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第45話 首都カンレル

ー/ー



それから時折異形と戦いながらも進み続け、ついに町が見えてきた。
「おお…あれだな…」

「はい…」
ベランダに出て遠方の町を仰ぎ見ながら、俺と苺はそんな言葉を交わした。
「…よし、急ごう」

「はい…」
もはや、余計な言葉は口走らない。
みんな、疲労が溜まっているのだ。
それに、食糧も(ろく)に足りていない。
なので、今の俺達には余裕はない。
「町は…もうすぐか?」
煌汰が顔を出した。
「ああ…もう少しだ、頑張ろう」

「わかったよ…」

異形に会わない事を祈りながら、砂漠を進んでいく。



そして数時間後、ついに町についた。
「念のため、町長に滞在の許可を願いましょう」
苺がそう言うので、そうする事にした。

「まさか、ここまで来て入場拒否…なんて事ないだろうな」
タッドが嫌なことを言った。
「おいやめろ…そんな縁起でもない事言うの」

馬車を停め、メニィと苺が先に町に出向く。
そして30分ほどして、2人は戻ってきた。
「滞在していいそうです」
それを聞いて、すぐにみんなは喜びの声を上げた。
「よっしゃ!」

しかし、メニィはなぜか疑問を浮かべていた。
「サディ様、なぜご自身の正体を明かされなかったのですか?」

「ここは大神殿に最も近い町。レギエル姉妹の支配を最初に受けたのも、ここでしょう。彼女らは私が死んだと思っているでしょう。ここで私が正体を明かせば、町の方々にも迷惑をかけてしまいます」

なるほど、もっともだ。
もし殺したはずの大司祭が生きてると知ったら、奴らは恐らく全力で殺しに来るだろう。
そうなったら俺達が全滅するどころか、この町もとばっちりを喰らいかねない。

俺はいずれ奴らを倒すつもりでいる。
だからこそ、今は絶対に存在を悟られてはいけないし、そのために他の町や人々に迷惑をかけるような事はできない。

「それで、補給はできそうなのか?」

「はい。この町はサンライトの首都なので、元より外部との交易は盛んです。伺った所、レギエル姉妹は交易にはほとんど手を付けていないそうなので、物資は豊富にあるそうです」

「おお…!なら食糧とか水とか、存分に補給できるな!」

「ええ…とにかく、補給を急ぎましょう。町への滞在は、一週間以内と言われましたので」

そうして俺達は馬車を出た。
苺とメニィに日用品の買い出しに行ってもらい、残りのメンバー総出で補給に走った。
…と言いたい所だが、このタイミングでまさかの事が起こった。
なんと、資金が底をついてきたと言うのだ。
考えてみれば、ここまで金を貰った記憶がない。
「俺が一稼ぎしてこようか?」
猶が短剣を抜いてそう言うと、なぜか樹と柳助が全力で止めに入った。
「待て待て待て待て!頼むから面倒事起こすな!」

「首都で堂々とやる奴があるか!やるなとは言わんが、せめて場所と状況を考えろ!」
樹と柳助の様子から、猶は何やらとんでもない事をしようとしてるらしい事がわかった。
「んー…そうか?そんなに言うなら…」
猶が短剣を下げると、2人はほっとしていた。
ついでに、輝と煌汰も胸を撫で下ろしていた。
猶…一体、何をするつもりだったんだ。

「じゃ、代わりになんか依頼がないか探してくるよ。暗殺の依頼でもあればいいけど」

あ、暗殺…?
そう思った刹那、キョウラが言った。
「な、猶様。この町の中央には掲示板があって、そこに異形やならず者の討伐依頼が出されていたかと思います。何かしたいのであれば、そちらへ行かれてはどうでしょう」

「そっか?じゃ、行ってみるわ」



「はあ…」
猶が去った後、キョウラはため息をついた。
「なあ、何なんだ?みんなして」
すると、煌汰が呆れ顔で言った。
「姜芽…察しろよ。猶が短剣を抜いてやることって言えば、一つだろ?」
そう言われても、ちょっとよくわからない。
困惑していると、樹がため息をついて言った。
「猶は殺人者だ…例え無実の人であろうと、殺す事にためらいなんかない。特に、生計のためとなればな」

