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第3章〜最も長く続く愛は、報われない愛である〜③

ー/ー



 何気ない気持ちで問いかけたオレの質問に、緑川(みどりかわ)と会話をしていたときには、終始テンションが低めだった桃華(ももか)は、声を張り上げて反応する。
 
「は、はあ〜!? き、気になってる男子とか! いきなり、なに言ってるんですか? だ、だいたい、なんで、そんなこと、くろセンパイに言わなきゃいけないんですか!?」

 しまった――――――。
 さすがに、会話の流れも考えず、プライベートなことに踏み込みすぎたか……。

「あっ、いや、申し訳ない……このルーティーン・トークを教えてくれたアドバイザーが、ちょっと、気になることを言ってたからさ」

 申し開きをしようとしたオレに対して、桃華はストレートに問い返してくる。

「その、アドバイスをしたヒトって……もしかしなくても、白草さんですよね?」

 有無を言わさぬ口調と、ジト目という表現がピッタリの表情で繰り出された問いには、年下の女子生徒が相手であるにもかかわらず、「はい、そうです……」と敬語で答えるしかなかった。

 オレの返答に、桃華は、盛大なため息をついてから、追撃してくる。

「はあ〜〜〜〜。ホント、しょうもない……どうせ、あのヒトが、そのルーティーンとかの効き目がなければ、『相手の女子は、片想いしてる』とか言ってたんでしょう? そうですよね?」

 その鋭い指摘に、

「ああ、だいたい、そんな感じだ」
 
と答えを返すと、 後輩女子は、「じゃあ、くろセンパイに聞きたいんですけど……」と、前置きしたうえで、こんなことをたずねてきた。

「仮に、ですよ……たとえば、緑川さんが、さっきのルーティーンとやらを鳳花(ほうか)センパイに仕掛けたとして、成功すると思いますか? ワタシに対してやったのと同じように失敗したとして、鳳花(ほうか)センパイに片想いの相手が居るって、くろセンパイは想像しますか?」

 立て続けに行われる問いかけに、オレは、ぐうの音も出ず、「そうだな……」と、白旗をあげる。

「モモカの言うとおりだ……あの部長が相手だったら、こんなルーティーンに惑わされることなんてないだろうし、失敗の原因を部長の恋愛事情に求めたりしない。余計な勘ぐりをして、申し訳なかった」

 素直に頭を下げて謝ると、桃華は、ようやく表情をやわらげた。さらに、後輩女子は、両腕を胸元で組んで「まあ、わかればイイんです……」と言ったあと、こんなことをたずねてきた。

「と、ところで、くろセンパイは、ワタシにルーティーンが仕掛けられたとき、なんとも思わなかったんですか?」

 ぶっちゃけた話し、その()()()()を知っている自分としては、知り合いの女子に例のルーティーンが仕掛けられることに対して、良い気はしない。いや、平たく言えば不快にさえ感じる。

 それは、緑川が自室にこもっていたときに、クラス委員の紅野や幼なじみのシロに対して暴言を吐いたときとは、また少し異なる不愉快さだとも言える。
 考案者であるシロは別として、そのネタの意図するところを知らない紅野に対して、緑川や他の男子が、例のルーティーンを仕掛けようとしたら、オレは、迷うことなく、その()()のネタばらしをするだろう。
 そう考えたオレは、桃華の質問にも素直に自分の気持ちを答える。

「まあ、知り合いの女子に()()を仕掛けられるのは、不愉快だな。ましてや、モモカは、自分たちの可愛い後輩なわけで……」

 そんな言葉を返すと、彼女は、表情を崩して主張する。

「さ、最初から、そう言えば良いんですよ! くろセンパイは、カワイイ後輩の想いに、もっと気を配るべきです!」

 悪気はなかったのだが、前触れもなく、桃華の恋愛事情に踏み込んでしまったことを反省しつつ、「そうだな……すまなかった」と、オレは、再度、頭を下げた。

「わ、わかればイイんです! ホントは、あのルーティーンを止めてくれたら、もっと嬉しかったけど……くろセンパイが、気に掛けてくれてたなら、特別に今回だけは許してあげます」

