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洗面所で手洗いとうがいをしている間に、桔平くんは服を着ていた。
私はマフラーとコートを身につけたまま、ベッドに腰かける桔平くんの横へ座って、早く言いたくてウズウズしていた七海と翔流くんのことを話す。
「ふーん。酒の勢いねぇ……」
桔平くんは、特に驚いた様子もなく言った。
「うん。翔流くん、結構酔っ払っていたみたいで。それで七海が超本気になっちゃってる感じなの。運命の人だって言っていたし」
「七海ちゃんってかなり肉食だもんな。でもあんま酔ってると、できねぇんだけど」
「できない? なにが?」
「セックス。酒を飲みすぎると、なかなか元気にならねぇの」
桔平くんが自分の下半身を指さす。意味を理解して、思わず赤面してしまった。
「そ、そうなの?」
「アルコールで、脳とか神経の働きが鈍るんだよ。適量ならいいんだけど」
え、もしかして桔平くんもそういう経験あるってこと?
でも、それを訊くのはダメよね。ていうか他の人とのことなんて、別に聞きたくないし。絶対に聞きたくないし。少しだけ、モヤモヤした感情が湧いてきてしまった。
「まぁ個人差はあるけどさ。ただ翔流って、すげぇ酒が強いんだよなぁ。マジでザルだから、一緒に飲んでて、訳が分からなくなるほど酔っ払った姿を見たことがねぇの」
「……つまり、どういうこと?」
「本当に酒の勢いなのか、怪しいなってこと」
「え、それって」
「オレが言えるのはここまで。あくまでも、過去の事実に基づいた考察です」
桔平くんは、一方的に話を切り上げて立ち上がった。もう、期待を持たせるだけ持たせておいて……。
お酒の勢いじゃない……それはつまり、お酒を口実にしただけってこと? 待って待って、それはただの性欲なの? それとも、相手が七海だったから? だとしたら、翔流くんも七海のこと……。
「そんでー? お菓子教室はどうだったよ」
私の思考を遮断するように、キッチンでコップに水を入れながら桔平くんが声をかけてくる。
「あ、楽しかったよ! 超力作ができました」
私はようやくマフラーとコートを脱いで、作ってきたお菓子を入れた紙袋をキッチンカウンターに置いた。
「でもこれは、明日あげるから」
「え、別にいいじゃん今日でも」
「ダメー。バレンタインは明日です。帰ってきてからあげるね」
明日は桔平くんとバレンタインデート。たまには外でディナーをしようって言ってくれたから、ちょっと贅沢しちゃう予定なのです。
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「ふーん。酒の勢いねぇ……」
桔平くんは、特に驚いた様子もなく言った。
「うん。翔流くん、結構酔っ払っていたみたいで。それで七海が超本気になっちゃってる感じなの。運命の人だって言っていたし」
「七海ちゃんってかなり肉食だもんな。でもあんま酔ってると、できねぇんだけど」
「できない? なにが?」
「セックス。酒を飲みすぎると、なかなか元気にならねぇの」
桔平くんが自分の下半身を指さす。意味を理解して、思わず赤面してしまった。
「そ、そうなの?」
「アルコールで、脳とか神経の働きが鈍るんだよ。適量ならいいんだけど」
え、もしかして桔平くんもそういう経験あるってこと?
でも、それを訊くのはダメよね。ていうか他の人とのことなんて、別に聞きたくないし。絶対に聞きたくないし。少しだけ、モヤモヤした感情が湧いてきてしまった。
「まぁ個人差はあるけどさ。ただ翔流って、すげぇ酒が強いんだよなぁ。マジでザルだから、一緒に飲んでて、訳が分からなくなるほど酔っ払った姿を見たことがねぇの」
「……つまり、どういうこと?」
「本当に酒の勢いなのか、怪しいなってこと」
「え、それって」
「オレが言えるのはここまで。あくまでも、過去の事実に基づいた考察です」
桔平くんは、一方的に話を切り上げて立ち上がった。もう、期待を持たせるだけ持たせておいて……。
お酒の勢いじゃない……それはつまり、お酒を口実にしただけってこと? 待って待って、それはただの性欲なの? それとも、相手が七海だったから? だとしたら、翔流くんも七海のこと……。
「そんでー? お菓子教室はどうだったよ」
私の思考を遮断するように、キッチンでコップに水を入れながら桔平くんが声をかけてくる。
「あ、楽しかったよ! 超力作ができました」
私はようやくマフラーとコートを脱いで、作ってきたお菓子を入れた紙袋をキッチンカウンターに置いた。
「でもこれは、明日あげるから」
「え、別にいいじゃん今日でも」
「ダメー。バレンタインは明日です。帰ってきてからあげるね」
明日は桔平くんとバレンタインデート。たまには外でディナーをしようって言ってくれたから、ちょっと贅沢しちゃう予定なのです。