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亜人を呪わば鉄球地獄 1

ー/ー



 探知盤を見ると赤い点はゆっくりとこちらへ近づいてくる。おそらく徒歩だろう。

 一行は街道沿いを離れ、ひと目のつなかい所へと移動した。

 ムツヤを先頭にし、ルーとヨーリィは中衛、モモとユモト、アシノは後衛だ。

 しばらく待っていると敵との接触寸前になる。ムツヤは千里眼で遠くを見た。

「見えました」

 キエーウの仮面を付けた人間がこちらへ向かって歩いてきている。こちらの位置が分かるのは何処かで監視をしているからだろう。

 全員武器を構えて戦いを待つ。赤い点は1つだが、その裏の道具持ちの者以外に護衛らしき人間が5人いる。

 ユモトとモモは敵を待つ時間が短いようにも長いようにも感じていた。

 そして、誰の目にもキエーウの連中の姿が見えた頃、走り出して広く展開する半円状の陣を組んだ。

 護衛の者たちは弓を構えてムツヤを狙うがそれは最小限の動きでかわされる。ヨーリィとルーはそれぞれ木の杭と電撃の魔法で反撃した。

 ムツヤはその騒動の中走り出して裏の道具持ちへと距離を詰める。その瞬間、敵は1冊の本を取り出してそれを開いた。

 本からは鎖に繋がれたトゲのついた鉄球が飛び出す。ムツヤはそれを飛び退いて避けたが、鉄球はムツヤを追尾する。

 それならばと鎖を断ち切ろうと剣で切りつけたが、頑丈なそれは切断することが出来なかった。

 鎖は本の中から延々と伸びてムツヤを追いかける。それから逃げながら降り注ぐ矢も避けなければいけない。

「何だよアレ、あんなのありか!?」

 アシノは戦いを見て言う、その時モモはふとひらめいた。

「ムツヤ殿!! 私の所へ来て下さい。皆さんは弓兵の対処をお願いします!!」

「わかった!」

 突然のモモの発言だったが、アシノは了承し、他の皆もモモの指示に従い弓兵の邪魔をする。

 ムツヤも返事はしなかったが、モモの元へと走り出した。きっとモモさんなら何か考えがあるのだろうと。

 ムツヤはモモの正面まで走ってきた。後ろからは鉄球が追いかけてくる。

「ムツヤ殿!! 私の後ろに隠れて下さい!」

 モモを信じ、ムツヤは後ろへと隠れた。そしてモモは無力化の盾を構える。

 鉄球が盾に当たると、派手な金属音どころか物音1つ立てずに鉄球は地面へとぽとりと落ちた。

「チッ」

 鉄球の飛び出す本の持ち主は、舌打ちをして本を閉じる。すると鎖は高速で巻き取られるように本の中へと戻っていく。

「やはり…… オークから殺すべきだ!!!」

 仮面の下から聞こえたのは女の声だ。そしてその声の主はまた本を開いた。

「待て、狙いはあくまでカバンだ!!」

 仲間の静止も聞かずに鉄球を飛ばす。それはモモを一直線に狙っていた。

 またモモは盾を構え、飛んでくる鉄球に備えた。あと1秒でぶつかろうかという時に、なんと鉄球はカーブを描いてモモを右側面から襲いかかる。

「危ない!!」

 ムツヤはカバンから取り出したもう一枚の無力化の盾でモモをかばい鉄球を受け止める。

 鉄球はまた地面へと落下し、鎖で巻き取られようとしていた。その時、ヨーリィが駆け寄って鎖を握りしめる。

 鉄球と共に本の持ち主へ向かうヨーリィ。敵の弓兵の腕は優秀でヨーリィは2本矢を体に食らってしまったが、枯れ葉になった後すぐに再生する。

 左手で鎖を握り、右手にはナイフを握って飛ぶようにヨーリィは敵の眼前まで来た。

 慌てて本を投げ捨てるがもう遅い。ヨーリィは敵の懐に入り込んでナイフの柄の部分で思い切りみぞおちを殴る。

「カフッ」

 本を持っていた女はそんな声を上げた後地面に倒れ込んだ。気は失わなかったが、うまく呼吸が出来ない。

 そんな女の首筋にナイフを突きつける。人質のつもりなのだろう。

