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Side - 15 - 85 - くさいのいやぁ・・・ -

ー/ー



Side - 15 - 85 - くさいのいやぁ・・・ -


「・・・それで、この文字の組み合わせでハンターギルド、と読みます、分かりましたか?」

「ミューラーせんせぇ、これはなんて読むの?、屋台の裏に捨ててあったのを拾ったの」

「どれどれ・・・これは肉串大安売り、3本で400ギルって書いてあります」

「400ギル・・・私が一日中街のゴミを拾ってもらえるお金・・・10ギルなの・・・400ギルって安いの?・・・私買えないの・・・ぐすっ・・・」

「泣かないで、ユーリちゃん、いっぱいお勉強して、文字や計算を覚えたら・・・」

「覚えたら?・・・買えるようになる?」

「・・・なるかもしれないね、頑張ろう」

「うん」

「明日は私が喋ってる言葉を文字に書く試験をしますね」

「はーい」





「お姉ちゃん、はいこれ」

「うん、ありがとう」

「嬢ちゃん、今日はこれしか無いんだ、次はもっと持ってくるからよ」

「おじさん、気にしないで下さい、ある時だけで良いですよー」





「セシル嬢ちゃん、なかなかやるな、最初に計画を聞いた時はそんなの誰も来ねぇだろって思ったが・・・俺も早くやってれば良かったぜ」

「えへへ、私ほとんど動けないからね、これくらいしか思いつかなかった・・・」

「ガキはもちろんいい歳した親父や婆さん連中まで来るとはな」

「文字が読めて計算が出来たら・・・ここに住んでる人達が騙されるような事も減るだろうし、お店に書いてある内容が分かって便利かなーって、みんな文字が読めるようになりたいって思ってたんだよ、習う機会が無かっただけでね」

「で・・・これだけ食い物が集まった訳だが・・・完全に腐っちまってるのもあるな・・・あのガキども・・・」

「仕方ないよー、あの子達も自分が食べるのに精一杯だろうし・・・」

「お人好し過ぎるだろ・・・」

「でも私が自分の力で食料を集める方法・・・これしかないし・・・」

「さて食えるものと食えないもの分けるぞ」

「うん!」





こんにちは、私の名前はセシル・ミューラー12歳、訳あってローゼリア王都の地下深く、迷路のようになっている古い下水路に住むおじさんに拾われて一緒に住んでいます。

拾われた時私は怪我をしていました、その治療・・・傷にお酒をかけただけだけど・・・の為におじさんの全財産を使わせてしまって、それに私の食べるものまで確保しなくちゃいけなくなっておじさんは食料調達の為に走り回る事に。

それが申し訳なくて私が提案したのです。

ここに住んでいる文字が読めなかったり計算が出来ない子供達に私が勉強を教えよう、お礼はなんでも良いけどできれば食料が嬉しいな・・・おじさんに頼んで周りに住む人達に話を広めてもらったら子供達が沢山やって来ました。

子供達の親は自分が読み書き計算が出来ずに苦労していたから子供達には勉強させよう、そしたら地上で仕事につけるかもしれないし、ハンターになれるかも・・・そう考えて子供にお礼の食料を持たせて私の所に通わせる事にしたようです、中には自分も習いたいと言う大人の人も・・・。

このお勉強会を始めて10日、私も人に教える事に慣れてきて住人や子供達にも分かりやすいと好評です。

地下の下水路は真っ暗で、灯りはゴミ捨て場から拾って来たオイルランプが3つ、燃料は廃油として捨てられていた油を拝借して使っています、おじさんが拾ってきた木炭を使い下水路の床に文字を書いて教えているのです。

