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伸哉の家へ

ー/ー



幸長と涼紀はすぐにでも出て行きたかった。

 しかし、あまりにも彰久が集中しすぎていたため、仕方なく冷たい視線を浴びながら一緒にいることになった。

 流石に閉館三分前になったところで彰久を椅子から引き剥がし、図書室から一階の昇降口へと向かう少し薄暗い廊下を歩いていた。

「いやー。久しぶりに集中して勉強したよ。この調子でいけば何とかなりそうだ」

 能天気に彰久は言ったが、幸長と涼紀は何も言えなかった。

「ありがとうな幸長。恩に着るぜ」

「いえ、どういたしまして」

 熱い彰久の言葉に対し、幸長の返事は棒読みに等しかった。教室から漏れた光が当たったその顔はどっと疲れを感じさせるものだった。

「借りは試合で返すからな。あ、そういや今日は伸哉いなかったけど涼紀知ってる?」

 階段に差し掛かったところで、彰久はそのことにようやく気づいたようだ。予想外の言葉に幸長と涼紀は思わず足を踏み外しそうになった。

「そうですね。確か熱をだして今日は学校を休んでる、って監督に聞きました」

 それを聞くと、彰久は顎に手を当てながらずいぶん物珍しそうな顔をしていた。彰久の記憶の中では熱をだしたり風邪を引いたりして休んだという日はあまりなかったようだ。

「それで先輩は伸哉の家知ってます? 明日軽くお見舞いに行こうかなと思ってるんですけども」

 最悪と言える初対面の時からは全く考えもつかないような一言だったせいか、彰久はお前がかと、大声で叫んだ。それを聞いた涼紀は不機嫌そうな顔をしていた。

「ごめんごめん。一応伸哉の家は知ってるんだけど、そう言えば一回も中に入ったことがないんだよなあ」

「小学校頃にバッテリーを組んでいたのにかい?」

 幸長は図書室での仕返しも込めて、彰久をおちょくるように言う。

「あのさあ俺と伸哉の家は昔は遠かったし、そもそも学校も違ってたんだよ。それに練習も夜遅くまでやるし、普段は別の人と遊んでるからそんな機会殆ど無かったんだよ」

 幸長の皮肉にムッときたのかかなりムキになって彰久は言い返した。幸長は涼しそうにそれを聞き流していた。

「とっ、とにかく知っているんですよね? だったら一緒に行きませんか?」

 涼紀はとりあえず話を元に戻すために、二人の会話の間に割って入った。

「おういいぜ。俺もちょっと家の中入りたいし」

「そうだねえ。面白そうだから僕も同行させて貰おうか」

 幸長がついてくると言った瞬間、またも二人の間で会話のドッヂボールが始まってしまった。

「あ、あのー。時間はどうしましょうか」

 涼紀はまた二人の会話の中に割って入った。涼紀の存在に気付けるほどには落ち着いているようである。

「そうだなあ。一時とかでどうだ?」

「いいっすね。幸長先輩は」

「うーん。僕もそれでいいかな」

 その後も度々幸長と彰久の軽い口論をはさみながらも集合場所等を決めた。こうして三人は翌日、伸哉の家へ行くことになった。


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幸長と涼紀はすぐにでも出て行きたかった。
 しかし、あまりにも彰久が集中しすぎていたため、仕方なく冷たい視線を浴びながら一緒にいることになった。
 流石に閉館三分前になったところで彰久を椅子から引き剥がし、図書室から一階の昇降口へと向かう少し薄暗い廊下を歩いていた。
「いやー。久しぶりに集中して勉強したよ。この調子でいけば何とかなりそうだ」
 能天気に彰久は言ったが、幸長と涼紀は何も言えなかった。
「ありがとうな幸長。恩に着るぜ」
「いえ、どういたしまして」
 熱い彰久の言葉に対し、幸長の返事は棒読みに等しかった。教室から漏れた光が当たったその顔はどっと疲れを感じさせるものだった。
「借りは試合で返すからな。あ、そういや今日は伸哉いなかったけど涼紀知ってる?」
 階段に差し掛かったところで、彰久はそのことにようやく気づいたようだ。予想外の言葉に幸長と涼紀は思わず足を踏み外しそうになった。
「そうですね。確か熱をだして今日は学校を休んでる、って監督に聞きました」
 それを聞くと、彰久は顎に手を当てながらずいぶん物珍しそうな顔をしていた。彰久の記憶の中では熱をだしたり風邪を引いたりして休んだという日はあまりなかったようだ。
「それで先輩は伸哉の家知ってます? 明日軽くお見舞いに行こうかなと思ってるんですけども」
 最悪と言える初対面の時からは全く考えもつかないような一言だったせいか、彰久はお前がかと、大声で叫んだ。それを聞いた涼紀は不機嫌そうな顔をしていた。
「ごめんごめん。一応伸哉の家は知ってるんだけど、そう言えば一回も中に入ったことがないんだよなあ」
「小学校頃にバッテリーを組んでいたのにかい?」
 幸長は図書室での仕返しも込めて、彰久をおちょくるように言う。
「あのさあ俺と伸哉の家は昔は遠かったし、そもそも学校も違ってたんだよ。それに練習も夜遅くまでやるし、普段は別の人と遊んでるからそんな機会殆ど無かったんだよ」
 幸長の皮肉にムッときたのかかなりムキになって彰久は言い返した。幸長は涼しそうにそれを聞き流していた。
「とっ、とにかく知っているんですよね? だったら一緒に行きませんか?」
 涼紀はとりあえず話を元に戻すために、二人の会話の間に割って入った。
「おういいぜ。俺もちょっと家の中入りたいし」
「そうだねえ。面白そうだから僕も同行させて貰おうか」
 幸長がついてくると言った瞬間、またも二人の間で会話のドッヂボールが始まってしまった。
「あ、あのー。時間はどうしましょうか」
 涼紀はまた二人の会話の中に割って入った。涼紀の存在に気付けるほどには落ち着いているようである。
「そうだなあ。一時とかでどうだ?」
「いいっすね。幸長先輩は」
「うーん。僕もそれでいいかな」
 その後も度々幸長と彰久の軽い口論をはさみながらも集合場所等を決めた。こうして三人は翌日、伸哉の家へ行くことになった。