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第10章〜どらドラ!〜⑧

ー/ー



中庭のステージでは、移動式のフロートを利用したパレードの中心人物である黒田竜司が、語りだそうとしている。

 その模様は、校内放送用のスピーカーを通じて、全校のほぼすべての箇所で耳にすることができたが、来賓対応や事務作業の妨げになるとして、校長室と職員室のみ、放送が入らないように設定されていた。

 職員室で、佐倉桃華のクラス担任である大林教諭をさがしあて、彼女が保健室に付き添われる経緯を説明していた紅野アザミの耳に、中庭ステージのようすは、届かない。

 しかし、ともにクラス委員を務めるアザミの姿が、ステージ付近にないことにまでは気がまわらないのか、竜司は緊張した面持ちでマイクを握り、続く言葉を語りだした。

「多くのクラブの皆さんに協力してもらって成功させることができた今日のパレードは、僕が小学生の時に、友人の黄瀬壮馬と観た映画のワン・シーンをモチーフにさせてもらいました。その映画のシーンを観た時から、『いつか、この映画の主人公のように、こんなパレードをしてみたい』と思っていたんだけど……」

 ここで、オレは少し間を置き、

「歌の練習と指導に付き合ってくれたコーラス部、素晴らしい演奏を披露してくれた吹奏楽部をはじめ、みなさんの協力のおかげで、その幼い日の憧れを今日、実現することができました。あらためて、僕のワガママなアイデアに付き合っていただいたみなさんに、感謝します。ありがとうございました」

そう言って、壇上に上がっているクラブの代表者が並ぶステージ後方、次にフロートの周囲でステージを見守るパレードの参加者たちへと、順番に頭を下げた。
 高まる気持ちをなんとか抑えながら、語り続ける。

「また、パレードを見守り、盛り上げてくれた観客のみなさんにも、あらためて感謝します」

 今度は、ステージ前方の観衆に向かって、再び深々と頭を下げた。
 ステージの前からは、大きな拍手が起こった。

「ありがとうございます。こうして、声援をもらえるのも、無事にパレードをやり遂げることができたからかな……」

 客席の歓声に応えながら、慎重に次に話す言葉を選び、再び表情を引き締める。

「ここで、少しだけ《自分語り》をさせてもらいたいんだけど――――――」

 そう言ってから、少しだけ砕けた口調で語らせてもらうことにした。

「実は、今日、パレードで歌った『Twist and Shout』を大勢の人の前で披露するのは、自分自身二度目なんだ……ただ、仲良くなった同い年の子にレッスンを付けてもらって、練習を重ねて挑んだ一度目の機会は、緊張してしまってグダグダなまま歌い終わるという情けない結果に終わってしまってさ……だから、自分としては、どうしても、この歌をカッコよく歌いきって、以前、オレにレッスンを付けてくれた、その子に、成長した自分の姿を観てもらいたい、って思ってたんだ――――――」

 そこまで語り切ると、ステージの前から、今度は穏やかな調子の拍手が湧いた。
 


 ステージ上で熱心に語る彼のかたわらで、誰よりも真剣に、その言葉に耳を傾けている人物がいる。
 白草四葉は、ステージの中央で、客席に向かいながら語る黒田竜司に目を向けて、彼の口から紡がれる一言一句を聞き漏らすまい、と注視していた。



 すぐそばで、竜司と四葉から発せられるただならぬ雰囲気を察した寿美奈子は、少し離れた位置で後輩たちを見守る花金鳳花に、

(この二人、このあと、何をやらかすつもりなの?)

