第6話 盗賊の巣窟
ー/ー洞窟の前まで来た。
もちろんいきなり突っ込むような事はせず、木陰に隠れて入口の様子を見る。
今は、洞窟の入口には誰もいないようだ。
「姜芽、どうだ?」
「誰もいないな。今がチャンスだ」
「そうか。よし」
俺達は素早く洞窟の入口に近づき、その左右に張り付いた。
そして、中を覗き込む。
洞窟の中は随所の壁に松明が置かれており、灯された火が豆電球のように暗い洞窟内を照らしている。
「薄暗いな…」
「松明だとこんなもんだ。さあ、行こう」
樹を先頭に、俺とキョウラが後からついていく形で進んでいく。
洞窟は基本一本道…と思いきや、間もなくして分岐点が出てきた。
「これは…どっちに行けばいいんだ?」
「とりあえず、右に行こう」
そう言った理由は、特にはない。
何となく、である。
しばらく進むと、一人の盗賊が現れた。
「うん?誰だ…」
言わせる前に、樹が棍で殴り倒した。
しかし、相手を一撃で気絶させるとは…恐るべき力だ。
それを見て、ふと気になった。
「…なあ、樹は結局何ていう種族なんだ?」
「言ってなかったっけ?オレは探求者って種族だぜ」
「探求者?」
「そうだ。豊かな感受性と想像力を持ち、興味のある事についてとことん知ろうとする、冒険種族さ」
「冒険種族…ねえ。つまるところ、冒険家気質の種族、ってことか?」
「まあ、そんなとこだ。だからな、今まで色んな所で冒険を繰り広げて来たんだぜ?」
正直、それは羨ましい。
そう話している間にも、盗賊がまた一人現れた。
これは、俺が斬り倒した。
樹は、その死体を何やらじっと観察した。
「何してんだ?」
「いや…こうして見ると、やっぱり防人だなー、って思ってな」
「防人…やっぱり、こいつら異人だったのか。てか、なんでわかるんだ?」
「なんで…って言われてもな。異人は他の異人に会うと、本能的に相手が同族か否かわかるもんだからな」
そんなもんか?と言おうとして、ふと気付いた。
そう言えば、さっきから俺は樹に妙な他人感を感じていた。
まるで、「仲間」ではないかのような。
もしかして、そういうことだったのだろうか。
「ま、防人も探求者も根本は同じ種族だし、哀れみがないと言えば嘘になるけどな」
「ありゃ、そうなのか?」
「ああ。防人と探求者は、共に人間が昇華…まあ、要は進化、した種族だ。だから、根本的な意味では仲間なんだよ」
「へえ…」
人間が進化した種族、というのはなかなか心を震わせてくる響きだ。
昔、ネットで未来の人類の予想図を見た事があるが、正直化け物にしか見えず、めちゃくちゃ不安になったものだ。
それだけに、こういう人間とほとんど変わらない外見の進化系種族を見ると、なんか安心する。
さらに先へ進むと、やたら広い空間に出た。
あちこちに木箱や樽が置かれており、仮設拠点のようになっている。
あの木箱とか樽には、何が入っているのだろう。
水や食料か、はたまた人々から奪った金品だろうか。
「っと、来たぞ!」
数人の盗賊が奥から現れた。
まあ俺達と戦うために出てきた訳ではなかろうが、それでもこちらを見るなり素早く反応して襲いかかってきた。
基本的には樹があしらってくれて、倒し損ねた奴を俺とキョウラで倒していく。
剣は使わず、魔法だけを駆使して戦うキョウラに、樹が声をかけた。
「キョウラ、魔力は大丈夫なのか?」
「はい。今は、白魔法を使っていますので」
「そうか。なら大丈夫だな」
また知らない単語が出てきた。
「白魔法?」
「白黒魔法と呼ばれる魔法のうち、光属性をメインとした魔法の名称です。魔力ではなく、自らの命を削って放ちます」
「自らの命…って」
「大丈夫です。削ると言ってもごくわずかですし、それに…」
と、ここで再び盗賊が現れる。
キョウラはそいつに手を向けて、「[リスペア]」と唱えた。
すると、盗賊の体から青い霧のようなものが抜け出し、キョウラの体に吸い込まれた。
そして、盗賊は倒れた。
「え…今のって…?」
