エピローグ〜復讐スルハ我ニアリ〜前編
ー/ー
5月10日(火)
その後のことを少しだけ語ろう。
クラスメートとの放課後の会談が終わった翌日、相変わらず覇気のない竜司とともに、登校して教室の席に着くと、すぐに声を掛けてくる女子がいた。
「おはよう黒田クン! 相変わらず冴えない表情だけど、大丈夫? せっかく、わたしが色々と恋愛に関するレクチャーをしてあげたのに……そんなんじゃ、女子に相手にしてもらえないゾ!?」
(誰のせいで、こんなことになったと思ってるんだよ!?)
竜司の代わりにボクがツッコミを入れたくなるような発言に頭を抱えていると、自称・学園一の美少女転入生に声を掛けられた親友は、
「シロ……白草か……もういい……もう構わないでくれ……オレは、現実世界の女子に相手にされないことがわかったから……これからは、という美しい物語の中に生きる道を見つけたんだ。なぁ……知ってるか? マンガやアニメの中には、非モテに優しいギャルが存在するんだぜ?」
と、同性のボクでもドン引きするようなことを口にしながら、アニメ化で話題を集めている「コスプレ好きのギャルと人形職人を目指す男子高校生が主人公」のラブコメ漫画を差し出し、話し掛けてきた相手に見せつけている。
その言動に、こめかみをヒクヒクと震わせながら、自称・世界一かわいい転入生は、
「いまの発言は聞かなかったことにしてあげる……けど、わたしの前でマンガやアニメのキャラクターの話しをするなんて、イイ度胸じゃない? その腐った根性をもう一度、叩き直してあげる!」
と、竜司の首元を掴み、凄んでいた。
「なんだよ! 白草も自分のアゲた動画の中で、『女子は、少女マンガに出てくるような男子に憧れる』って言ってたじゃね〜か! オレたち非モテが、『非モテに優しいギャル』に憧れて、ナニが悪い!?」
「そんな男子に都合の良いキャラが、現実にいるワケないでしょ! 現実から目をそらさないで、もっと、目の前の女の子に目を向けなさい!!」
「…………何…………だと…………現実には、存在しないだって……? いや、しかし、オレ達は、それでも、その存在を信じている。実在が否定されているにもかかわらず、多くの人間が、その存在を信じ、救われるような気持ちになっているんだ……ん? 待てよ……ってことは――――――『非モテに優しいギャル』って、もはや《神》と同等の存在じゃね?」
ボクは泣いた――――――。
可哀想に――――――。
オタク趣味に理解があってフレンドリーなギャルなんて存在しないんだよ――――――。
非モテが妄想して創作したお伽噺なんだよ――――――。
友人とクラスメート、二人のやり取りを聞きながしながら、これは近くで見ていられない、と彼らから離れた位置に移動すると、
「相変わらず、あの二人は、仲が良いみたいですね」
ボクに声を掛けてくるクラスメートがいた。
「あっ、天竹さん、おはよう! 天竹さんも、そう思う? もう、朝からやってらんないよ……」
竜司と白草さんの会話をあきれながらみつめるボクに、天竹さんも、二人の会話を聞いた感想を口にする。
「ええ……いまの白草さんのようすを見ると、とても、黒田君の告白を断ったふうには見えないです」
「ホント、そうだよね……あんなに親しげに竜司と話して……もしかして、白草さんは、また何か企んでいるのかな……?」
ボクが、そんな感想を口にすると、文芸部部長の女子は、彼女らしからぬ例え話を披露してくれた。
「わたしの見立てでは、それは無いんじゃないでしょうか? 黒田君の視点で見た場合、今回の件は、ロール・プレイング・ゲームなどで良くある『負けイベント』というヤツなのではないかと思います。衆人環視の前で告白を断ったのは、シナリオ・クリアのためのお約束的な展開だった可能性もあるのかな、と……」
普段、ゲームのことなど話題にしない彼女が、意外なことを口にするなと感じつつ、
「……と言うと?」
と、続きをうながすと、天竹さんは、淡々と自身の見解を語る。
「あの事件の直前にも話しましたけど……告白の直前まで白草さんのハッシュタグ竜馬ちゃんねる付きの《ミンスタ》の投稿は、『匂わせ』としか考えられません。おそらく、白草さんは、いまでも黒田君のことを憎からず思っているハズで……土曜日の件は、過去の思い出を精算したにすぎないんじゃいかな、と感じるんです」
たしかに、彼女の推察には、一理あるかも知れない。
天竹さんが、A4用紙にまとめた白草さんの過去に関する考察推理は、当の本人から大きく否定されることはなかった。
あの用紙にまとめたことに、事実と違わない点が多いとすれば、不可解に感じられる白草さんの心情を推し量ることも難しくはない。
その点を考慮すれば、
「カリスマ女子高生になったわたしに、初恋の彼が衆人環視のまえで告白してきたけど、もう遅い!」
と、あからさまにソデにされないだけでも、竜司は、まだマシなのか知れない。
ただし――――――。
異性にフラレた男性主人公が相手に「ざまぁ」と復讐する物語はWEB上に数多く存在しても、主人公の男子が女子に「ざまぁ」と復讐される話なんて、聞いたことがない。
もし、そんな読者の需要を満たさないストーリーがネット上に存在するとしたら、作者は、最後まで読んでくれた読者に土下座して感謝の意を示すべきだろう。
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5月10日(火)
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「おはよう黒田クン! 相変わらず冴えない表情だけど、大丈夫? せっかく、わたしが色々と恋愛に関するレクチャーをしてあげたのに……そんなんじゃ、女子に相手にしてもらえないゾ!?」
(誰のせいで、こんなことになったと思ってるんだよ!?)
