減されている。ただやはり眠ることはできず、スケッチブックを開いて思い浮かぶまま鉛筆を走らせた。
それでも感情は落ち着かない。荒波のように、次から次へと押し寄せてくる。公募に出す絵も描かなければならないのに、こんな状態で描けるのだろうか。
公募に出し続けるのはスミレと約束したことだった。どんなときでも、絵を描き続ける。そしていつか画面の中にオレ自身が見えるのを、スミレはずっと心待ちにしていた。その気持ちに応えたい。
落ち着かなくて、何度もスマホを見る。スミレに連絡しても、なんの反応もなかった。体調が心配だったし、体のためにもどうするのか早く決めなければならないが、関係ないと言われてしまうと踏み込めなくなる。
スミレがオレに甘えて寄りかかっているのなら、それでもよかった。必要とされていること自体が嬉しかったし、スミレが望むことは叶えてやりたい。
それなのに、関係ないとスミレは言った。いま考えると、オレに責任を感じさせないためだったのだと思う。言葉がキツいから誤解されやすいが、スミレはもともと思いやりがあって優しい性格だ。しかし当時のオレには、かなり堪える言葉だった。
スミレにとって、オレはなんだったのだろうか。こんなときに、なんの支えにもなれていないなんて。そんなにオレは頼りないのか。
絵を描いていても暗い感情ばかりが溢れてきて、抑えられなかった。
記憶が明確なのは、そこまでだ。それから自分がどんな生活をしていたのか、まったく覚えていない。
スミレからの連絡を待ち続けながら家で絵を描いていたようだが、そのときの感情も思い出せなかった。
そして完成した絵を見て、愕然とする。本当に自分が描いたのかと疑いたくなるほど、そこには暗く重い感情が渦巻いていた。
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「悪かったよ、心配かけて。ただこればかりは、ひとりで背負ってもどうしようもねぇし。またちゃんと、スミレと話すから」
なかなか泣き止まない翔流に声をかける。
馬鹿なのは自分でも分かっていた。それでもオレは、スミレが好きだった。
「いいか。ちゃんと食ってちゃんと寝ろよ。スミレさんとのことは、もう口出しはしないけどさ。これだけは約束してよ」
しばらくして、翔流はそう言い残して帰っていった。見慣れた部屋なのに、ひとりになるとやたらと広く感じるし、妙に静かだ。
点滴のおかげか、体の怠さは少し軽減されている。ただやはり眠ることはできず、スケッチブックを開いて思い浮かぶまま鉛筆を走らせた。
それでも感情は落ち着かない。荒波のように、次から次へと押し寄せてくる。公募に出す絵も描かなければならないのに、こんな状態で描けるのだろうか。
公募に出し続けるのはスミレと約束したことだった。どんなときでも、絵を描き続ける。そしていつか画面の中にオレ自身が見えるのを、スミレはずっと心待ちにしていた。その気持ちに応えたい。
落ち着かなくて、何度もスマホを見る。スミレに連絡しても、なんの反応もなかった。体調が心配だったし、体のためにもどうするのか早く決めなければならないが、関係ないと言われてしまうと踏み込めなくなる。
スミレがオレに甘えて寄りかかっているのなら、それでもよかった。必要とされていること自体が嬉しかったし、スミレが望むことは叶えてやりたい。
それなのに、関係ないとスミレは言った。いま考えると、オレに責任を感じさせないためだったのだと思う。言葉がキツいから誤解されやすいが、スミレはもともと思いやりがあって優しい性格だ。しかし当時のオレには、かなり堪える言葉だった。
スミレにとって、オレはなんだったのだろうか。こんなときに、なんの支えにもなれていないなんて。そんなにオレは頼りないのか。
絵を描いていても暗い感情ばかりが溢れてきて、抑えられなかった。
記憶が明確なのは、そこまでだ。それから自分がどんな生活をしていたのか、まったく覚えていない。
スミレからの連絡を待ち続けながら家で絵を描いていたようだが、そのときの感情も思い出せなかった。
そして完成した絵を見て、愕然とする。本当に自分が描いたのかと疑いたくなるほど、そこには暗く重い感情が渦巻いていた。