2 優しくされたら…

ー/ー



 ミチルの肩を抱くそのイケメンは金髪碧眼のスラっとモデル体型。いわゆるマッチ棒タイプ。顔が小さくて足が長い。
 シャツを胸元まで開けて着崩し、少し長い髪の毛を無造作にひとつに括っている。

「オジサンねえ、冗談キツイよ。この男の子はどう見てもシロウトでしょ?」

 シロウトとは、何の分野での話なのか。ミチルは絶対に聞きたくない。

「ええ? だってその子から誘ってきたんだぜえ?」

 ウソつけ! クソジジイ!
 ミチルは心の中で毒づいた。酔っ払い過ぎて訳がわからなくなっているとは言え酷い侮辱だ。
 だが、ミチルは恐怖とすぐ近くにイケメンの息吹を感じて極度に緊張しているため、頭をぶんぶん振って否定することしかできない。

「やれやれ、これだから酔っ払いは困るな。とにかくこの子はダメ」

「へえ? ははあん、さてはお兄ちゃんのイロだったんかい?」

 何ですってー!! とんでもねえこと口走りやがった、このジジイ! さすがにセクハラが過ぎる!


 
「……」

 金髪のイケメンもさすがに黙ってしまった。人助けをしたのに同類だと思われたら誰だって頭にくる。
 どうしよう、喧嘩になってしまうのかも。このおじさん再起不能にされるかも、などとミチルがハラハラしていると金髪イケメンは突然ミチルの腰に手を回した。

「ひぅっ!」

 突然のお触りに、ミチルも予想だにしなかった高い声が出てしまった。
 そして金髪イケメンはわりとだいぶイヤらしく笑って艶かしい声で言った。

「まあ、そういうこと。だからさあ、オジサンは遠慮してよ。こっちは準備万端でもう……わかるよねえ?」

 低い声で囁いてミチルに顔を寄せる金髪イケメン。有無を言わせない迫力があった。
 もっともミチルは緊張と動転でそれどころではない。

「お、おお……あんたどっかで見たと思ったら……」

「ああ、気づいちゃった? なら話は早いよねえ? 俺のに手を出すってことはさあ……」

 金髪イケメンが言い終わらないうちに、酔っ払いおじさんの顔は赤から青に急転する。

「あーっはっは! オイラこれから仕事があったわ! うん、もう遅刻しそう! じゃあ、そういうことで!」

 おじさんは足早に駆け出した。しかし酔いが回っているので派手に転ぶ。それでも大慌てで起き上がって立ち去った。


 
「はいはーい、一昨日おいでー」

 金髪イケメンはにこにこ笑って酔っ払いおじさんに手を振った。
 すぐにミチルの腰から手を離して向き直る。

「はい、お疲れさん! 頑張ったね」

「え、あ……どうも」

 金髪イケメンは何事もなかったように気さくに笑っていた。先程の妖艶な雰囲気はもうどこにもない。

「酔っ払いを撃退するためとは言え、変な風に言っちゃってごめんね。怖かったよね」

 ……優しい!
 軟派なホスト系かと思ったら、人を労われる人格者!
 予想もしていなかった慰めの言葉に、ミチルは安心して泣けてきた。

「うっ……えぐっ……ひっ……」

「え、え、ちょ、ちょっと?」

 ああ、もうダメ。止まれない。

「うわーん!!」

「号泣!?」

 泣きながらミチルはこれも当然だと頭の隅で思っていた。
 知らない世界に急に飛ばされて。
 ジェイはいい人だったけど死にそうな目に遭って。
 やっと頼れる人に会えたのにまた引き離されて、挙句痴漢に遭遇した。

 そんなの男の子だって泣いちゃうもん!
 ミチルは堰を切ったように泣き続けた。金髪イケメンをその場に棒立ちにさせたまま。


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 ミチルの肩を抱くそのイケメンは金髪碧眼のスラっとモデル体型。いわゆるマッチ棒タイプ。顔が小さくて足が長い。
 シャツを胸元まで開けて着崩し、少し長い髪の毛を無造作にひとつに括っている。
「オジサンねえ、冗談キツイよ。この男の子はどう見てもシロウトでしょ?」
 シロウトとは、何の分野での話なのか。ミチルは絶対に聞きたくない。
「ええ? だってその子から誘ってきたんだぜえ?」
 ウソつけ! クソジジイ!
 ミチルは心の中で毒づいた。酔っ払い過ぎて訳がわからなくなっているとは言え酷い侮辱だ。
 だが、ミチルは恐怖とすぐ近くにイケメンの息吹を感じて極度に緊張しているため、頭をぶんぶん振って否定することしかできない。
「やれやれ、これだから酔っ払いは困るな。とにかくこの子はダメ」
「へえ? ははあん、さてはお兄ちゃんのイロだったんかい?」
 何ですってー!! とんでもねえこと口走りやがった、このジジイ! さすがにセクハラが過ぎる!
「……」
 金髪のイケメンもさすがに黙ってしまった。人助けをしたのに同類だと思われたら誰だって頭にくる。
 どうしよう、喧嘩になってしまうのかも。このおじさん再起不能にされるかも、などとミチルがハラハラしていると金髪イケメンは突然ミチルの腰に手を回した。
「ひぅっ!」
 突然のお触りに、ミチルも予想だにしなかった高い声が出てしまった。
 そして金髪イケメンはわりとだいぶイヤらしく笑って艶かしい声で言った。
「まあ、そういうこと。だからさあ、オジサンは遠慮してよ。こっちは準備万端でもう……わかるよねえ?」
 低い声で囁いてミチルに顔を寄せる金髪イケメン。有無を言わせない迫力があった。
 もっともミチルは緊張と動転でそれどころではない。
「お、おお……あんたどっかで見たと思ったら……」
「ああ、気づいちゃった? なら話は早いよねえ? 俺のに手を出すってことはさあ……」
 金髪イケメンが言い終わらないうちに、酔っ払いおじさんの顔は赤から青に急転する。
「あーっはっは! オイラこれから仕事があったわ! うん、もう遅刻しそう! じゃあ、そういうことで!」
 おじさんは足早に駆け出した。しかし酔いが回っているので派手に転ぶ。それでも大慌てで起き上がって立ち去った。
「はいはーい、一昨日おいでー」
 金髪イケメンはにこにこ笑って酔っ払いおじさんに手を振った。
 すぐにミチルの腰から手を離して向き直る。
「はい、お疲れさん! 頑張ったね」
「え、あ……どうも」
 金髪イケメンは何事もなかったように気さくに笑っていた。先程の妖艶な雰囲気はもうどこにもない。
「酔っ払いを撃退するためとは言え、変な風に言っちゃってごめんね。怖かったよね」
 ……優しい!
 軟派なホスト系かと思ったら、人を労われる人格者!
 予想もしていなかった慰めの言葉に、ミチルは安心して泣けてきた。
「うっ……えぐっ……ひっ……」
「え、え、ちょ、ちょっと?」
 ああ、もうダメ。止まれない。
「うわーん!!」
「号泣!?」
 泣きながらミチルはこれも当然だと頭の隅で思っていた。
 知らない世界に急に飛ばされて。
 ジェイはいい人だったけど死にそうな目に遭って。
 やっと頼れる人に会えたのにまた引き離されて、挙句痴漢に遭遇した。
 そんなの男の子だって泣いちゃうもん!
 ミチルは堰を切ったように泣き続けた。金髪イケメンをその場に棒立ちにさせたまま。