それで、なんとなくわかった。
「え、まさか…」

「そうだ…猶は、いや殺人者は、強盗殺人とか暗殺とか…とにかく殺人を侵して生活してる奴が多いんだ」

「…」
言葉を失った。
それじゃ、まるで殺し屋か盗賊じゃないか。
「で、でも、仕事はしないのか?」

「それがな、殺人者は基本的に社会性が無くて、人と関わる事も嫌いなんだ。衝動性があるし、ルールとか決まりも守らないから、まともな仕事はほとんどできないんだよ」

「えっ…」
社会性がない…つまり、人と足並みを揃えたり、人の気持ちを考えたり、っていうのが出来ない、ってことだろうか。
なるほど、それでは確かに仕事を続けることなど出来ないだろう。
衝動的で決まりを守らないとなれば、尚更だ。

「一応人を殺さないで生きてる奴もいるけど、それでも大抵は人身売買、臓器売買、麻薬密売、詐欺、密猟、恐喝、強盗…って感じで、犯罪をやって生きてる奴ばっかだ。ぶっちゃけ、山賊とそんな変わんないぜ」

「いや、それ以上だろ。人身売買、って…」

「この世界では割とよくあるぜ?女しかいない種族とかもいるし。まあさすがに、治安の悪いとこじゃないと見ないけどな」

「…」
殺人者、というから殺人だけやってるのかと思ったのだが。
俺の予想以上に凶悪な種族のようだ。

「ま、でも猶は全然可愛いもんだよ。あいつは強盗殺人の他に暗殺をよくやるけど、仕事の時意外は殺しもしないしな」

「いや、そういう問題か?」

「まあ気持ちはわかる。けど、オレたちが色々言ってもしょうがない。殺人者の約半分は精神に問題がある、なんて話もあるしな」

精神に問題…つまり、何かしらの病気とか障害があるってことか。
まあ、確かにそうでもなきゃ、好き好んで犯罪をやったりはしないだろう。

「うーん…なんか、難しそうだな」

と、ここで買い出しに行っていたメニィ達が戻ってきた。

「買ってきましたよ!」

「おっ、おかえり。金足りたか?」

「ええ、なんとか」

「結構買ってきたので、今から入れてきますね」

「ああ、頼む」

俺達も黙っている訳にはいかないので、何か適当に仕事を探すことにした。


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それから時折異形と戦いながらも進み続け、ついに町が見えてきた。「おお…あれだな…」
「はい…」
ベランダに出て遠方の町を仰ぎ見ながら、俺と苺はそんな言葉を交わした。
「…よし、急ごう」
「はい…」
もはや、余計な言葉は口走らない。
みんな、疲労が溜まっているのだ。
それに、食糧も|碌《ろく》に足りていない。
なので、今の俺達には余裕はない。
「町は…もうすぐか?」
煌汰が顔を出した。
「ああ…もう少しだ、頑張ろう」
「わかったよ…」
異形に会わない事を祈りながら、砂漠を進んでいく。
そして数時間後、ついに町についた。
「念のため、町長に滞在の許可を願いましょう」
苺がそう言うので、そうする事にした。
「まさか、ここまで来て入場拒否…なんて事ないだろうな」
タッドが嫌なことを言った。
「おいやめろ…そんな縁起でもない事言うの」
馬車を停め、メニィと苺が先に町に出向く。
そして30分ほどして、2人は戻ってきた。
「滞在していいそうです」
それを聞いて、すぐにみんなは喜びの声を上げた。
「よっしゃ!」
しかし、メニィはなぜか疑問を浮かべていた。
「サディ様、なぜご自身の正体を明かされなかったのですか?」
「ここは大神殿に最も近い町。レギエル姉妹の支配を最初に受けたのも、ここでしょう。彼女らは私が死んだと思っているでしょう。ここで私が正体を明かせば、町の方々にも迷惑をかけてしまいます」
なるほど、もっともだ。
もし殺したはずの大司祭が生きてると知ったら、奴らは恐らく全力で殺しに来るだろう。
そうなったら俺達が全滅するどころか、この町もとばっちりを喰らいかねない。
俺はいずれ奴らを倒すつもりでいる。
だからこそ、今は絶対に存在を悟られてはいけないし、そのために他の町や人々に迷惑をかけるような事はできない。
「それで、補給はできそうなのか?」
