第19話 用心棒は殺人者
ー/ーロイゼンはロープで縛られ、広場の中央に謎に設置された柱にくくりつけられた。
「では、これよりロイゼンと名乗る賊を裁く」
一人の男が、柱の前で紙を開いて喋る。
「この者に与える裁きについて、妥当な案がある者はいるか?」
すると、複数の連中から「絞首刑だ!」「いや、火あぶりにすべきだ!」といった声が上がった。
「静粛に!」
柱の前に立つ男は、少し黙ってから口を開いた。
「多数決により、この賊を絞首刑とする。
しかし、その前に素顔を晒させよう」
すると、人々はざわめいた。
「どうしよう…ロイゼンさまが…!」
「なんてことだ…だが、我々にはどうにもできん…」
その時だった!
「…ぐわっ!?」
紙を読み上げていた男が、横から何者かに奇襲されてふっ飛ばされた。
当然、辺りは騒然となった。
「な…何者だ…!?」
それは、ロイゼンに似た赤いマスクに赤いマントの人物だった。
「ロイゼンを捕らえて満足か。だが、まだ私がいるぞ!」
「なんだ…?」
「誰…?ロイゼンに似てるけど…」
「あ、エルアイだ!久しぶりに見た!」
「ボク、あの人に助けてもらったことあるよ!」
人々の反応からするに、ロイゼンの代わりに現れることがあったヒーローのようだ。
「私は隠者エルアイ…ロイゼンの相方だ!」
「相方だと…!?」
エルアイは地上に降りてロイゼンに近づき、
「無様だね、こんな奴らにやられるなんて!ほら、行くよ!」
と言いながら、ロイゼンの拘束を解き始めた。
もちろん、男達が近づけないよう、ピンク色の透明な壁…結界を張ったうえで。
「ちっ…なんなんだ一体!こうなりゃ仕方ねえ…兄貴方、頼みます!」
男達がそう言うと、明らかに町の人達とも男達とも雰囲気が違う異人が3人現れた。
それぞれ槍、ハンマー、刀を装備している。
「なんだ?…もしかして、殺人者か!?」
誰かがそう叫ぶと、人々は恐れ慄いた。
「殺人者…そうかい。そりゃ面白そうだ」
猶が短剣を回しながら言った。
どうやら、今度こそ俺達の出番のようだ。
煌汰と猶がハンマー持ちを、柳助が刀持ちを視界に捉えたので、俺は槍持ちの方を向く。
「姜芽、無理はするなよ!」
樹が心配してくれたが、大丈夫だろう。
「心配すんな、大丈夫だ」
盗賊のボスとの戦いで既知の通り、斧は槍に強い。
だから、相性的には勝てるはずだ。
…ところが、いざ戦ってみると、これが思いの外苦戦させられた。
向こうは槍を振ってくる速度が地味に早く、また体を回転させて反対から突いてきたり、槍を派手に振るって斬りかかってきたりと、なんというか、全体的に洗練された動きを見せてくるのだ。
はっきり言って、キツい。
俺は戦いや武器の扱いは「どうにか慣れてきた」程度である。
なのに、こんなバリバリの経験者を相手にして勝てるわけがない。
いくら武器の相性がよくても、自分と相手の強さが合っていなければ、まず勝てないだろう。
「[シャイン]!」
その時、キョウラが魔法を放ち、俺が相手している敵を牽制してくれた。
「…!」
「姜芽様、大丈夫ですか?」
「ああ…盗賊より動きがいいから、ちょっとキツいな…」
「彼らは『殺人者』…本能的に戦いを好む種族ですから、武器の扱いに関しては相応の経験があるのでしょう。姜芽様には、ハードルの高い相手かもしれませんね…」
「やっぱりそうか…」
悔しいが、このままでは恐らく勝てない。
武器の扱いでは、向こうの方が上だ。
樹達に援護を頼もうかとも思ったが、見た限り連中もそれなりに苦戦しているようだ。
となると、どうすれば…
(ん…?そうだ!)
技を閃いた時ほどではないが、鋭い突発的な発想が脳裏に走った。
これだ。これなら、きっといける!
