2
ー/ー
外へ出ると、空気が少し埃っぽく感じた。どうやら花粉が大量飛散しているらしいが、オレも愛茉も、いまのところ花粉症とは無縁だ。
ただ潔癖症の愛茉は、洗濯物を部屋干しにしている。家に帰ったときも、玄関へ入る前に花粉を叩き落とした上で粘着ローラーを使えと口を酸っぱくして言われているし、もちろん空気清浄機はフル稼働中だった。
ギャラリーから200mほどの場所にあるコンビニに入った瞬間、レジにいる店員から挨拶をされる。2回しか来ていないはずだが、なぜか顔を覚えられたらしい。
飲み物を物色してレジへ向かおうとすると、外からガラス越しにヨネが手を振っていた。そして、小走りで店内へ入ってくる。
「おっつぅー! 浅尾きゅん、外から見ても目立つねぇー」
「店員に顔を覚えられてんだよな」
「そりゃそうだよぉーいっつもハデハデなんだからぁ」
バイト終わりのはずなのに、ヨネはまったく疲れた顔をしていない。
日本画の画材は高価な物が多く、学生のほとんどはサークルには参加せずバイトばかりしている。
制作とバイトの両立は、言うほど簡単ではない。それでも、ヨネはいつも笑顔だ。最初に話しかけられたときは変な女としか思わなかったが、その屈託のなさには毒気を抜かれた。
そして、人を色眼鏡で見たり上辺だけで判断したりすることがない。それは長岡も、普段はふざけきっている小林も同じ。だから心地よかったし、なにより信頼できた。
「ねぇー愛茉ちゃん、また来てくれるかなぁー?」
ヨネは特になにも買わず、オレと一緒にコンビニを出た。
「今日はバイトだけど、明日は来るって言っていたな。最終日だし」
「わーい嬉しいー! ヒデちゃんも喜ぶだろうねぇ」
長岡は昨日、愛茉に告白したらしい。というより、自分のことが好きなのかという愛茉の質問に答えた形のようで、本人にとっては思いもよらない事態だったのだろう。
オレやヨネたちにそのことを報告するあたり、長岡は律儀というより馬鹿正直だと思った。
「モテる彼女を持つと大変だねぇ、浅尾きゅんはー」
「別に。周りは関係ねぇし」
「愛茉ちゃんってー見た目も天使だけど中身が可愛いよねぇー。すっごくピュアな感じー」
「そうだな」
ヨネがオレの顔を覗き込んで、やたら嬉しそうにしている。なんだよ。
「んふふぅ。浅尾きゅんを笑顔にさせるにはぁ、愛茉ちゃんの話題がいちばんだねぇ」
「オレ、笑ってた?」
「笑ってたぁ」
どうやら「愛茉」という名前を耳にすると、条件反射で表情が緩むらしい。我ながら溺愛しすぎているな。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
外へ出ると、空気が少し埃っぽく感じた。どうやら花粉が大量飛散しているらしいが、オレも愛茉も、いまのところ花粉症とは無縁だ。
ただ潔癖症の愛茉は、洗濯物を部屋干しにしている。家に帰ったときも、玄関へ入る前に花粉を叩き落とした上で粘着ローラーを使えと口を酸っぱくして言われているし、もちろん空気清浄機はフル稼働中だった。
ギャラリーから200mほどの場所にあるコンビニに入った瞬間、レジにいる店員から挨拶をされる。2回しか来ていないはずだが、なぜか顔を覚えられたらしい。
飲み物を物色してレジへ向かおうとすると、外からガラス越しにヨネが手を振っていた。そして、小走りで店内へ入ってくる。
「おっつぅー! 浅尾きゅん、外から見ても目立つねぇー」
「店員に顔を覚えられてんだよな」
「そりゃそうだよぉーいっつもハデハデなんだからぁ」
バイト終わりのはずなのに、ヨネはまったく疲れた顔をしていない。
日本画の画材は高価な物が多く、学生のほとんどはサークルには参加せずバイトばかりしている。
制作とバイトの両立は、言うほど簡単ではない。それでも、ヨネはいつも笑顔だ。最初に話しかけられたときは変な女としか思わなかったが、その屈託のなさには毒気を抜かれた。
そして、人を色眼鏡で見たり上辺だけで判断したりすることがない。それは長岡も、普段はふざけきっている小林も同じ。だから心地よかったし、なにより信頼できた。
「ねぇー愛茉ちゃん、また来てくれるかなぁー?」
ヨネは特になにも買わず、オレと一緒にコンビニを出た。
「今日はバイトだけど、明日は来るって言っていたな。最終日だし」
「わーい嬉しいー! ヒデちゃんも喜ぶだろうねぇ」
長岡は昨日、愛茉に告白したらしい。というより、自分のことが好きなのかという愛茉の質問に答えた形のようで、本人にとっては思いもよらない事態だったのだろう。
オレやヨネたちにそのことを報告するあたり、長岡は律儀というより馬鹿正直だと思った。
「モテる彼女を持つと大変だねぇ、浅尾きゅんはー」
「別に。周りは関係ねぇし」
「愛茉ちゃんってー見た目も天使だけど中身が可愛いよねぇー。すっごくピュアな感じー」
「そうだな」
ヨネがオレの顔を覗き込んで、やたら嬉しそうにしている。なんだよ。
「んふふぅ。浅尾きゅんを笑顔にさせるにはぁ、愛茉ちゃんの話題がいちばんだねぇ」
「オレ、笑ってた?」
「笑ってたぁ」
どうやら「愛茉」という名前を耳にすると、条件反射で表情が緩むらしい。我ながら溺愛しすぎているな。