ひとまず授業の用意をしていたところに後ろから声をかけられた。それは女好きの高梨で、何をしてくるか分からないから身構える。
「三河さん授業が始まる前に準備しとくんだ、えらいねー」
「別に、当たり前のことだけど」
「真面目だな、雪田とかに宿題やらされて大変だろうけど頑張ってね」
「はあ……」
そんなことを言われてもどう返していいかわからない。朝霧や一井の味方をしそうな男子に言われても不審に思うだけだった。
言い終えると高梨は男子のかたまりへ戻り、小さな笑い声が沸いてきた。
「話してあげたのに冷たいな」
「まあ三河さんだし仕方ないよ。きっと勉強はできても男子と話す能力がないんだ。天は二物を与えず」
「それでもブスのくせに愛想もないとか一生結婚できないパターンだな。悪いところだけ二つもつけられてやんの」
なるほど、そうやって馬鹿にするために声をかけたってこと。
時間の無駄だから最低限の返事だけ返せば愛想がない、それでどうせ愛想良くしても気があるとか三河さんに好かれても困るとか言うのが想像つく。
沙良木も私もそれの繰り返しだった。
鬱陶しい。
気休めにさっさと友達のところに行く。今日は葛田のグループがいる。
覗き込むとSNSを見ていて、気に入らない人に文句を言っていた。
「あのクソにわか! お前にアニメを語る資格なんてねーよ!」
今度は匿名のアカウントではなく、違うクラスの知らない人の話になる。
「似たようなやついるよね。今回のイベントストーリーすら読み終えてないのにファン面しててさ、同じ部活だけど目障りで仕方ない」
知らない人の陰口は聞いてて気分のいいものではない。共感することもできないから無言で座っている。
正直なところ彼女らが嫌う理由も些細なことで、よくもそこまで言えるなと思ってしまう。
そんな些細なことで嫌える人だ、もしも私が少しでも気に入らないことをすれば知らないところで叩かれるかもしれない。
ここにいたって芯まで心が休まる訳ではない。