怪我をした私の足は・・・血は止まったものの傷が深くまだ痛いです、それに力が入らなくて一人では歩けません、おそらくもう二度と・・・。

「うん、2人が食べる分くらいはあるね」

「あぁ、そうだな・・・おっと、酒もあるじゃねぇか、こんなの持って来るのは・・・ベニーの奴かな」

「ベニーさん頭が良いよね、この間まで文字が全然読めなかったとは思えないよ」

「ここにはそんな奴腐るほど居るぜ、このクソみたいな場所で今まで生き延びて来たんだ、それなりに知恵もあるし頭もいい、馬鹿はここでは真っ先に死ぬ」

「それにおじさんも凄いよね、才能ありそうな子に魔法陣教えてるし・・・何者?」

「ただの浮浪者のおっさんだが」

「そんな事ある訳ないでしょ!、魔法陣だよ、それを中級まで起動できるなんて・・・もしかして元貴族?」

「こことは別の大陸の生まれだが・・・あまり素性は明かしたくない、それに上では何やら俺の事を嗅ぎ回ってる奴が居てな・・・念の為にしばらく上には行かない事にした」

「え・・・私の飲み水は?・・・まさかまた腐った雨水?、嫌ぁ・・・もうお腹痛いのや下痢は嫌ぁ!」

「安心しろ、ガキどもに謝礼の代わりに水を汲んで来てもらってる、だが洗濯や水浴びはしばらく我慢だな」

「わーん!、やだぁ・・・臭いのいやぁ・・・」

「贅沢言うな、傷を洗う水くらいは確保してやるが全身は無理だぞ、それと毎日傷は洗って靴を履いて寝ろよ」

「うん、私は学習したの、傷を出したまま寝ると虫が寄ってきて幼虫がわくの」

「ははは、この前なんてセシル嬢ちゃん「いやだぁ!おじさん取ってぇ!」なんて泣きながら絶叫してたよな」

「あれほんとに気持ち悪かったんだよ!、今も夢に出るくらい・・・」





「おはよー」

「せんせぇおはよー」

「お姉ちゃんおはよー」

「あれ、今日は少ないね・・・さては試験するって言ったから逃げた?」

「ううん、隣のおじさんがねー、昨日の夜中に下水路の浅い所で魔物を見たって、だから大人達はみんなで見回りしてるの」

「魔物?」

「あぁ、俺もそれは今朝早くにベニーの奴から聞いたぞ、だから昼からは俺も見回りに出る・・・ったく何の魔物だろうな、ここは王都だから何年も魔物なんて出なかったのに」

「あのね、白くてすっごく大きかったって、牙もすごいの」

「そりゃおっかねぇな、肉が食えればいいんだが・・・美味けりゃ尚良いな」

「おじさん・・・討伐する気満々だね」

「あぁ、だが派手には戦えねぇ、下手すると騎士や衛兵にこの下水路の存在がバレるからな、ここは一番深いとこだから大丈夫だろうが知られたら治安の為なんて言って追い出される可能性がある、そんな事になったら俺達は行き場が無くなっちまう」








「は・・・初めまして・・・シルヴィア・ヒンニュウスキー・・・です・・・ふひっ・・・」

「・・・あぅ・・・こ・・・こんにちは・・・ふひっ・・・リーゼロッテ・・・です・・・」

「待て待て!、人見知り同士だとこんな酷い会話になるのかよ!」

「だってぇ・・・ドックおじさん・・・」

「博士ぇ・・・初めて会う人怖くて」

こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳・・・もうすぐ16歳になるのです!。

今日は博士のお友達の娘さんと会う為にヒンニュウスキー家の王都邸に来ています、上級貴族らしく大きなお屋敷で、赤を基調にした極彩色の個性的な内装、まるで理世だった頃にお父さんに見せられた映画のサスペリアに出て来そうな感じ・・・。

実は知らなかったのですが私のお家・・・シェルダン邸から通り2つほどしか離れていないご近所さんでした。

「あの・・・娘をよろしくお願いします」

「は・・・はひっ・・・」

私に声をかけて来たのはダリオ・ヒンニュウスキー様、このヒンニュウスキー家の当主で法務大臣をされています、今日は娘さんのためにお仕事をお休みして診察に同席しています」

