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第33話 たこぐもチャレンジドへ

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 登校したウツロ、聖川清人(ひじりかわ きよと)柿崎景太(かきざき けいた)の三人は、古河登志彦(ふるかわ としひこ)教諭(きょうゆ)の運転するミニバンで、職場体験の現地である特例子会社の事業所へと向かっていた。

浅倉喜代蔵(あさくら きよぞう)、公認会計士。有限責任監査法人たこぐも包括代表(ほうかつだいひょう)。妹は税理士で、税理士法人オロチ代表の浅倉卑弥呼(あさくら ひみこ)。秋田県の農村出身。学生時代に精神疾患に罹患(りかん)するも、独学で公認会計士試験に合格し、現在の地位までのぼりつめた苦労人、か。ふむ……」

 ウツロは携帯のブラウザで個人ブログをのぞきながら、記述されている情報をそらんじた。

 まさかとは思ったが、さくら(かん)に来訪したあの浅倉卑弥呼の実兄(じっけい)だったとは。

 添付(てんぷ)してあるイメージ画像を見ると、なるほど、顔の作りや、『(やなぎ)(えだ)』のような髪型が妹にそっくりだ。

 年齢の割には、どこか幼く見えるところも印象的だった。

「日本経済の番人が障害者ってのは面白いわな」

 柿崎景太はノートPCを叩きながら(つぶや)いた。

「きっと想像もつかない努力をされたんだろう。(つめ)(あか)(せん)じて飲ませてもらったらどうだ、柿崎?」

 聖川清人はのぞき込むように顔を寄せて言った。

「うっせーの、聖川。てめえは小姑(こじゅうと)か?」

「何をっ!?」

「ひっ――」

 聖川清人が赤本を振りかぶったので、柿崎景太は条件反射で身を守った。

「こらこら二人とも。そろそろ着くから、準備をしなさい」

 古河教諭はハンドルを握りながら二人をいさめた。

「今日は浅倉先生もお見えになると聞きましたが」

「うん、天下の黒帝の学生さんが来てくれるってんで、港区にあるたこぐもの本部から駆けつけてくれるそうだよ」

 たずねたウツロに、古川教諭はラジオのボリュームをいじりながら答えた。

「どんな人物か気になります。でも、黒帝ってそんなに有名な学校だったんですね」

「……」

 ウツロ以外の三人は口をあんぐりと()けた。

「佐伯よ、おまえまさか、それ知らないで黒帝に編入したの?」

 柿崎景太は体を震わせながら問いかけた。

「どういうこと?」

「あのな、佐伯。黒帝高校とえば、日本でも最高レベルの偏差値を(ほこ)る高校であり、毎年東大の合格率で、東の青凛(せいりん)高校と()(あらそ)う名門進学校なんだぞ?」

「へえ、そうだったんだね」

「そうだったって、はは……」

「宇宙人だな……」

 あっけらかんと答弁するウツロに、柿崎景太と聖川清人はあきれ返った。

「さあさあ、みんな、到着したよ。あそこがたこぐもチャレンジドだ」

 古川教諭が視界に入った施設を指さしたとき、後部座席の二名はすっかりうなだれていた。

 いっぽう、ウツロは考えていた。

 浅倉喜代蔵か。

 さくら館を訪れた浅倉卑弥呼が、もし組織の放った刺客だと仮定すると、実の兄であるその人が何の関係もないという可能性は否定できない。

 それにこのタイミングで出会うことになるのも、なんだかできすぎている。

 何かがあるのかもしれない。

 決して油断はできないぞ。

 彼はそんなことを、自分自身に語りかけた――

(『第34話 浅倉喜代蔵(あさくら きよぞう)』へ続く)


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 登校したウツロ、|聖川清人《ひじりかわ きよと》と|柿崎景太《かきざき けいた》の三人は、|古河登志彦《ふるかわ としひこ》|教諭《きょうゆ》の運転するミニバンで、職場体験の現地である特例子会社の事業所へと向かっていた。
「|浅倉喜代蔵《あさくら きよぞう》、公認会計士。有限責任監査法人たこぐも|包括代表《ほうかつだいひょう》。妹は税理士で、税理士法人オロチ代表の|浅倉卑弥呼《あさくら ひみこ》。秋田県の農村出身。学生時代に精神疾患に|罹患《りかん》するも、独学で公認会計士試験に合格し、現在の地位までのぼりつめた苦労人、か。ふむ……」
 ウツロは携帯のブラウザで個人ブログをのぞきながら、記述されている情報をそらんじた。
 まさかとは思ったが、さくら|館《かん》に来訪したあの浅倉卑弥呼の|実兄《じっけい》だったとは。
 |添付《てんぷ》してあるイメージ画像を見ると、なるほど、顔の作りや、『|柳《やなぎ》の|枝《えだ》』のような髪型が妹にそっくりだ。
 年齢の割には、どこか幼く見えるところも印象的だった。
「日本経済の番人が障害者ってのは面白いわな」
 柿崎景太はノートPCを叩きながら|呟《つぶや》いた。
「きっと想像もつかない努力をされたんだろう。|爪《つめ》の|垢《あか》を|煎《せん》じて飲ませてもらったらどうだ、柿崎?」
 聖川清人はのぞき込むように顔を寄せて言った。
「うっせーの、聖川。てめえは|小姑《こじゅうと》か?」
「何をっ!?」
「ひっ――」
 聖川清人が赤本を振りかぶったので、柿崎景太は条件反射で身を守った。
「こらこら二人とも。そろそろ着くから、準備をしなさい」
 古河教諭はハンドルを握りながら二人をいさめた。
「今日は浅倉先生もお見えになると聞きましたが」
「うん、天下の黒帝の学生さんが来てくれるってんで、港区にあるたこぐもの本部から駆けつけてくれるそうだよ」
 たずねたウツロに、古川教諭はラジオのボリュームをいじりながら答えた。
「どんな人物か気になります。でも、黒帝ってそんなに有名な学校だったんですね」
「……」
 ウツロ以外の三人は口をあんぐりと|開《あ》けた。
「佐伯よ、おまえまさか、それ知らないで黒帝に編入したの?」
 柿崎景太は体を震わせながら問いかけた。
「どういうこと?」
「あのな、佐伯。黒帝高校とえば、日本でも最高レベルの偏差値を|誇《ほこ》る高校であり、毎年東大の合格率で、東の|青凛《せいりん》高校と|覇《は》を|争《あらそ》う名門進学校なんだぞ?」
「へえ、そうだったんだね」
「そうだったって、はは……」
「宇宙人だな……」
 あっけらかんと答弁するウツロに、柿崎景太と聖川清人はあきれ返った。
「さあさあ、みんな、到着したよ。あそこがたこぐもチャレンジドだ」
 古川教諭が視界に入った施設を指さしたとき、後部座席の二名はすっかりうなだれていた。
 いっぽう、ウツロは考えていた。
 浅倉喜代蔵か。
 さくら館を訪れた浅倉卑弥呼が、もし組織の放った刺客だと仮定すると、実の兄であるその人が何の関係もないという可能性は否定できない。
 それにこのタイミングで出会うことになるのも、なんだかできすぎている。
 何かがあるのかもしれない。
 決して油断はできないぞ。
 彼はそんなことを、自分自身に語りかけた――
(『第34話 |浅倉喜代蔵《あさくら きよぞう》』へ続く)