表示設定
表示設定
目次 目次




第49話 バレンタインデー2~サボりんぬ~

ー/ー



 湯煎するには多すぎたカカオ多めのチョコレートを食べておいしくて泣いた。ただ、おいしいだけの感情だろうか……?

「ただいまー」

 色々考えているうちに、迅くんも帰宅した。それには気づかなかった。気づいたら泣いてたことがバレた。ただ、わたしは勉強が辛くて泣いていたと誤魔化した。迅くんは見事に騙されて、『今日、明日くらいゆっくりしよう』と言ってくれた。ごめん、わたし、元々明日までゆっくりする予定だったの。

 ――でも、どうして、泣いたんだろう

 迅くんがカレーを作り始めた。お父さんの指示でお姉ちゃんが迅くんの料理さばきをガン見している。ホントはRPGゲームの料理の再現レシピを作るつもりだったらしい。お姉ちゃんが料理さばき見ると聞いて、急遽よくあるカレーに変えたらしい。

「ホントは、このタイミングじゃないし、一般的なカレーにはそこまで入れないけど、ビターチョコとホワイトチョコを一欠片ずつ入れるのがオレのこだわりなんよなー」
「ふーん」

 お姉ちゃんが迅くんと話しつつ包丁や煮込むのに混ぜる手つきを見ている。そこに下心はないだろうし、他意は何もないだろう。それこそ、料理がうまくなりたいくらいしかないだろう。このワンシーンだけ見れば、わたしよりもお姉ちゃんの方が迅くんの恋人に見える。

「はぁ」

『有紀ーごめん!……』

 お姉ちゃんがキッチンに向かった。迅くんになにか頼まれたようだ。いや、冷蔵庫があるのもキッチンだ。もしかしたら、棒アイスを出すのかもしれない。冷蔵庫ではなく、炊飯器からお釜を出して……、炊飯器からお釜? あれ、迅くん、お米炊き忘れたの?

 キッチンと繋がっているリビングのテレビで動画投稿サイトの『東大生が教える高校受験対策』チャンネルを流し見していたわたしはその光景を見て、今度はお姉ちゃんに迅くんを盗られるのでは? と不安にもなっていた。

「迅くん、お米炊くの忘れたの?」
「んー、まぁ、そうだなー。いやぁ、お恥ずかしい」

 なんとなくただ、聞いただけだ。お姉ちゃんは不満げに言う。

 『夏芽は勉強しなさい』

「夏芽、さっきまで勉強辛いって泣いてたから今日くらい……」
「お兄ちゃん、そんな甘い考えで夏芽が西馬に合格するとでも!? 夏芽はね、生粋のサボり人なんだよ!? 夏芽の必殺、『サボりんぬ』をくらえ!!」

『サボりんぬ……?』

 お姉ちゃんの言った謎の言葉にわたしも迅くんも首を傾げた。『ごんごんぬ』なら特に意味もなく語呂がいいという理由で、すごい小さな時ふざけて言った記憶がある。

「まぁ、ご飯前くらいいいんじゃない?」

 わたしが勉強するかどうかは、わたし自身が決めることだ。それこそ前に迅くんが言ってたように『努力はいつかは報われる』のだ。努力がその道で報われるかどうかはわからない。そのまま迅くんとお姉ちゃんの共同作業のカレーができた。お米を炊いたのはお姉ちゃん、カレーを作ったのは迅くん。

「いただきます。でも、迅くんはわたしに何度か食べられたもんね!!」

 迅くんが水を飲んだところにわたしのこの発言で喉に詰まらせた。アニメやマンガだと水を吹くところだろう。

「食べられたってどういう意味かな? 夏芽。事と次第によってはお兄ちゃん追い出すから」
「え、ふつーにキスしたっていう意味だけど」
「それくらいならいっか。ホントに食べてたら追い出すよ。夏芽はまだ中学生だし、受験生なんだから」

「そういえば、忠さんは?」
「あー、商店街の会議だったかなー」
「確か、今週末から大型ショッピングモール営業開始だから、その壮行会かなんかで深夜までどんちゃん騒ぎするって聞いてるよ」

 わたしとお姉ちゃん、迅くんの会話はその後プツリと途切れた。今は関係ないけど、そのショッピングモールができることにより商店街のお店がダメージくらうのだ。迅くんはいざ知らず、わたしとお姉ちゃん、お父さんの生活は苦しくなるがのが目に見える。

 ――ショッピングモールも本来先月オープンのはずだった。何か不具合があったのだろうか?

 ショッピングモールのオープンによる鮮魚のはなまるの売上低下により収入が減るのが見込まれる。なおさら授業料が安くなる公立高校に行かなきゃ。そういえばちょっと前の話題だった私立高校の授業料完全無償化ってどうなったんだろう?

