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第4章〜愛は目で見るものではなく、心で見るもの〜④

ー/ー



「ヨッシャ!」

 シュートが決まった瞬間、オレと緑川(みどりかわ)は、声をあげて両手でハイタッチを交わした。
 コートの中でも、山吹(やまぶき)、林先輩、吉井の三人が、得点の喜びを分かち合っている。

 得点は、7対14。

 オレたち二人のラストプレーとなった山吹のフリースローから、明らかに流れがコチラに傾いている。

 女子二名が入っているチームとは言え、やはり、本職のバスケ部員を相手にするのは、オレたちのような半分素人同然のメンバーと戦うのとは、勝手が違うようだ。

 だが、悔しそうな表情の政宗(まさむね)とは違い、パスをカットされた永井は、「お〜、(わり)(わり)い」と、ヘラヘラとした表情で声をかけ、二又(ふたまた)も「ドンマ〜イ」と、同じような表情で応じている。
 そんな二人の反応に、一瞬、イラだつような素振りを見せた政宗だが、

「オレは、中に入る」

と一言だけ告げて、オフェンスのボールを二又に手渡すと、吉井と並んで、ゴール下のエリアに陣取った。

 身長190センチ台の男子選手が、二人もリングの下に居座ると、それだけで、本格的なバスケの試合に観えてくる。バスケ部同士のガチな3x3(スリー・エックス・スリー)が始まったことをあらためて感じたオレは、緊張でつばを飲み込む。

 明らかに戦術を変えてきた相手は、力押しのパワープレーを仕掛けてきた。

 ゲームが再開すると、二又は、さっきの政宗と同じように身体を寄せた山吹にチャージし、すかさず、永井にパスを出す。今度は、奇をてらうことなくドリブルで仕掛けた永井は、マークする林先輩を難なく振り切り、ゴール下に切り込むと、巨体を誇る吉井が迫ったところで、フリーになっていた政宗にパスを出した。
 プレッシャーを受けることない政宗は、軽々とレイアップシュートを決める。

 こちらのメンバーチェンジに合わせて、すぐに方針を変更したオフェンス側の狙いは的中したようだ。

 7対15――――――。

 スコアが、このまま推移するなら、オレたち(と言っても、緑川と自分には、もう出番はなさそうだが……)のチームは、アークの外側からのシュートを決め続けないと、勝ち目がなくなる。
 ただ、舐めプレーをして、自由に山吹にシュートを打たしていたオレたちが出場していた時間帯とは違い、政宗たちが彼女をフリーにさせることはないだろう。

 山吹のシュートを封じられるとすれば、こちらのチームも、インサイドプレーに舵を切らなければならない。
 ただ、そうするには、相手との点差が開きすぎている。

 どうする――――――?

 バスケ部として試合経験豊富な渡辺先輩と林先輩の表情を確認すると、二人は、お互いにアイコンタクトを交わし、なにかを伝えあったようだ。
 その内容をコート内の林先輩が、下級生の男女二人に伝えると、吉井と山吹は、上級生の言葉にだまってうなずいた。

 アークの外にボールが送られて、ふたたび試合が再開し、林先輩からボールを受けた山吹は、ドリブルでゴール前に切り込む。
 これまで、2ポイントのシュート狙いのプレーばかりを見せていた彼女の動きに着いてこれず、一瞬、マークしていたドリブラーに振り切りかけられた永井は、なんとか、ゴール下への侵入は阻止したものの、山吹から林先輩へのパスをインターセプトすることはできなかった。
 ボールを受けた林先輩は、即興とは思えないコンビネーションで吉井とのパス&ゴーを仕掛けて、ゴール下に突き進む。
 政宗と二又の二人を掻い潜って、ゴールに迫った上級生女子は、そのままレイアップで得点を狙いに行くかと思ったのだが――――――。

 オレたちコート外の人間が目を離した間に、アークの右隅に移動した山吹が手を挙げると、林先輩は、シュート・フェイントからアークの外にパスを出す。
 永井のマークを完全に外すことに成功した山吹は、先ほどと同じような美しいフォームでシュートを決めてみせた。