 しかし、キエーウの連中はそんな事を気にせず、投げ捨てられた本を回収し散り散りに去っていった。

 ヨーリィはうつ伏せに倒した敵に乗りかかり、両腕を後ろで固めて動きを封じた。

「マジックバインド!」

 ユモトは魔法の縄で敵の手足をしっかりと拘束する。

「さーてさて、どんなお顔をしてるのか見せてもらうかな」

 ルーは歩いて動けない敵の前へと行くと、しゃがみこんで仮面に手を掛けた。

「やめろ、やめろー!!!」

 そんな敵の声を無視して仮面を取り上げると顔があらわになる。

 女は割と整った顔立ちをしているが、目は殺意と憎しみに満ち溢れていた。

 そして、何より左頬にケロイド状の火傷の痕が見える。

「っぐ、殺す、殺す!!」

「まぁまぁ、落ち着いて落ち着いて」

 ルーはニコニコして言った。ムツヤ達は少し遠巻きにそれを見る。

「聞きたいことは山ほどあるけど、なんでキエーウなんかに入ってるの?」

 女は歯ぎしりをし、視線だけをモモの方に向けて言った。

「オークをこの世から皆殺しにするためだ!!」

 モモはそれを聞いてドキリとする。

「事情は知らんが、充分に危険思想だな。縄で縛り直して治安維持部隊に引き渡すぞ」

 この時、アシノ達は油断をしていた。遠くから飛んでくる矢に気づけたのはムツヤだけだった。

 まっすぐユモト目掛けて飛んでくる矢、ムツヤはユモトを庇おうとタックルをして押し倒す。

 矢はギリギリの所でかわせたが、ユモトの拘束魔法が一瞬緩んでしまった。その隙きを見逃さずに女は飛び起きてムツヤ達と反対方向に走り出した。

「待て!!」

 追いかけようとするが次々と矢が飛んできて、アシノ達は地面に伏せた。ムツヤはそんな事お構いなしに女を追いかける。

「ははは、やっぱり君は強いねぇ。ムツヤくん」

 この男の声をアシノは知っている。忘れもしない。

「ちょっと俺と遊ぼうか」

 かつてアシノの仲間であり、今はキエーウに所属しているウートゴがムツヤ達の前に立ちはだかった。


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 探知盤を見ると赤い点はゆっくりとこちらへ近づいてくる。おそらく徒歩だろう。
 一行は街道沿いを離れ、ひと目のつなかい所へと移動した。
 ムツヤを先頭にし、ルーとヨーリィは中衛、モモとユモト、アシノは後衛だ。
 しばらく待っていると敵との接触寸前になる。ムツヤは千里眼で遠くを見た。
「見えました」
 キエーウの仮面を付けた人間がこちらへ向かって歩いてきている。こちらの位置が分かるのは何処かで監視をしているからだろう。
 全員武器を構えて戦いを待つ。赤い点は1つだが、その裏の道具持ちの者以外に護衛らしき人間が5人いる。
 ユモトとモモは敵を待つ時間が短いようにも長いようにも感じていた。
 そして、誰の目にもキエーウの連中の姿が見えた頃、走り出して広く展開する半円状の陣を組んだ。
 護衛の者たちは弓を構えてムツヤを狙うがそれは最小限の動きでかわされる。ヨーリィとルーはそれぞれ木の杭と電撃の魔法で反撃した。
 ムツヤはその騒動の中走り出して裏の道具持ちへと距離を詰める。その瞬間、敵は1冊の本を取り出してそれを開いた。
 本からは鎖に繋がれたトゲのついた鉄球が飛び出す。ムツヤはそれを飛び退いて避けたが、鉄球はムツヤを追尾する。
 それならばと鎖を断ち切ろうと剣で切りつけたが、頑丈なそれは切断することが出来なかった。
 鎖は本の中から延々と伸びてムツヤを追いかける。それから逃げながら降り注ぐ矢も避けなければいけない。
「何だよアレ、あんなのありか!?」
 アシノは戦いを見て言う、その時モモはふとひらめいた。
「ムツヤ殿!! 私の所へ来て下さい。皆さんは弓兵の対処をお願いします!!」
「わかった!」