「本当に娘の痛みが無くなるのでしょうか・・・」

「はい・・・おそらく大丈夫かと」

そう私に尋ねたのは奥様のフィオーレ・ヒンニュウスキー様、とても美人さんなのです!。

「あぅ・・・痛い・・・痛いよぉ・・・」

そしてベッドの上で痛みに耐えている女の子は今回の患者で呪いの刃の被害者、シルヴィア・ヒンニュウスキーさん、今年で15歳になる女の子です。

「ひそひそ・・・」

「あぁ、ダリオ・・・事前に言ってあったから知ってると思うが嬢ちゃん・・・俺の弟子は極度の人見知りでな、他人と話すと時間がかかるしきちんと伝わるか怪しい、だから俺が通訳してやる」

「頼む・・・」

「さて、弟子の身体を見てくれ、今は上着を着てるから分かりにくいが、下に着てるのが呪いの進行や痛みを止めるスーツだ、おい嬢ちゃん脱げ」

「え・・・うん」

ぬぎぬぎ・・・

「見ての通り少しえっちだが我慢してくれ、布地の裏の魔法陣が呪いを吸い出して服に溜まるようになってる、交換は5日に一度が最適だが10日までならおそらく大丈夫だ、但し5日過ぎた頃から元の痛みに少しずつ戻って10日でほぼ効果が切れるから我慢しないで早目の交換が必要だ・・・嬢ちゃんスーツをめくって腹を見せろ」

ぺらっ・・・

ねばぁ・・・

「なっ・・・紫色の液体?」

「この液体は薬液だ、服を着る前に全身に塗ってもらう事になる、見た目は毒々しいし少し香料の匂いはするが無害、布で拭き取れば綺麗に取れるから安心してくれ、ただ・・・俺も身体に塗ってみたが相当気持ち悪い」

「服から染み出さないのだろうか・・・」

「防水の魔法陣を裏地に仕込んであるから外に漏れ出す事はない、・・・手洗いに行って排泄する時には肌に触れた周りが汚れるだろうが・・・その辺は試作品だから我慢してくれ、可能な限り改善するよう努力する」

「分かった・・・」

「このスーツは使い捨てだ、再利用できない事もないが手間がかかり過ぎて新しく作った方が早いらしい、5日に一度、弟子からこの転移魔法陣で新しいスーツが屋敷に届くようにしておく」

「この魔法陣はもらって良いのか」

「あぁ、弟子から直接スーツを届ける為の物だから他の場所に転送はできない、使い終わった後のスーツもこれに乗せて弟子に送ってくれ、それから連絡したい事があれば手紙も一緒に送ると折り返し返事を出す」

ささっ・・・

「これがスーツの現物・・・上と下、手袋と靴下で1セットだ、全部で3着あって2着は予備だ、弟子が忙しくて5日に一度対応できない時は予備を使ってくれ」

「これでようやく娘が楽になるのか・・・ありがとう、本当にありがとう」

「あの・・・私も同じだから・・・この娘の痛みや苦しみは・・・よく分かるの・・・でも被害者全員分は・・・どんなに頑張っても用意できないの・・・だからこの事は絶対に他言しないで欲しい・・・」

「分かりました、リーゼロッテ嬢、必ず約束は守ります」

「なぁダリオ、メイドや使用人の身内に被害者は居ないのか?、そこから漏れても困るのだが・・・」

「確かに下級貴族家の者だが2名ほど居る・・・彼らも苦しんでいるし娘の事で情報交換もしていた、できれば融通してもらいたかったのだが・・・」

「嬢ちゃん、そんな嫌そうな顔するなよ、だが無理なら無理と言って良いぞ」

「あの・・・他にも1人約束してるの・・・1つ作るのに1日か2日かかるの、・・・だから3人分だと5日おきに新しく用意するの無理っぽいの・・・私もお仕事あるし・・・これにかかりっきりになって過労で倒れちゃう・・・だけど10日おきに3人分なら・・・なんとかできると思う」

