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「いやっ! その反応! ご馳走様ですぅ」
小林さんは両手を胸に当てて、恍惚とした表情を見せる。
や、やっぱりこの人もキャラ濃ゆめな感じ。濃ゆめどころじゃないか。かなり強烈かも。桔平くんも米田さんも気にしていないようだし、普段からこのノリなのかもしれない。
「ヨネ。オレら、もう行くわ」
「おっけーい。片付けのときは、よろしくねー」
「浅尾っち、もう行ってしまうんかいな!」
「もともと、お前と交代だろ」
「寂しいやんかぁ」
桔平くんの子供のころの話を聞いたから、こういう光景を見るのは嬉しい。絵に対する悩みはもちろんあるんだろうけれど、大学生活自体は楽しそう。
「いっさくんーお客さんー」
「いやっ! 愛茉ちゃん七海ちゃん、おれに会いにまた来てなー!」
ニコニコ笑顔の米田さんと、仰々しく両手を振る小林さんに見送られながら、ヨネダ珈琲をあとにした。
「めちゃくちゃ濃い味のコンボだったね……」
七海が、呆気にとられた表情で呟くように言った。藝大生のノリを見て、軽くカルチャーショックを受けているっぽい。あのふたりが藝大生のリアルなのかは、分からないけれど。
「ねぇ桔平くん。小林さんって、本当に『いっさ』なの?」
「ああ、俳人の小林一茶とは字が違うけどな。あいつの『さ』は人偏に左の佐」
「そうなんだ。あと、浅尾きゅんって……なに」
「ドラゴンズのイケメンピッチャー」
「ドラゴンズって、プロ野球の?」
「ヨネは名古屋出身で、ドラゴンズの大ファンらしくてさ。浅尾きゅんって呼ばれていた、イケメンピッチャーがいるんだと」
「それで浅尾きゅん……私も浅尾さんじゃなくて、そう呼ぼうかな」
「やめて七海ちゃん。そんなん、ヨネだけで十分だから」
3人でケラケラと笑う。ああ、やっぱり楽しいな。
「米田さんって、ほんわかして可愛い人だね」
「癒し系だよな。でも描いてんのは妖怪」
「妖怪!?」
思わず七海と声を上げた。え、あんなほんわかして癒しの塊みたいな人が妖怪描いてるの? なんで妖怪?
「すげぇおどろおどろしいの。水木しげるみたいな感じ。あのポヤーっとした雰囲気からは想像できねぇだろ?」
そう言って笑う桔平くんを見て、なんとなく分かった。仲がよさそうなんて、そんな軽いものじゃない。米田さんも小林さんも、きっと戦友のような存在なんだ。
心の中に孤独を抱える桔平くんにとって、同じ道を究めようとする人が周りにいるのは、すごく大切なことなんだと思う。
そうじゃなきゃ、きっと模擬店を手伝うなんてことはしない。ただ絵を展示するだけで、イベントにはあまり関わろうとしないんじゃないかな。
いままで知らなかった一面が知ることができて、また桔平くんを近くに感じた。
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や、やっぱりこの人もキャラ濃ゆめな感じ。濃ゆめどころじゃないか。かなり強烈かも。桔平くんも米田さんも気にしていないようだし、普段からこのノリなのかもしれない。
「ヨネ。オレら、もう行くわ」
「おっけーい。片付けのときは、よろしくねー」
「浅尾っち、もう行ってしまうんかいな!」
「もともと、お前と交代だろ」
「寂しいやんかぁ」
桔平くんの子供のころの話を聞いたから、こういう光景を見るのは嬉しい。絵に対する悩みはもちろんあるんだろうけれど、大学生活自体は楽しそう。
「いっさくんーお客さんー」
「いやっ! 愛茉ちゃん七海ちゃん、おれに会いにまた来てなー!」
ニコニコ笑顔の米田さんと、仰々しく両手を振る小林さんに見送られながら、ヨネダ珈琲をあとにした。
「めちゃくちゃ濃い味のコンボだったね……」
七海が、呆気にとられた表情で呟くように言った。藝大生のノリを見て、軽くカルチャーショックを受けているっぽい。あのふたりが藝大生のリアルなのかは、分からないけれど。
「ねぇ桔平くん。小林さんって、本当に『いっさ』なの?」
「ああ、俳人の小林一茶とは字が違うけどな。あいつの『さ』は人偏に左の佐」
「そうなんだ。あと、浅尾きゅんって……なに」
「ドラゴンズのイケメンピッチャー」
「ドラゴンズって、プロ野球の?」
「ヨネは名古屋出身で、ドラゴンズの大ファンらしくてさ。浅尾きゅんって呼ばれていた、イケメンピッチャーがいるんだと」
「それで浅尾きゅん……私も浅尾さんじゃなくて、そう呼ぼうかな」
「やめて七海ちゃん。そんなん、ヨネだけで十分だから」
3人でケラケラと笑う。ああ、やっぱり楽しいな。
「米田さんって、ほんわかして可愛い人だね」
「癒し系だよな。でも描いてんのは妖怪」
「妖怪!?」
思わず七海と声を上げた。え、あんなほんわかして癒しの塊みたいな人が妖怪描いてるの? なんで妖怪?
「すげぇおどろおどろしいの。水木しげるみたいな感じ。あのポヤーっとした雰囲気からは想像できねぇだろ?」
そう言って笑う桔平くんを見て、なんとなく分かった。仲がよさそうなんて、そんな軽いものじゃない。米田さんも小林さんも、きっと戦友のような存在なんだ。
心の中に孤独を抱える桔平くんにとって、同じ道を究めようとする人が周りにいるのは、すごく大切なことなんだと思う。
そうじゃなきゃ、きっと模擬店を手伝うなんてことはしない。ただ絵を展示するだけで、イベントにはあまり関わろうとしないんじゃないかな。
いままで知らなかった一面が知ることができて、また桔平くんを近くに感じた。