 突然のモモの発言だったが、アシノは了承し、他の皆もモモの指示に従い弓兵の邪魔をする。
 ムツヤも返事はしなかったが、モモの元へと走り出した。きっとモモさんなら何か考えがあるのだろうと。
 ムツヤはモモの正面まで走ってきた。後ろからは鉄球が追いかけてくる。
「ムツヤ殿!! 私の後ろに隠れて下さい!」
 モモを信じ、ムツヤは後ろへと隠れた。そしてモモは無力化の盾を構える。
 鉄球が盾に当たると、派手な金属音どころか物音1つ立てずに鉄球は地面へとぽとりと落ちた。
「チッ」
 鉄球の飛び出す本の持ち主は、舌打ちをして本を閉じる。すると鎖は高速で巻き取られるように本の中へと戻っていく。
「やはり…… オークから殺すべきだ!!!」
 仮面の下から聞こえたのは女の声だ。そしてその声の主はまた本を開いた。
「待て、狙いはあくまでカバンだ!!」
 仲間の静止も聞かずに鉄球を飛ばす。それはモモを一直線に狙っていた。
 またモモは盾を構え、飛んでくる鉄球に備えた。あと1秒でぶつかろうかという時に、なんと鉄球はカーブを描いてモモを右側面から襲いかかる。
「危ない!!」
 ムツヤはカバンから取り出したもう一枚の無力化の盾でモモをかばい鉄球を受け止める。
 鉄球はまた地面へと落下し、鎖で巻き取られようとしていた。その時、ヨーリィが駆け寄って鎖を握りしめる。
 鉄球と共に本の持ち主へ向かうヨーリィ。敵の弓兵の腕は優秀でヨーリィは2本矢を体に食らってしまったが、枯れ葉になった後すぐに再生する。
 左手で鎖を握り、右手にはナイフを握って飛ぶようにヨーリィは敵の眼前まで来た。
 慌てて本を投げ捨てるがもう遅い。ヨーリィは敵の懐に入り込んでナイフの柄の部分で思い切りみぞおちを殴る。
「カフッ」
 本を持っていた女はそんな声を上げた後地面に倒れ込んだ。気は失わなかったが、うまく呼吸が出来ない。
 そんな女の首筋にナイフを突きつける。人質のつもりなのだろう。
 しかし、キエーウの連中はそんな事を気にせず、投げ捨てられた本を回収し散り散りに去っていった。
 ヨーリィはうつ伏せに倒した敵に乗りかかり、両腕を後ろで固めて動きを封じた。
「マジックバインド!」
 ユモトは魔法の縄で敵の手足をしっかりと拘束する。
「さーてさて、どんなお顔をしてるのか見せてもらうかな」
 ルーは歩いて動けない敵の前へと行くと、しゃがみこんで仮面に手を掛けた。
「やめろ、やめろー!!!」
 そんな敵の声を無視して仮面を取り上げると顔があらわになる。
 女は割と整った顔立ちをしているが、目は殺意と憎しみに満ち溢れていた。
 そして、何より左頬にケロイド状の火傷の痕が見える。
「っぐ、殺す、殺す!!」
「まぁまぁ、落ち着いて落ち着いて」
 ルーはニコニコして言った。ムツヤ達は少し遠巻きにそれを見る。
「聞きたいことは山ほどあるけど、なんでキエーウなんかに入ってるの?」
 女は歯ぎしりをし、視線だけをモモの方に向けて言った。
「オークをこの世から皆殺しにするためだ!!」
 モモはそれを聞いてドキリとする。
「事情は知らんが、充分に危険思想だな。縄で縛り直して治安維持部隊に引き渡すぞ」
 この時、アシノ達は油断をしていた。遠くから飛んでくる矢に気づけたのはムツヤだけだった。
 まっすぐユモト目掛けて飛んでくる矢、ムツヤはユモトを庇おうとタックルをして押し倒す。
 矢はギリギリの所でかわせたが、ユモトの拘束魔法が一瞬緩んでしまった。その隙きを見逃さずに女は飛び起きてムツヤ達と反対方向に走り出した。
「待て!!」
 追いかけようとするが次々と矢が飛んできて、アシノ達は地面に伏せた。ムツヤはそんな事お構いなしに女を追いかける。
「ははは、やっぱり君は強いねぇ。ムツヤくん」
 この男の声をアシノは知っている。忘れもしない。
「ちょっと俺と遊ぼうか」
 かつてアシノの仲間であり、今はキエーウに所属しているウートゴがムツヤ達の前に立ちはだかった。