「…姜芽様?」
きょとんとするキョウラに答えるように、俺は斧をしまい、代わりに左手に火の玉を作り出す。
そして、右肩のあたりまで手を持っていき、
「炎法 [ファイアカーペット]」
詠唱と共に手を払い、地面を炎上させた。
奴は驚き、そして熱さに苦しんでいた。
しかし、すぐに高々とジャンプしてかわしてきた。
そこで、間髪入れずに次の魔法を使う。
「炎法 [螺旋火炎]」
右手を突き出し、手のひらから渦巻く炎を放った。
地面に墜落した所へ、畳み掛けるように攻撃をする。
これはただ斧を振り下ろすだけではない、斧を火で包み、威力を底上げした状態での一撃だ。
結果として、相手…用心棒の殺人者は、流血と共に動かなくなった。
「やりましたね…!」
「ああ…けど、まだ終わっちゃない!」
まだ、残りの二人…猶達が相手をしている奴らが残っている。
そっちの戦況は、どうなのだろうか。
「[風刃]」
ハンマー持ちを猶が横から切りつけ、
「[二段陽炎]」
煌汰が正面から攻撃を仕掛ける。
煌汰が技を出す時、自身の姿が揺らいでいたため、陽炎が立ち上っているのがわかった。
おそらく今の煌汰の技は、揺らめく陽炎の向こうの己を囮にした多段攻撃だろう。
対するハンマー持ちは、ほぼ攻撃をせず一方的にやられていた。
武器が鈍重であるためか、機敏にうごき周り攻めてくる二人に対処しきれないようだ。
これなら、大丈夫そうだ。
さて、刀持ちはどうだろうか。
そう思いながら目を移した直後、なんと奴は俺に斬りかかってきた。
間一髪で受け止めたが、あと数秒…いや、一瞬でも反応が遅れてたら、殺られていた。
「ちっ…!姜芽、大丈夫か!」
「何とかな…」
やり合っていたのは樹、輝、柳助。
樹は棍を横に持っており、輝は短剣、柳助は妙にでかい剣を手にしていた。
三人の立ち位置などから察するに、どうやらたった今まで樹とやり合っていたが、俺が近づいてきたのに気づいて向かってきたようだ。
樹とやり合ってるにも関わらず、俺の接近に気づくとは…。
「姜芽、結界を張れ!そいつは攻撃の速度が速い!」
「…!?」
困惑しているうちに、奴は刀を下げる…ふりをして突いてきた。
そして、そこから怒涛の速度で攻撃してきた。
これは、確かに受け続けるのは無理そうだ。
しかし、結界なんてどうやればいいんだ?
そう思っていたら、キョウラが説明してくれた。
「姜芽様!結界は、魔力を体から少し離れた所に広げるようにして出せば張れます!」
なので、仮の礼をしておいた。
「そうか…ありがとな!」
奴は俺の斧に刀を食い込ませて押してきたが、ここで俺は奴の股を蹴り上げて引き剥がした。
そして両手を広げ、魔力を体の数センチ先で広げるよう精一杯イメージした。
その結果、俺の前にオレンジ色の透明な壁が現れた。
いや、壁ではない。
それは俺を中心として、球形に広がっていた。
「おぉ…」
柳助が声をあげる。
そして、刀持ちが驚き、攻撃の手を止めたその隙に、樹と輝が背後から飛びかかった。
「[スクリューミキサー]」
「[勇気の一撃]」
二人の技を食らい、刀持ちは倒れた。
戦いが終わった直後、北口から謎の兵士?の一団が現れた。
それを見た樹が、安堵の声を上げた。
「セドラルの官吏か…これでもう安心だな」
どうやら、誰かがセドラルの官吏を呼んだようだ。
こうして、事件は解決した。
昨日からちょくちょく見かけていたあの男達は、やはりゲノーラ商会の関係者であったらしく、俺達を襲ってきたあの用心棒は、キョウラの言っていた通り殺人者だったようだ。
そして、昨日俺が現場を見ていたあの青年が運ばされようとしていたものも、確かに麻薬であったらしい。
それを受けて、セドラルの官吏はゲノーラ商会を詳しく調査するそうだ。
俺としても、今回の事件であの商会は真っ黒であると考えている。
官吏が悪事の全容を暴いて、妥当な処分が下ってくれればいいが…
なんだろう、なぜだかそうは上手くいかないような気がする。
さて、ロイゼン達だが…
俺達の戦いが終わった時、すでにいなくなっていた。
礼も言わず、一体どこに行ってしまったのだろう。
そして、結局奴らは何者だったのだろうか。
わからない事や気がかりな事が色々あったが、それらを気にし続けることはなかった。
なぜなら、その日は俺達みんな、町と町のヒーローを救った英雄ということで、町の酒場の宴会にて夜通し飲み明かす事になったからだ。
キョウラは戒律で酒が飲めないらしいので、残りのメンバー全員が派手に飲まされた。
そして、気付いた頃には朝になっていた。
ハメを外すというのが良いことなのか、悪いことなのか…俺にはわからん。
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