 女子選手二人の見事な連携プレーに、このゲームの関係者であるオレや緑川だけでなく、他のコートでプレーを楽しんでいた人たちからも歓声があがった。

 当たり前だが、休日の昼間のバスケット広場で、ガチのプレーをする人間は珍しい。
 オレと緑川が選手交代をしてから、明らかにプレーのクオリティーが変わったことに、周囲の人間も気づいたのだろう。

 気づけば、自分たち以外のギャラリーが、ハーフコートの周りに集まって来ていた。

「がんばれ〜、お姉ちゃん!」

 女の子からの声援が山吹たちに飛べば、

「デッカイ兄ちゃんたちも負けるな〜!」

と、オジサンが応援する。

 ただ、コートのそばに居るにもかかわらず、こんなときでも、壮馬だけは試合展開そっちのけでスマホの画面を操作している。
 相変わらずなマイペースぶりの友人にあきれつつ、オレは、声援を送ることにチカラを注ぐことにする。

 スコアは9対15。

 攻守交代となったところで、林先輩は渡辺先輩とハイタッチを交わしてコートの外に出た。
 たしかに、ディフェンス面では、男子で大柄な渡辺先輩が適任だろうが……。
 直前のオフェンス時の連携を見せられると、林先輩がコートの外に出てしまうのは惜しい気がする。

 そんなことをチラリと思ったオレは、自分の考えが甘かったことにすぐに気づいた。

 政宗たちのオフェンスをあっさりと阻止して、渡辺先輩はボールをエリアの外に、はたき出す。
 こちらのチームがディフェンスに成功したので、試合開始時と同様、チェックボールで試合再開となる。攻守交代でアークの内側にいるディフェンス側の永井が、アーク外側の頂点付近にいる山吹にボールをパスする直前、渡辺先輩は、ふたたび、林先輩とハイタッチを交わして、コートの外に出る。