と、アイコンタクトを送る。
 一方の鳳花は、われ関せず、と言ったようすで、わずかに首を傾げ、

(あとは、若い二人に任せましょう? なにかあれば、キチンと責任は取らせるから)

と、軽く微笑んで見せた。
 現場での責任を放棄したかのような同級生の仕草に、吹奏楽部副部長は、

(ハァ……もう、どうなっても知らないからね……)

と、苦笑して、ことの成り行きを見守ることに決めた。



 ステージ前方からの拍手を受けて、オレは、これまでよりもマイクを強く握り、決意を固めて、大きく深呼吸をする。
 そして、息を整えてから、ゆっくりと言葉を発した。

「だから、『Twist and Shout』を歌いきり、パレードを成功させることができた今日は、オレの想いを、彼女に、伝えさせてもらおうと思います!」

 言葉を区切りながら語られた、魂の叫びに近い言葉は、ハウリングを起こす直前のボリュームで校内に響き渡り、同時にステージ前の客席からは、

「「「おお……!?」」」

というどよめきが沸き起こった。



 壮馬の監視する《ミンスタライブ》の画面は、これまで以上に大量のコメントで埋め尽くされる。

======================

なになになに!?

サプライズ、キタ━(゚∀゚)━!

これ、もしかして愛の告白?

いったい、どうなるんでがす?

ざわざわwwwwwwwww

生中継見てて良かった!

======================

 ここで、ステージ前の観衆のボルテージと、ステージ上のざわめきを肌で感じ取った寿副部長が、マイクを固く握り、

「おおっと! ここで、本日のサプライズ企画のお披露目か〜?」

と、アドリブによる実況を試みる。
 彼女の一言で、竜司の突然の絶叫に戸惑い、状況について行けていなかった観客たちも、状況を掴んだようで、客席のざわめきは、さらにボリュームを増していった。

