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「うっせぇよ小林。愛茉に手ぇ出すな」

 奥から桔平くんが出てきて、小林さんの顔を押しのけた。前も同じようなパターンだった気がする。
 
「手は出しとらん! 出したんは口や!」
「お前の場合は、手を出してんのと一緒なんだよ」

 無表情でしっしと小林さんを追い払い、桔平くんが私に向き直った。小林さんの扱いは、いつも雑なのね。
 
「迷わず来られた?」
「うん、大丈夫」
「んふふぅ。相変わらずー浅尾きゅんは愛茉ちゃんラブねぇ。学校では常に無表情なのにぃー愛茉ちゃんの前ではニコニコなんだからー」

 細い目を、さらに細めるヨネちゃん。なんかヨネちゃんの顔好きだなぁ。見ているだけで癒される。

 でも桔平くんって、やっぱり基本は無表情なんだ。私の前ではすごく表情豊かなんだけどな。多分、初対面のときからそうだったと思う。よく笑ってくれたもん。最初から、私は特別ってことだよね。
 
「鉄仮面浅尾やしなぁ。あまりに感情が出ぇへんから、血ぃ通ってへんのとちゃうか~って言われとるんに」
「そうそうー。愛茉ちゃんへの態度を見たらーみんなびーっくりしちゃうよぉ。学祭のときにー初めて浅尾きゅんが笑っているの見たっていう人、たぁくさんいたもんねー」
「あらやだ、奥さま! あの鉄仮面浅尾が、笑ったんですって!?」
「そうなのよぉ、奥さまぁ。とってもとってもキュートな彼女の前で、デレッデレの笑顔だったらしくてぇー」
「いやっ! デレッデレ! まさに骨抜きなのねぇ!」
「愛茉、人が少ないうちに見て回りなよ」
 
 小林さんとヨネちゃんが井戸端会議のような会話を繰り広げているのを完全に無視して、桔平くんが展示を案内してくれた。独特な関係だなぁ、この3人……。

 これまでも、このメンバーでグループ展をやったことはあるみたい。桔平くんと相性がいいようには思えないのに、なにかが合うんだろうな。私には、よく分からないけれど。

「今回はヨネの発案で『希望』がテーマになってんの」
「希望……妖怪なのに?」
「いい妖怪のやつを持ってきてんだよ」
 
 今回は過去の作品に加えて、新たに描き下ろしたものを1点展示しているらしい。

 とっても気になるヨネちゃんの作品は、疫病を退治してくれるアマビエ、水神の仮の姿とも言われている河童、高尾山に祀られている天狗、家が栄えると言われている座敷童。大学祭で観たものに比べて、どことなく明るくコミカルな感じがした。


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「うっせぇよ小林。愛茉に手ぇ出すな」
 奥から桔平くんが出てきて、小林さんの顔を押しのけた。前も同じようなパターンだった気がする。
「手は出しとらん! 出したんは口や!」
「お前の場合は、手を出してんのと一緒なんだよ」
 無表情でしっしと小林さんを追い払い、桔平くんが私に向き直った。小林さんの扱いは、いつも雑なのね。
「迷わず来られた?」
「うん、大丈夫」
「んふふぅ。相変わらずー浅尾きゅんは愛茉ちゃんラブねぇ。学校では常に無表情なのにぃー愛茉ちゃんの前ではニコニコなんだからー」
 細い目を、さらに細めるヨネちゃん。なんかヨネちゃんの顔好きだなぁ。見ているだけで癒される。
 でも桔平くんって、やっぱり基本は無表情なんだ。私の前ではすごく表情豊かなんだけどな。多分、初対面のときからそうだったと思う。よく笑ってくれたもん。最初から、私は特別ってことだよね。
「鉄仮面浅尾やしなぁ。あまりに感情が出ぇへんから、血ぃ通ってへんのとちゃうか~って言われとるんに」
「そうそうー。愛茉ちゃんへの態度を見たらーみんなびーっくりしちゃうよぉ。学祭のときにー初めて浅尾きゅんが笑っているの見たっていう人、たぁくさんいたもんねー」
「あらやだ、奥さま! あの鉄仮面浅尾が、笑ったんですって!?」
「そうなのよぉ、奥さまぁ。とってもとってもキュートな彼女の前で、デレッデレの笑顔だったらしくてぇー」
「いやっ! デレッデレ! まさに骨抜きなのねぇ!」
「愛茉、人が少ないうちに見て回りなよ」
 小林さんとヨネちゃんが井戸端会議のような会話を繰り広げているのを完全に無視して、桔平くんが展示を案内してくれた。独特な関係だなぁ、この3人……。
 これまでも、このメンバーでグループ展をやったことはあるみたい。桔平くんと相性がいいようには思えないのに、なにかが合うんだろうな。私には、よく分からないけれど。
「今回はヨネの発案で『希望』がテーマになってんの」
「希望……妖怪なのに?」
「いい妖怪のやつを持ってきてんだよ」
 今回は過去の作品に加えて、新たに描き下ろしたものを1点展示しているらしい。
 とっても気になるヨネちゃんの作品は、疫病を退治してくれるアマビエ、水神の仮の姿とも言われている河童、高尾山に祀られている天狗、家が栄えると言われている座敷童。大学祭で観たものに比べて、どことなく明るくコミカルな感じがした。