「[リスペア]、他者の生命力を吸収する白魔法です。これがあれば、どれだけ体が傷ついても大丈夫なんですよ」
「は、はあ…」
恐ろしい魔法である。
そういうのって、闇魔法のイメージがあるのだが…。
と、樹が喋りだした。
「白魔法は、修道士の他に僧侶、司祭、神官、賢者、あと陰陽師…が使える魔法だったと思う。黒魔法ってのは、祈祷師とか魔法使い、あとは魔女とかが使ってる魔法だな」
「結構いるんだな。まさか、それ全部異人の種族か?」
「ああ。僧侶と司祭は修道士の上位種族で、神官は僧侶の亜種だ。賢者は術士と大賢者の間の種族。祈祷師は修道士と対を成す闇使いの種族で、呪術師を経て陰陽師になる。魔法使いは、魔導士を経て魔女か魔王になる」
なんか…すごい事になってるようだ。
てか、魔王って…それこそRPGでよく聞く単語だ。
「上位種族…って」
ようは、上級職みたいなものか。
もう、この世界はロープレの世界って認識でいいんじゃないだろうか。
「ま、RPGの上級職みたいな感じだと思ってくれればいい。…あれ、姜芽ってRPGやったことあるっけ?」
「あるよ。あまりやったことないけど」
俺だって、ロープレくらいはやった事ある。
◯Fとか、テ◯ルズとか。
「なら、基本は大丈夫そうだな。この世界は基本的にロープレの世界だと思ってもらえばいい。ロープレと通じる所が多々あるから」
「そうだろうなと思ったとこだよ。っと、まず先に行こう」
次の部屋には、盗賊がいっぱいいた。
恐らく10人…いや、20人はいるだろう。
これだけの数を一気にさばくのは、骨が折れそうだ。
当然、そいつらは一斉にこちらに気づいて向かってきた。
「一気に相手にしようとするな。1人か2人ずつ倒していけばいい」
「わかった」
樹の助言を受けて、俺はまず「アクスカッター」を飛ばす。
こんな事を言うのもなんだが、これはただ斧を投げるだけの技だ。なので、大した威力もないだろうと思って1人を倒すつもりでやったのだが、それでも3人くらいまとめて倒せた。
斧を投げられただけで、死ぬものなのか。
そこは、異人も人間と同じなのだろうか。
それを見て向こうも斧を投げてきたが、速度が遅い上に俺のものと比べるとずっと小さいものだった。
これなら避けるのは容易い上、仮に当たったとしても頭にでも当たらない限り、致命傷にはならないだろう。
ついでに、今斧を投げた奴にキョウラが魔法をぶちこんでくれたのでカウンターの手間も省けた。
「棍技 [海竜衝]」
樹は棍に水をまとわせ、華麗に舞って盗賊を倒していく。
俺も負けじと技を繰り出す。
「斧技 [水平割り]」
斧を横に振るって、相手の胸を切り裂く。
振る高さによっては、首を落としてそのまま即死させることもできた。
俺はそんな力はないのだが…どうやら、斧は扱いに癖があるが、その分破壊力がある武器らしい。
そう言えば、人間界のゲームとかアニメの主人公で斧使いって見たこと無い気がする…。
なんでだろう。
まあ、俺としては強ければOKなのだが。
「[ディヴァイン]!」
キョウラは相手の頭上から柱状の光を叩きつけ、盗賊を倒す。
さらに、その後ろから来ていた盗賊に対しては、
「[ブライト]!」
自身の頭上に丸い光を召喚し、そこから強烈な光をビームのように放って攻撃した。
あれも白魔法なのだろうか。
見た感じ、光魔法のように見えるのだが。
キョウラが魔法を使える事に少しばかり嫉妬も感じたが、聖女って魔法で戦うイメージがあるので、なんかある意味で納得できた。
そんなこんなで、ついに盗賊は全滅した。
「あとは、ボスを倒して終わりだな!」
樹がそう言った。
「ボス…即ち親玉、ですか。それを倒せば、もうこの辺りの人々は怯えずに済むのですね…」
「そうだな。…よし、気合い入れて行こうぜ!」
そして、ここからは俺が先陣を切って進む。
いよいよ、ボス戦だ。
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