「さぁ、はたして、二年生の男子、黒田竜司くんは、何を語るのか!?」



 突如として始まった打ち合わせなしの寿先輩のアナウンスに戸惑いながらも、最後の決意を固めたオレは、マイクを両手でグッと握りしめる。

「あの時、見せられなかったオレのベスト・パフォーマンスを見てもらうことができたと思う……今日の歌をシロに捧げる! だから――――――」

 彼は、ここで、一拍、間を置いて、同級生の方に身体を向け、

「白草四葉さん、オレと付き合ってください!」

思いの丈をシャウトした――――――。

「「「う、うおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」

 ステージ前の客席からは、これまでに無い地響きのような歓声が鳴り響いた。


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次のエピソードへ進む 第10章〜どらドラ!〜⑨


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中庭のステージでは、移動式のフロートを利用したパレードの中心人物である黒田竜司が、語りだそうとしている。
 その模様は、校内放送用のスピーカーを通じて、全校のほぼすべての箇所で耳にすることができたが、来賓対応や事務作業の妨げになるとして、校長室と職員室のみ、放送が入らないように設定されていた。
 職員室で、佐倉桃華のクラス担任である大林教諭をさがしあて、彼女が保健室に付き添われる経緯を説明していた紅野アザミの耳に、中庭ステージのようすは、届かない。
 しかし、ともにクラス委員を務めるアザミの姿が、ステージ付近にないことにまでは気がまわらないのか、竜司は緊張した面持ちでマイクを握り、続く言葉を語りだした。
「多くのクラブの皆さんに協力してもらって成功させることができた今日のパレードは、僕が小学生の時に、友人の黄瀬壮馬と観た映画のワン・シーンをモチーフにさせてもらいました。その映画のシーンを観た時から、『いつか、この映画の主人公のように、こんなパレードをしてみたい』と思っていたんだけど……」
 ここで、オレは少し間を置き、
「歌の練習と指導に付き合ってくれたコーラス部、素晴らしい演奏を披露してくれた吹奏楽部をはじめ、みなさんの協力のおかげで、その幼い日の憧れを今日、実現することができました。あらためて、僕のワガママなアイデアに付き合っていただいたみなさんに、感謝します。ありがとうございました」
そう言って、壇上に上がっているクラブの代表者が並ぶステージ後方、次にフロートの周囲でステージを見守るパレードの参加者たちへと、順番に頭を下げた。
 高まる気持ちをなんとか抑えながら、語り続ける。
「また、パレードを見守り、盛り上げてくれた観客のみなさんにも、あらためて感謝します」
 今度は、ステージ前方の観衆に向かって、再び深々と頭を下げた。
 ステージの前からは、大きな拍手が起こった。
「ありがとうございます。こうして、声援をもらえるのも、無事にパレードをやり遂げることができたからかな……」
 客席の歓声に応えながら、慎重に次に話す言葉を選び、再び表情を引き締める。
「ここで、少しだけ《自分語り》をさせてもらいたいんだけど――――――」
 そう言ってから、少しだけ砕けた口調で語らせてもらうことにした。
「実は、今日、パレードで歌った『Twist and Shout』を大勢の人の前で披露するのは、自分自身二度目なんだ……ただ、仲良くなった同い年の子にレッスンを付けてもらって、練習を重ねて挑んだ一度目の機会は、緊張してしまってグダグダなまま歌い終わるという情けない結果に終わってしまってさ……だから、自分としては、どうしても、この歌をカッコよく歌いきって、以前、オレにレッスンを付けてくれた、その子に、成長した自分の姿を観てもらいたい、って思ってたんだ――――――」
 そこまで語り切ると、ステージの前から、今度は穏やかな調子の拍手が湧いた。
 ステージ上で熱心に語る彼のかたわらで、誰よりも真剣に、その言葉に耳を傾けている人物がいる。
 白草四葉は、ステージの中央で、客席に向かいながら語る黒田竜司に目を向けて、彼の口から紡がれる一言一句を聞き漏らすまい、と注視していた。
 すぐそばで、竜司と四葉から発せられるただならぬ雰囲気を察した寿美奈子は、少し離れた位置で後輩たちを見守る花金鳳花に、
(この二人、このあと、何をやらかすつもりなの?)
と、アイコンタクトを送る。
 一方の鳳花は、われ関せず、と言ったようすで、わずかに首を傾げ、
(あとは、若い二人に任せましょう? なにかあれば、キチンと責任は取らせるから)
と、軽く微笑んで見せた。
 現場での責任を放棄したかのような同級生の仕草に、吹奏楽部副部長は、
(ハァ……もう、どうなっても知らないからね……)
と、苦笑して、ことの成り行きを見守ることに決めた。
 ステージ前方からの拍手を受けて、オレは、これまでよりもマイクを強く握り、決意を固めて、大きく深呼吸をする。
 そして、息を整えてから、ゆっくりと言葉を発した。
「だから、『Twist and Shout』を歌いきり、パレードを成功させることができた今日は、オレの想いを、彼女に、伝えさせてもらおうと思います!」
 言葉を区切りながら語られた、魂の叫びに近い言葉は、ハウリングを起こす直前のボリュームで校内に響き渡り、同時にステージ前の客席からは、
「「「おお……!?」」」
というどよめきが沸き起こった。
 壮馬の監視する《ミンスタライブ》の画面は、これまで以上に大量のコメントで埋め尽くされる。
======================
なになになに!?
サプライズ、キタ━(゚∀゚)━!
これ、もしかして愛の告白?
いったい、どうなるんでがす?
ざわざわwwwwwwwww
生中継見てて良かった!
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 ここで、ステージ前の観衆のボルテージと、ステージ上のざわめきを肌で感じ取った寿副部長が、マイクを固く握り、
「おおっと! ここで、本日のサプライズ企画のお披露目か〜?」
と、アドリブによる実況を試みる。
 彼女の一言で、竜司の突然の絶叫に戸惑い、状況について行けていなかった観客たちも、状況を掴んだようで、客席のざわめきは、さらにボリュームを増していった。
「さぁ、はたして、二年生の男子、黒田竜司くんは、何を語るのか!?」
 突如として始まった打ち合わせなしの寿先輩のアナウンスに戸惑いながらも、最後の決意を固めたオレは、マイクを両手でグッと握りしめる。
「あの時、見せられなかったオレのベスト・パフォーマンスを見てもらうことができたと思う……今日の歌をシロに捧げる! だから――――――」
 彼は、ここで、一拍、間を置いて、同級生の方に身体を向け、
「白草四葉さん、オレと付き合ってください!」
思いの丈をシャウトした――――――。
「「「う、うおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」
 ステージ前の客席からは、これまでに無い地響きのような歓声が鳴り響いた。