竜司の代わりにボクがツッコミを入れたくなるような発言に頭を抱えていると、自称・学園一の美少女転入生に声を掛けられた親友は、
「シロ……白草か……もういい……もう構わないでくれ……オレは、現実世界の女子に相手にされないことがわかったから……これからは、《二次元》という美しい物語の中に生きる道を見つけたんだ。なぁ……知ってるか? マンガやアニメの中には、非モテに優しいギャルが存在するんだぜ?」
と、同性のボクでもドン引きするようなことを口にしながら、アニメ化で話題を集めている「コスプレ好きのギャルと人形職人を目指す男子高校生が主人公」のラブコメ漫画を差し出し、話し掛けてきた相手に見せつけている。
その言動に、こめかみをヒクヒクと震わせながら、自称・世界一かわいい転入生は、
「いまの発言は聞かなかったことにしてあげる……けど、わたしの前でマンガやアニメのキャラクターの話しをするなんて、イイ度胸じゃない? その腐った根性をもう一度、叩き直してあげる!」
と、竜司の首元を掴み、凄んでいた。
「なんだよ! 白草も自分のアゲた動画の中で、『女子は、少女マンガに出てくるような男子に憧れる』って言ってたじゃね〜か! オレたち非モテが、『非モテに優しいギャル』に憧れて、ナニが悪い!?」
「そんな男子に都合の良いキャラが、現実にいるワケないでしょ! 現実から目をそらさないで、もっと、目の前の女の子に目を向けなさい!!」
「…………何…………だと…………現実には、存在しないだって……? いや、しかし、オレ達は、それでも、その存在を信じている。実在が否定されているにもかかわらず、多くの人間が、その存在を信じ、救われるような気持ちになっているんだ……ん? 待てよ……ってことは――――――『非モテに優しいギャル』って、もはや《神》と同等の存在じゃね?」
ボクは泣いた――――――。
可哀想に――――――。
オタク趣味に理解があってフレンドリーなギャルなんて存在しないんだよ――――――。
非モテが妄想して創作したお伽噺なんだよ――――――。
友人とクラスメート、二人のやり取りを聞きながしながら、これは近くで見ていられない、と彼らから離れた位置に移動すると、
「相変わらず、あの二人は、仲が良いみたいですね」
ボクに声を掛けてくるクラスメートがいた。
「あっ、天竹さん、おはよう! 天竹さんも、そう思う? もう、朝からやってらんないよ……」
竜司と白草さんの会話をあきれながらみつめるボクに、天竹さんも、二人の会話を聞いた感想を口にする。
「ええ……いまの白草さんのようすを見ると、とても、黒田君の告白を断ったふうには見えないです」
「ホント、そうだよね……あんなに親しげに竜司と話して……もしかして、白草さんは、また何か企んでいるのかな……?」
ボクが、そんな感想を口にすると、文芸部部長の女子は、彼女らしからぬ例え話を披露してくれた。
「わたしの見立てでは、それは無いんじゃないでしょうか? 黒田君の視点で見た場合、今回の件は、ロール・プレイング・ゲームなどで良くある『負けイベント』というヤツなのではないかと思います。衆人環視の前で告白を断ったのは、シナリオ・クリアのためのお約束的な展開だった可能性もあるのかな、と……」
普段、ゲームのことなど話題にしない彼女が、意外なことを口にするなと感じつつ、
「……と言うと?」
と、続きをうながすと、天竹さんは、淡々と自身の見解を語る。
「あの事件の直前にも話しましたけど……告白の直前まで白草さんのハッシュタグ竜馬ちゃんねる付きの《ミンスタ》の投稿は、『匂わせ』としか考えられません。おそらく、白草さんは、いまでも黒田君のことを憎からず思っているハズで……土曜日の件は、過去の思い出を精算したにすぎないんじゃいかな、と感じるんです」
たしかに、彼女の推察には、一理あるかも知れない。
天竹さんが、A4用紙にまとめた白草さんの過去に関する考察推理は、当の本人から大きく否定されることはなかった。
あの用紙にまとめたことに、事実と違わない点が多いとすれば、不可解に感じられる白草さんの心情を推し量ることも難しくはない。
その点を考慮すれば、
「カリスマ女子高生になったわたしに、初恋の彼が衆人環視のまえで告白してきたけど、もう遅い!」
と、あからさまにソデにされないだけでも、竜司は、まだマシなのか知れない。
ただし――――――。
異性にフラレた男性主人公が相手に「ざまぁ」と復讐する物語はWEB上に数多く存在しても、主人公の男子が女子に「ざまぁ」と復讐される話なんて、聞いたことがない。
もし、そんな読者の需要を満たさないストーリーがネット上に存在するとしたら、作者は、最後まで読んでくれた読者に土下座して感謝の意を示すべきだろう。