「あかり、行くよ!」

 勢い良くコートに飛び出した林先輩の言葉に応じて、ディフェンスからボールを受け取った山吹は、上級生にパスを出した。


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「ヨッシャ!」
 シュートが決まった瞬間、オレと|緑川《みどりかわ》は、声をあげて両手でハイタッチを交わした。
 コートの中でも、|山吹《やまぶき》、林先輩、吉井の三人が、得点の喜びを分かち合っている。
 得点は、7対14。
 オレたち二人のラストプレーとなった山吹のフリースローから、明らかに流れがコチラに傾いている。
 女子二名が入っているチームとは言え、やはり、本職のバスケ部員を相手にするのは、オレたちのような半分素人同然のメンバーと戦うのとは、勝手が違うようだ。
 だが、悔しそうな表情の|政宗《まさむね》とは違い、パスをカットされた永井は、「お〜、|悪《わり》い|悪《わり》い」と、ヘラヘラとした表情で声をかけ、|二又《ふたまた》も「ドンマ〜イ」と、同じような表情で応じている。
 そんな二人の反応に、一瞬、イラだつような素振りを見せた政宗だが、
「オレは、中に入る」
と一言だけ告げて、オフェンスのボールを二又に手渡すと、吉井と並んで、ゴール下のエリアに陣取った。
 身長190センチ台の男子選手が、二人もリングの下に居座ると、それだけで、本格的なバスケの試合に観えてくる。バスケ部同士のガチな|3x3《スリー・エックス・スリー》が始まったことをあらためて感じたオレは、緊張でつばを飲み込む。
 明らかに戦術を変えてきた相手は、力押しのパワープレーを仕掛けてきた。
 ゲームが再開すると、二又は、さっきの政宗と同じように身体を寄せた山吹にチャージし、すかさず、永井にパスを出す。今度は、奇をてらうことなくドリブルで仕掛けた永井は、マークする林先輩を難なく振り切り、ゴール下に切り込むと、巨体を誇る吉井が迫ったところで、フリーになっていた政宗にパスを出した。
 プレッシャーを受けることない政宗は、軽々とレイアップシュートを決める。
 こちらのメンバーチェンジに合わせて、すぐに方針を変更したオフェンス側の狙いは的中したようだ。
 7対15――――――。
 スコアが、このまま推移するなら、オレたち(と言っても、緑川と自分には、もう出番はなさそうだが……)のチームは、アークの外側からのシュートを決め続けないと、勝ち目がなくなる。
 ただ、舐めプレーをして、自由に山吹にシュートを打たしていたオレたちが出場していた時間帯とは違い、政宗たちが彼女をフリーにさせることはないだろう。
 山吹のシュートを封じられるとすれば、こちらのチームも、インサイドプレーに舵を切らなければならない。
 ただ、そうするには、相手との点差が開きすぎている。
 どうする――――――?
 バスケ部として試合経験豊富な渡辺先輩と林先輩の表情を確認すると、二人は、お互いにアイコンタクトを交わし、なにかを伝えあったようだ。
 その内容をコート内の林先輩が、下級生の男女二人に伝えると、吉井と山吹は、上級生の言葉にだまってうなずいた。
 アークの外にボールが送られて、ふたたび試合が再開し、林先輩からボールを受けた山吹は、ドリブルでゴール前に切り込む。
 これまで、2ポイントのシュート狙いのプレーばかりを見せていた彼女の動きに着いてこれず、一瞬、マークしていたドリブラーに振り切りかけられた永井は、なんとか、ゴール下への侵入は阻止したものの、山吹から林先輩へのパスをインターセプトすることはできなかった。
 ボールを受けた林先輩は、即興とは思えないコンビネーションで吉井とのパス&ゴーを仕掛けて、ゴール下に突き進む。
 政宗と二又の二人を掻い潜って、ゴールに迫った上級生女子は、そのままレイアップで得点を狙いに行くかと思ったのだが――――――。
 オレたちコート外の人間が目を離した間に、アークの右隅に移動した山吹が手を挙げると、林先輩は、シュート・フェイントからアークの外にパスを出す。
 永井のマークを完全に外すことに成功した山吹は、先ほどと同じような美しいフォームでシュートを決めてみせた。
 女子選手二人の見事な連携プレーに、このゲームの関係者であるオレや緑川だけでなく、他のコートでプレーを楽しんでいた人たちからも歓声があがった。
 当たり前だが、休日の昼間のバスケット広場で、ガチのプレーをする人間は珍しい。
 オレと緑川が選手交代をしてから、明らかにプレーのクオリティーが変わったことに、周囲の人間も気づいたのだろう。
 気づけば、自分たち以外のギャラリーが、ハーフコートの周りに集まって来ていた。
「がんばれ〜、お姉ちゃん!」
 女の子からの声援が山吹たちに飛べば、
「デッカイ兄ちゃんたちも負けるな〜!」
と、オジサンが応援する。
 ただ、コートのそばに居るにもかかわらず、こんなときでも、壮馬だけは試合展開そっちのけでスマホの画面を操作している。
 相変わらずなマイペースぶりの友人にあきれつつ、オレは、声援を送ることにチカラを注ぐことにする。
 スコアは9対15。
 攻守交代となったところで、林先輩は渡辺先輩とハイタッチを交わしてコートの外に出た。
 たしかに、ディフェンス面では、男子で大柄な渡辺先輩が適任だろうが……。
 直前のオフェンス時の連携を見せられると、林先輩がコートの外に出てしまうのは惜しい気がする。
 そんなことをチラリと思ったオレは、自分の考えが甘かったことにすぐに気づいた。
 政宗たちのオフェンスをあっさりと阻止して、渡辺先輩はボールをエリアの外に、はたき出す。
 こちらのチームがディフェンスに成功したので、試合開始時と同様、チェックボールで試合再開となる。攻守交代でアークの内側にいるディフェンス側の永井が、アーク外側の頂点付近にいる山吹にボールをパスする直前、渡辺先輩は、ふたたび、林先輩とハイタッチを交わして、コートの外に出る。
「あかり、行くよ!」
 勢い良くコートに飛び出した林先輩の言葉に応じて、ディフェンスからボールを受け取った山吹は、上級生にパスを出した。