 さっきと同じような言葉を口にした後輩に対して、オレは、「そうか、ありがとう」と返答したあと、部室に来た当初から気になっていた、もう一つのことをたずねてみる。

「そう言えば、さっきから、ノーパソに向かって、ナニをしてたんだ? 色んな表情や動作をしてたみたいだけど……」

 問いかけると、桃華は弾んだ声で、PCのモニターをこちらに向けて返答する。

「そう! くろセンパイにもコレを見て欲しかったんです!」

 そう言って、オレの方に向けられたディスプレイでは、左上に『VRoid工房』というタイトルが記されたソフトが動いていた。

「これは? VTuberのアバターを作るアプリか?」

 桃華に質問を返すと、彼女は嬉しそうな反応を示す。

「さすが、くろセンパイ! そのとおりです! こういうアプリで、VTuberのキャラクターを作って、広報部と学校のマスコットキャラクターに出来ないかって考えているんですよ!」

「で、桃華が、そのキャラクターの中の人を担当する、ってことだよな?」

 答えは、わかりきっていたが、確認のためにそうたずねると、後輩女子は、満面の笑みを浮かべながら、黙ってコクリとうなずく。桃華のその笑顔につられるように、オレも表情をほころばせて、

「面白そうなアイデアだな! どんな感じなのか、詳しく教えてくれよ」

と、返事をすると、彼女は、

「くろセンパイなら、そう言ってくれると思ってました!」

と言って、無邪気な表情で抱きついてくる。
 普段はあまり見ることが出来ない後輩女子の無垢な笑顔に戸惑いつつも、オレは、いつもの広報部の活動風景が戻ってきたことを嬉しく感じていた。


