第30話 谷底にて
ー/ーみるみる谷底が迫ってくる。
めちゃくちゃ不安だ…と思ってるうちに地面についた。
「…あれ?」
気づいたら、谷底についていた。
意外なことに、即死どころか痛みすらほとんどない。
「おっ、来たな」
「やっと来たか。ほら、行こうぜ」
待ち構えていた煌汰と輝が言ってきた。
「ん?姜芽殿、聖女はどうした?」
「今来るよ。なんかゆっくり降りてきてたぜ」
ラギル達が上を見ていると、間もなくキョウラも降りてきた。
「来た来た」
「皆さん、お待たせしました。行きましょう」
「ああ」
薄暗いが、あたりの光景はわかる。
いろんな怪しげな道具がそこら中にある。
「なんだありゃ…」
「祈祷師どもの魔法道具だろう。やつらは恐らく…」
その時、ラギル目掛けて黒い球が飛んできた。
ラギルは忍者のようにそれをかわし、大剣を抜いた。
「な…何だ!?」
「奴らだ…」
ラギルは顔を上げる。
その方を見ると、白っぽいローブを着た2人の男がいた。
「町の騎士か…こんな所まで来るとは」
「お前らは…!」
その顔には、見覚えがあった。
間違いなく、町にいた2人だ。
「ん…?おお、先程ぶりだな。像を取り戻しに来たのか?」
「…やっぱり、像はお前らが持ってるんだな!」
「ああそうだ…あの像は我らが…」
言い終わる前に、グラームは光の波動を食らった。
そしてケイズも、ラギルの攻撃を受けていた。
「っ…。む…お前は…!」
グラームはキョウラに気づいたらしく、険しい顔をした。
「なるほどな…こんなに早く来られたのは妙だと思ったが、お前がいたからか!」
「私は何もしていません。ここにたどり着く事ができたのは、そちらの騎士様が情報を提供して下さったからです」
「騎士などに頼るとは…所詮は、ありもしないものにすがる貧弱な種族といったところだな」
「あなた達こそ、理性も人格も捨てて邪なものに心酔する、哀れな種族ではありませんか。
この世の脅威となる邪悪な存在を崇拝し、自分たちが絶対に正しいと思い込んで虚しく暴れ回る、卑劣で陰湿な種族でしょう」
キョウラは怒った顔で言った。
どうやら、修道士と祈祷師は仲が悪いようだ…まあ、光と闇が相容れることはない、って感じだろうか。
もう一人…ケイズの方はというと、ラギル、煌汰、輝と絶賛戦闘中だった。
ラギルは驚異的な身のこなしと共に大剣を軽々と振るい、煌汰は小ぶりな剣で迅速に斬りかかり、ケイズに襲いかかる。
そして輝は、遠方から隙を見て援護射撃。
対するケイズは、バリアみたいなものを張って攻撃を防ぎつつ、時折反撃をしていたが、基本的には防御していた。
それを見たキョウラが、
「お仲間の方は苦戦していうようですね?」
と、煽るように言った。
「ふん…ケイズならば問題はない。奴は20年来の相方だ、そんな簡単には…」
言ってる矢先にバリアが割れ、ケイズはラギルの渾身の一撃を食らった。
そして、ケイズは崩れるように倒れた。
「なっ…!」
グラームが驚いている間に、キョウラが光で剣を生成して斬りかかる。
「ぐっ…!」
「ずいぶん呆気ないものでしたね。あとはあなただけです!」
「おのれ…私を侮るなよ!お前ごときに負けるものか!」
キョウラの剣を杖で抑えながら、グラームは唸るように言った。
しかしその直後、グラームは口を開けてうめき声をあげた。
ラギルの弟2人が、奴の足を突き、背中を切り裂いたのだ。
その隙に、キョウラがグラームの腹を貫いた。
そしてキョウラは剣を抜いた…かと思いきや、突然右に手を伸ばした。
光の柱がケイズに落とされ、ケイズは血を吐いて力尽きた。
どうやら、まだ息があったようだ。
「お…おの…れ…」
辛うじて息があるグラーム。
その首をラギルが掴み、キョウラが首筋に剣を向ける。
「言いなさい!勇人アモールの像を、どこにやったのですか!」
「そ…そこの…箱に…ある…」
俺は奴が指さす箱を見つけ、駆け寄る。
それは古びた木の箱だった―開けると、中に小さな石の像が入っていた。
魔法で縮めていたのか。
「あったぞ。これだよな?」
ラギル達に見せると、
「ああ、間違いないな」
と言ってくれた。
「で、お前達はこれをなんで盗み出した?」
「勇者の…邪魔を…するためだ…」
「勇者、だと?」
「そうだ…いずれ…防人の中から、勇者が…現れる…。だから…そいつの動きを…封じて…」
なぜそんな事がわかるのだろうか。
もしかしたら、予言か何かを受けたのか?
ならば、詳しく聞き出すに越した事はない。
ラギルもそう思ったようで、「どこでそんな事を知った?言え!」と問い詰めた。
「我らの主が、仰っていた…だから、我らは…あの…方の…命に…従って…」
「主…?」
キョウラは、一度俺とミロウ達2人以外の全員と顔を見渡した。
「その主は、どこにいるのです?」
すると、グラームは少しだけ余裕を持ったようで、
「お前も…知っているの…ではないか…?」
と、笑うように言った。
「私も…?」
「そうだ…はあ…我らの、頂点にして…偉大な…サンライトの…しは…」
ここで、グラームは事切れた。
「…サンライトの、支配者…?」
俺がそう言うと、キョウラがすぐに言った。
「そんなまさか…!サンライトの統治者は、大司祭サディ様…種族としても、立場としても最上位の修道士の方です。祈祷師に何かを吹き込むなんて、あり得ません!」
「いや、わからんぞ。もしかしたら…ということもあるからな」
ラギルの言葉を聞いて、キョウラは信じられないという顔をした。
「とにかく、真相を確かめる方法は一つだ。実際にサンライトへ行ってみればいい」
「そうだな。まあ大丈夫だとは思うけど…」
「司祭なら、祈祷師の言う事なんか真に受けたりしないだろ。そもそも、こいつが言ってたのが本当にサンライトの統治者なのか、わかんないしね。だからさ、キョウラ。軽く考えて行こうよ」
「ええ…」
キョウラの表情は晴れなかった。
「サンライト…って、今俺達がいる国だよな?」
「ああ…だが、ここから町までは少しばかり遠い。一度戻り、仲間と共に行こう」
「だな。…けど、その前に像を返さなきゃだ」
手に持った像を見ながら言うと、ミロウが口を開いた。
「返すって、まさかミフィデルの町にか?」
「そりゃあな」
「マジかよ…あんな遠くまで行くのか?今から行ったら10日はかかるぜ?」
ミロウは嫌そうな顔をしたが、イルクが諭した。
「あのな、ミロウ。この像はこの国を作ったっていうお偉いさんの像で、不思議なパワーがあるって言われてるんだぜ?返さなきゃ、それこそバチがあたるぜ」
「…そっか、そいつは困るな。よしゃ、姜芽さんよ、早いとこ像を返しに行こうぜ」
「あ、ああ…」
とりあえずは、ゼスルの町まで戻ろう。
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