 そのままお父さんはお店の2階会議室で寝てしまったらしく、家には帰ってこなかった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第50話 私立高校の合否


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 湯煎するには多すぎたカカオ多めのチョコレートを食べておいしくて泣いた。ただ、おいしいだけの感情だろうか……?
「ただいまー」
 色々考えているうちに、迅くんも帰宅した。それには気づかなかった。気づいたら泣いてたことがバレた。ただ、わたしは勉強が辛くて泣いていたと誤魔化した。迅くんは見事に騙されて、『今日、明日くらいゆっくりしよう』と言ってくれた。ごめん、わたし、元々明日までゆっくりする予定だったの。
 ――でも、どうして、泣いたんだろう
 迅くんがカレーを作り始めた。お父さんの指示でお姉ちゃんが迅くんの料理さばきをガン見している。ホントはRPGゲームの料理の再現レシピを作るつもりだったらしい。お姉ちゃんが料理さばき見ると聞いて、急遽よくあるカレーに変えたらしい。
「ホントは、このタイミングじゃないし、一般的なカレーにはそこまで入れないけど、ビターチョコとホワイトチョコを一欠片ずつ入れるのがオレのこだわりなんよなー」
「ふーん」
 お姉ちゃんが迅くんと話しつつ包丁や煮込むのに混ぜる手つきを見ている。そこに下心はないだろうし、他意は何もないだろう。それこそ、料理がうまくなりたいくらいしかないだろう。このワンシーンだけ見れば、わたしよりもお姉ちゃんの方が迅くんの恋人に見える。
「はぁ」
『有紀ーごめん!……』
 お姉ちゃんがキッチンに向かった。迅くんになにか頼まれたようだ。いや、冷蔵庫があるのもキッチンだ。もしかしたら、棒アイスを出すのかもしれない。冷蔵庫ではなく、炊飯器からお釜を出して……、炊飯器からお釜? あれ、迅くん、お米炊き忘れたの?
 キッチンと繋がっているリビングのテレビで動画投稿サイトの『東大生が教える高校受験対策』チャンネルを流し見していたわたしはその光景を見て、今度はお姉ちゃんに迅くんを盗られるのでは? と不安にもなっていた。
「迅くん、お米炊くの忘れたの?」
「んー、まぁ、そうだなー。いやぁ、お恥ずかしい」
 なんとなくただ、聞いただけだ。お姉ちゃんは不満げに言う。
 『夏芽は勉強しなさい』
「夏芽、さっきまで勉強辛いって泣いてたから今日くらい……」
「お兄ちゃん、そんな甘い考えで夏芽が西馬に合格するとでも!? 夏芽はね、生粋のサボり人なんだよ!? 夏芽の必殺、『サボりんぬ』をくらえ!!」
『サボりんぬ……?』
 お姉ちゃんの言った謎の言葉にわたしも迅くんも首を傾げた。『ごんごんぬ』なら特に意味もなく語呂がいいという理由で、すごい小さな時ふざけて言った記憶がある。
「まぁ、ご飯前くらいいいんじゃない?」
 わたしが勉強するかどうかは、わたし自身が決めることだ。それこそ前に迅くんが言ってたように『努力はいつかは報われる』のだ。努力がその道で報われるかどうかはわからない。そのまま迅くんとお姉ちゃんの共同作業のカレーができた。お米を炊いたのはお姉ちゃん、カレーを作ったのは迅くん。
「いただきます。でも、迅くんはわたしに何度か食べられたもんね!!」
 迅くんが水を飲んだところにわたしのこの発言で喉に詰まらせた。アニメやマンガだと水を吹くところだろう。
「食べられたってどういう意味かな? 夏芽。事と次第によってはお兄ちゃん追い出すから」
「え、ふつーにキスしたっていう意味だけど」
「それくらいならいっか。ホントに食べてたら追い出すよ。夏芽はまだ中学生だし、受験生なんだから」
「そういえば、忠さんは?」
「あー、商店街の会議だったかなー」
「確か、今週末から大型ショッピングモール営業開始だから、その壮行会かなんかで深夜までどんちゃん騒ぎするって聞いてるよ」
 わたしとお姉ちゃん、迅くんの会話はその後プツリと途切れた。今は関係ないけど、そのショッピングモールができることにより商店街のお店がダメージくらうのだ。迅くんはいざ知らず、わたしとお姉ちゃん、お父さんの生活は苦しくなるがのが目に見える。
 ――ショッピングモールも本来先月オープンのはずだった。何か不具合があったのだろうか?
 ショッピングモールのオープンによる鮮魚のはなまるの売上低下により収入が減るのが見込まれる。なおさら授業料が安くなる公立高校に行かなきゃ。そういえばちょっと前の話題だった私立高校の授業料完全無償化ってどうなったんだろう?
 そのままお父さんはお店の2階会議室で寝てしまったらしく、家には帰ってこなかった。