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 何気ない気持ちで問いかけたオレの質問に、|緑川《みどりかわ》と会話をしていたときには、終始テンションが低めだった|桃華《ももか》は、声を張り上げて反応する。
「は、はあ〜!? き、気になってる男子とか! いきなり、なに言ってるんですか? だ、だいたい、なんで、そんなこと、くろセンパイに言わなきゃいけないんですか!?」
 しまった――――――。
 さすがに、会話の流れも考えず、プライベートなことに踏み込みすぎたか……。
「あっ、いや、申し訳ない……このルーティーン・トークを教えてくれたアドバイザーが、ちょっと、気になることを言ってたからさ」
 申し開きをしようとしたオレに対して、桃華はストレートに問い返してくる。
「その、アドバイスをしたヒトって……もしかしなくても、白草さんですよね?」
 有無を言わさぬ口調と、ジト目という表現がピッタリの表情で繰り出された問いには、年下の女子生徒が相手であるにもかかわらず、「はい、そうです……」と敬語で答えるしかなかった。
 オレの返答に、桃華は、盛大なため息をついてから、追撃してくる。
「はあ〜〜〜〜。ホント、しょうもない……どうせ、あのヒトが、そのルーティーンとかの効き目がなければ、『相手の女子は、片想いしてる』とか言ってたんでしょう? そうですよね?」
 その鋭い指摘に、
「ああ、だいたい、そんな感じだ」
と答えを返すと、 後輩女子は、「じゃあ、くろセンパイに聞きたいんですけど……」と、前置きしたうえで、こんなことをたずねてきた。
「仮に、ですよ……たとえば、緑川さんが、さっきのルーティーンとやらを|鳳花《ほうか》センパイに仕掛けたとして、成功すると思いますか? ワタシに対してやったのと同じように失敗したとして、|鳳花《ほうか》センパイに片想いの相手が居るって、くろセンパイは想像しますか?」
 立て続けに行われる問いかけに、オレは、ぐうの音も出ず、「そうだな……」と、白旗をあげる。
「モモカの言うとおりだ……あの部長が相手だったら、こんなルーティーンに惑わされることなんてないだろうし、失敗の原因を部長の恋愛事情に求めたりしない。余計な勘ぐりをして、申し訳なかった」
 素直に頭を下げて謝ると、桃華は、ようやく表情をやわらげた。さらに、後輩女子は、両腕を胸元で組んで「まあ、わかればイイんです……」と言ったあと、こんなことをたずねてきた。
「と、ところで、くろセンパイは、ワタシにルーティーンが仕掛けられたとき、なんとも思わなかったんですか?」
 ぶっちゃけた話し、その|意《・》|図《・》や|狙《・》|い《・》を知っている自分としては、知り合いの女子に例のルーティーンが仕掛けられることに対して、良い気はしない。いや、平たく言えば不快にさえ感じる。
 それは、緑川が自室にこもっていたときに、クラス委員の紅野や幼なじみのシロに対して暴言を吐いたときとは、また少し異なる不愉快さだとも言える。
 考案者であるシロは別として、そのネタの意図するところを知らない紅野に対して、緑川や他の男子が、例のルーティーンを仕掛けようとしたら、オレは、迷うことなく、その|手《・》|品《・》のネタばらしをするだろう。
 そう考えたオレは、桃華の質問にも素直に自分の気持ちを答える。
「まあ、知り合いの女子に|ア《・》|レ《・》を仕掛けられるのは、不愉快だな。ましてや、モモカは、自分たちの可愛い後輩なわけで……」
 そんな言葉を返すと、彼女は、表情を崩して主張する。
「さ、最初から、そう言えば良いんですよ! くろセンパイは、カワイイ後輩の想いに、もっと気を配るべきです!」
 悪気はなかったのだが、前触れもなく、桃華の恋愛事情に踏み込んでしまったことを反省しつつ、「そうだな……すまなかった」と、オレは、再度、頭を下げた。
「わ、わかればイイんです! ホントは、あのルーティーンを止めてくれたら、もっと嬉しかったけど……くろセンパイが、気に掛けてくれてたなら、特別に今回だけは許してあげます」
 さっきと同じような言葉を口にした後輩に対して、オレは、「そうか、ありがとう」と返答したあと、部室に来た当初から気になっていた、もう一つのことをたずねてみる。
「そう言えば、さっきから、ノーパソに向かって、ナニをしてたんだ? 色んな表情や動作をしてたみたいだけど……」
 問いかけると、桃華は弾んだ声で、PCのモニターをこちらに向けて返答する。
「そう! くろセンパイにもコレを見て欲しかったんです!」
 そう言って、オレの方に向けられたディスプレイでは、左上に『VRoid工房』というタイトルが記されたソフトが動いていた。
「これは? VTuberのアバターを作るアプリか?」
 桃華に質問を返すと、彼女は嬉しそうな反応を示す。
「さすが、くろセンパイ! そのとおりです! こういうアプリで、VTuberのキャラクターを作って、広報部と学校のマスコットキャラクターに出来ないかって考えているんですよ!」
「で、桃華が、そのキャラクターの中の人を担当する、ってことだよな?」
 答えは、わかりきっていたが、確認のためにそうたずねると、後輩女子は、満面の笑みを浮かべながら、黙ってコクリとうなずく。桃華のその笑顔につられるように、オレも表情をほころばせて、
「面白そうなアイデアだな! どんな感じなのか、詳しく教えてくれよ」
と、返事をすると、彼女は、
「くろセンパイなら、そう言ってくれると思ってました!」
と言って、無邪気な表情で抱きついてくる。
 普段はあまり見ることが出来ない後輩女子の無垢な笑顔に戸惑いつつも、オレは、いつもの広報部の活動風景が戻ってきたことを嬉しく感じていた。