「はい。この町はサンライトの首都なので、元より外部との交易は盛んです。伺った所、レギエル姉妹は交易にはほとんど手を付けていないそうなので、物資は豊富にあるそうです」
「おお…!なら食糧とか水とか、存分に補給できるな!」
「ええ…とにかく、補給を急ぎましょう。町への滞在は、一週間以内と言われましたので」
そうして俺達は馬車を出た。
苺とメニィに日用品の買い出しに行ってもらい、残りのメンバー総出で補給に走った。
…と言いたい所だが、このタイミングでまさかの事が起こった。
なんと、資金が底をついてきたと言うのだ。
考えてみれば、ここまで金を貰った記憶がない。
「俺が一稼ぎしてこようか?」
猶が短剣を抜いてそう言うと、なぜか樹と柳助が全力で止めに入った。
「待て待て待て待て!頼むから面倒事起こすな!」
「首都で堂々とやる奴があるか!やるなとは言わんが、せめて場所と状況を考えろ!」
樹と柳助の様子から、猶は何やらとんでもない事をしようとしてるらしい事がわかった。
「んー…そうか?そんなに言うなら…」
猶が短剣を下げると、2人はほっとしていた。
ついでに、輝と煌汰も胸を撫で下ろしていた。
猶…一体、何をするつもりだったんだ。
「じゃ、代わりになんか依頼がないか探してくるよ。暗殺の依頼でもあればいいけど」
あ、暗殺…?
そう思った刹那、キョウラが言った。
「な、猶様。この町の中央には掲示板があって、そこに異形やならず者の討伐依頼が出されていたかと思います。何かしたいのであれば、そちらへ行かれてはどうでしょう」
「そっか?じゃ、行ってみるわ」
「はあ…」
猶が去った後、キョウラはため息をついた。
「なあ、何なんだ?みんなして」
すると、煌汰が呆れ顔で言った。
「姜芽…察しろよ。猶が短剣を抜いてやることって言えば、一つだろ?」
そう言われても、ちょっとよくわからない。
困惑していると、樹がため息をついて言った。
「猶は殺人者だ…例え無実の人であろうと、殺す事にためらいなんかない。特に、生計のためとなればな」
それで、なんとなくわかった。
「え、まさか…」
「そうだ…猶は、いや殺人者は、強盗殺人とか暗殺とか…とにかく殺人を侵して生活してる奴が多いんだ」
「…」
言葉を失った。
それじゃ、まるで殺し屋か盗賊じゃないか。
「で、でも、仕事はしないのか?」
「それがな、殺人者は基本的に社会性が無くて、人と関わる事も嫌いなんだ。衝動性があるし、ルールとか決まりも守らないから、まともな仕事はほとんどできないんだよ」
「えっ…」
社会性がない…つまり、人と足並みを揃えたり、人の気持ちを考えたり、っていうのが出来ない、ってことだろうか。
なるほど、それでは確かに仕事を続けることなど出来ないだろう。
衝動的で決まりを守らないとなれば、尚更だ。
「一応人を殺さないで生きてる奴もいるけど、それでも大抵は人身売買、臓器売買、麻薬密売、詐欺、密猟、恐喝、強盗…って感じで、犯罪をやって生きてる奴ばっかだ。ぶっちゃけ、山賊とそんな変わんないぜ」
「いや、それ以上だろ。人身売買、って…」
「この世界では割とよくあるぜ?女しかいない種族とかもいるし。まあさすがに、治安の悪いとこじゃないと見ないけどな」
「…」
殺人者、というから殺人だけやってるのかと思ったのだが。
俺の予想以上に凶悪な種族のようだ。
「ま、でも猶は全然可愛いもんだよ。あいつは強盗殺人の他に暗殺をよくやるけど、仕事の時意外は殺しもしないしな」
「いや、そういう問題か?」
「まあ気持ちはわかる。けど、オレたちが色々言ってもしょうがない。殺人者の約半分は精神に問題がある、なんて話もあるしな」
精神に問題…つまり、何かしらの病気とか障害があるってことか。
まあ、確かにそうでもなきゃ、好き好んで犯罪をやったりはしないだろう。
「うーん…なんか、難しそうだな」
と、ここで買い出しに行っていたメニィ達が戻ってきた。
「買ってきましたよ!」
「おっ、おかえり。金足りたか?」
「ええ、なんとか」
「結構買ってきたので、今から入れてきますね」
「ああ、頼む」
俺達も黙っている訳にはいかないので、何か適当に仕事を探すことにした。