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第4章〜愛は目で見るものではなく、心で見るもの〜⑥

ー/ー



 スコアは22対20――――――。

 僅差での逆転勝利に、この上なくテンションが上がる。
 
 もっとも、緑川と自分は、試合にはほとんど貢献していないのだが……。
 それでも、自分たちの勝利の喜びを分かち合うべく、チームメイトの元に駆け寄る。

山吹(やまぶき)、吉井、先輩たちのプレー、スゴかったです」

 四人に声をかけると、林先輩が真っ先に応じる。

「いや〜、練習日でもないのに、つい熱くなっちゃった。黒田くんと緑川くんも、お疲れさま」

 額の汗をぬぐいながら返答する上級生女子に対して、オレは頭をかきながら謝罪する。

「すみません、オレたち、ナニもできませんでした……」

「なに言ってんだ。あかりにパスを出して得点させただけでも、大したもんだよ。相手は、川の向こうの高校(チーム)の現役選手だからな」

 オレの言葉に反応した渡辺先輩が、ガハハと笑いながら答える。
 先輩は励ますように言ってくれるが、あの時間帯は、相手が完全に舐めプレーをしていたから、自分たちの貢献度が、どれほどのモノだったかは判断がしづらいところだ。

 そんな風に、山吹の身の安全が保たれたことに安堵しながら、勝利の余韻にひたっていると、

「ざけんな! そっちは人数も多くて卑怯じゃねぇか!?」

と、相手チームの一人である永井が、ボールをコートに叩きつけて声を張り上げた。

 たしかに、自由に交代ありの合計6人でゲームを回したオレたちのチームは、スタミナ面で大いにアドバンテージはあったわけだが……。

「ん〜? 結果に不満なの? 素人みたいな二人と女子を相手に前半は大量リードしてたのに? 納得できないって言うなら、今度は人数をあわせて、もうひと勝負してもイイけど? 今度は、タイマーをつけて、10分勝負にする?」

 林先輩の一言に、永井は、ぐっと唇を噛む。
 相手は、オレたちと試合を始めてから、すでに20分近くプレーしっぱなしだ。さすがに、体力の限界も近いだろう。実際、政宗が最後のジャンプシュートを外してしまったのも、疲労が原因なのではないか、とオレは感じていた。

「もうイイって! 行こうぜ!!」

 そう言って立ち上がった政宗は、ペッとコートにツバを吐き出し、

()()()()()()()()()()を相手にしていても仕方ねぇ」

と言って、この場を立ち去ろうとする。

 自分たちで絡んできておきながら、捨てゼリフまで小物感まる出しとは、どこまでもしょうもないヤツらである。相手のチームながら、バスケのプレーぶりに少しでも感嘆したオレの気持ちを返してほしい。

 そんな政宗たち三人に対して、心のなかでため息をつきながら、「もう、さっさと帰れ……」と念じていると、思わぬところから声が上がった。

「おい! 今の山吹に対する言葉は取り消せ!!」

 立ち去ろうとする三人の背中に向けて声を発したのは、緑川だった。

「試合に負けた上に、相手を侮辱するなんて、スポーツをする人間として恥ずかしくないのか!?」

 ぐうの音も出ない正論ではあるが、なぜ、わざわざ相手の逆鱗に触れるようなことを言うのか?
 クラスメートのこの余計な一言に、さすがにカチンと来たのか、背中を向けていた三人がこちらに歩み寄ってきて、オレたちが止める間もなく、緑川の胸ぐらをつかむ。

「試合じゃ、なんにもしてねぇヒョロガリのくせに、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 緑川のシャツを掴んだまま、拳を振り上げる政宗を制するべく、渡辺先輩と吉井が三人に近づくが、永井と二又(ふたまた)が、ニヤニヤとしながらガードに入った。

 試合後のスッキリした勝利の余韻はなくなり、緊迫した雰囲気が漂い始めたそのとき――――――。

「もう、その辺で止めておいた方が良いと思うよ〜」

 ビデオカメラを構えたまま、声をかけてきたのは、オレの無二の親友だった。

「周りには、これだけ、大勢の人たちがいるのに、暴力行為を行うとかアホなの? あと、いま、この瞬間の行為と、さっきまで竜司たち素人プレーヤーに対して行っていたラフプレーの数々は、キッチリ、このカメラとスマホに記録しているから」

 カメラを片手に、澄ました表情で語る壮馬の言葉に、三人は、一瞬たじろぐ。

「だ、だから、どうだって言うんだよ?」

 二又が、虚勢を張るように言うと、その言葉に気を取り直したのか、政宗はふたたび緑川に向き直り、胸元をつかむ手にチカラを込める。永井もまた、ニヤけた表情に戻った。

 そんな三人のようすをため息をつきながら眺めていた親友は、「やれやれ……」と肩をすくめたあと、断言した。

「さっきの動画は、すでにウチの学校の生徒会と生徒指導担当()()()()()()にあててLANEで送信済みだ。これ以上の行為に及ぶなら、当然、いま撮影中の動画も合わせて見てもらうことになる。ウチの生徒指導担当から、キミたちの学校の生徒指導の先生には、今日中に連絡が入るんじゃないの? 明日の登校日が楽しみだね」

 この一言には、さすがに彼らも動揺したようだ。
 そこまで言い切った壮馬は、さらに、トドメを刺すように、オレに声をかけてきた。

「竜司、動画を送った、()()()()()()のヒトが話したいらしいから、すぐに連絡を取ってよ」

 そう言って、壮馬が指し示したのは、オレと同じマンションに住む女子生徒のLANEのアイコンだった。


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 スコアは22対20――――――。
 僅差での逆転勝利に、この上なくテンションが上がる。
 もっとも、緑川と自分は、試合にはほとんど貢献していないのだが……。
 それでも、自分たちの勝利の喜びを分かち合うべく、チームメイトの元に駆け寄る。
「|山吹《やまぶき》、吉井、先輩たちのプレー、スゴかったです」
 四人に声をかけると、林先輩が真っ先に応じる。
「いや〜、練習日でもないのに、つい熱くなっちゃった。黒田くんと緑川くんも、お疲れさま」
 額の汗をぬぐいながら返答する上級生女子に対して、オレは頭をかきながら謝罪する。
「すみません、オレたち、ナニもできませんでした……」
「なに言ってんだ。あかりにパスを出して得点させただけでも、大したもんだよ。相手は、川の向こうの|高校《チーム》の現役選手だからな」
 オレの言葉に反応した渡辺先輩が、ガハハと笑いながら答える。
 先輩は励ますように言ってくれるが、あの時間帯は、相手が完全に舐めプレーをしていたから、自分たちの貢献度が、どれほどのモノだったかは判断がしづらいところだ。
 そんな風に、山吹の身の安全が保たれたことに安堵しながら、勝利の余韻にひたっていると、
「ざけんな! そっちは人数も多くて卑怯じゃねぇか!?」
と、相手チームの一人である永井が、ボールをコートに叩きつけて声を張り上げた。
 たしかに、自由に交代ありの合計6人でゲームを回したオレたちのチームは、スタミナ面で大いにアドバンテージはあったわけだが……。
「ん〜? 結果に不満なの? 素人みたいな二人と女子を相手に前半は大量リードしてたのに? 納得できないって言うなら、今度は人数をあわせて、もうひと勝負してもイイけど? 今度は、タイマーをつけて、10分勝負にする?」
 林先輩の一言に、永井は、ぐっと唇を噛む。
 相手は、オレたちと試合を始めてから、すでに20分近くプレーしっぱなしだ。さすがに、体力の限界も近いだろう。実際、政宗が最後のジャンプシュートを外してしまったのも、疲労が原因なのではないか、とオレは感じていた。
「もうイイって! 行こうぜ!!」
 そう言って立ち上がった政宗は、ペッとコートにツバを吐き出し、
「|あ《・》|か《・》|り《・》|み《・》|た《・》|い《・》|な《・》|ビ《・》|ッ《・》|チ《・》を相手にしていても仕方ねぇ」
と言って、この場を立ち去ろうとする。
 自分たちで絡んできておきながら、捨てゼリフまで小物感まる出しとは、どこまでもしょうもないヤツらである。相手のチームながら、バスケのプレーぶりに少しでも感嘆したオレの気持ちを返してほしい。
 そんな政宗たち三人に対して、心のなかでため息をつきながら、「もう、さっさと帰れ……」と念じていると、思わぬところから声が上がった。
「おい! 今の山吹に対する言葉は取り消せ!!」
 立ち去ろうとする三人の背中に向けて声を発したのは、緑川だった。
「試合に負けた上に、相手を侮辱するなんて、スポーツをする人間として恥ずかしくないのか!?」
 ぐうの音も出ない正論ではあるが、なぜ、わざわざ相手の逆鱗に触れるようなことを言うのか?
 クラスメートのこの余計な一言に、さすがにカチンと来たのか、背中を向けていた三人がこちらに歩み寄ってきて、オレたちが止める間もなく、緑川の胸ぐらをつかむ。
「試合じゃ、なんにもしてねぇヒョロガリのくせに、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
 緑川のシャツを掴んだまま、拳を振り上げる政宗を制するべく、渡辺先輩と吉井が三人に近づくが、永井と|二又《ふたまた》が、ニヤニヤとしながらガードに入った。
 試合後のスッキリした勝利の余韻はなくなり、緊迫した雰囲気が漂い始めたそのとき――――――。
「もう、その辺で止めておいた方が良いと思うよ〜」
 ビデオカメラを構えたまま、声をかけてきたのは、オレの無二の親友だった。
「周りには、これだけ、大勢の人たちがいるのに、暴力行為を行うとかアホなの? あと、いま、この瞬間の行為と、さっきまで竜司たち素人プレーヤーに対して行っていたラフプレーの数々は、キッチリ、このカメラとスマホに記録しているから」
 カメラを片手に、澄ました表情で語る壮馬の言葉に、三人は、一瞬たじろぐ。
「だ、だから、どうだって言うんだよ?」
 二又が、虚勢を張るように言うと、その言葉に気を取り直したのか、政宗はふたたび緑川に向き直り、胸元をつかむ手にチカラを込める。永井もまた、ニヤけた表情に戻った。
 そんな三人のようすをため息をつきながら眺めていた親友は、「やれやれ……」と肩をすくめたあと、断言した。
「さっきの動画は、すでにウチの学校の生徒会と生徒指導担当|そ《・》|の《・》|他《・》|の《・》|方《・》|面《・》にあててLANEで送信済みだ。これ以上の行為に及ぶなら、当然、いま撮影中の動画も合わせて見てもらうことになる。ウチの生徒指導担当から、キミたちの学校の生徒指導の先生には、今日中に連絡が入るんじゃないの? 明日の登校日が楽しみだね」
 この一言には、さすがに彼らも動揺したようだ。
 そこまで言い切った壮馬は、さらに、トドメを刺すように、オレに声をかけてきた。
「竜司、動画を送った、|そ《・》|の《・》|他《・》|の《・》|方《・》|面《・》のヒトが話したいらしいから、すぐに連絡を取ってよ」
 そう言って、壮馬が指し示したのは、オレと同じマンションに住む女子生徒のLANEのアイコンだった。