「だが9日目や10日目には痛みが酷くなるだろう」

「うん・・・それでも良いなら3人分・・・作るよ」

「それでお願いできますか・・・」

「ダリオ、お前らしいな、普通の貴族なら使用人の分を断ってでも自分の娘を優先させるだろうに・・・」

「あぁ・・・だがここで使用人2人の子供を見捨てたら私は自分が許せなくなる」

「使用人さんにも・・・口止めの徹底をお願い・・・これ以上数が増えたら私の限界を越えるの」





「博士ぇ・・・この娘を診察するから・・・」

「そうだな・・・ダリオと俺は男だから見られたら嫌だろう、部屋を出よう」

「あぁ分かった」

バタン・・・

「・・・ドック、リーゼロッテ嬢に負担をかけてすまない、だが娘がこれ以上苦しむのを見ていられないんだ」

「分かってる、今のスーツは試作品だから今後改良して交換時期を伸ばす努力をするつもりだ、20日に1回程度なら嬢ちゃん・・・弟子の負担も減るだろうしな」

「量産はできないのか?、それに陛下にもこの事は隠すのか?」

「俺も検証したが制作に特殊な工程が多過ぎる、魔法陣にしたって弟子の手作業だ、おそらく無理だろう、陛下には相談して味方に付けるそうだ、主にこの事が他の被害者に漏れそうになったら情報を握り潰すのに協力してもらう」





ガチャ・・・

「終わったの・・・入っていいよ」

「シルヴィちゃん?」

「お父様ぁ、凄い!、凄いの!、傷が痛くないの・・・ぐすっ・・・ほら動いても大丈夫・・・あぅ」

「シルヴィちゃんいきなり動いちゃダメ、今までほとんど寝たきりだったのに・・・」

母親のフィオーレ様が転びそうになったシルヴィアさんを抱き締めました。

「・・・うぅ・・・うぉぉぉぉ!、娘が・・・シルヴィちゃんが笑ってる・・・ドック!、リーゼロッテ嬢!、本当に感謝する、ありがとう!」

ダリオ様が周りの目も気にせず鼻水と涙を流して号泣しています、面倒だったけど作ってあげて良かったのです。

「レオーネ王国のお姉様にも連絡しなきゃ、従姉妹のレイアちゃんもすごく心配してたし・・・早くお手紙を出して安心させてあげないとね」

「そうだな、義姉様には奇跡的に体調が良くなったと連絡しよう」

「レイアちゃんかぁ、また一緒に遊びたいな・・・でもお父様、お母様・・・この格好少し恥ずかしいの」

「・・・確かにえっちだ」

「・・・それはどうしようもない」

「・・・あの・・・言いにくいのですが・・・そのスーツの上に・・・服を着る度に効果が減るから・・・上に何も着ないのが一番好ましいの」

「え・・・嘘・・・」

「着ても良いけど・・・重ね着すると傷が痛くなると・・・思う」

「そんなぁ・・・」

「大丈夫・・・慣れたら平気・・・リィンちゃん・・・王女殿下もそれと似た服を喜んで着てるから・・・」



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「・・・それで、この文字の組み合わせでハンターギルド、と読みます、分かりましたか?」
「ミューラーせんせぇ、これはなんて読むの?、屋台の裏に捨ててあったのを拾ったの」
「どれどれ・・・これは肉串大安売り、3本で400ギルって書いてあります」
「400ギル・・・私が一日中街のゴミを拾ってもらえるお金・・・10ギルなの・・・400ギルって安いの?・・・私買えないの・・・ぐすっ・・・」
「泣かないで、ユーリちゃん、いっぱいお勉強して、文字や計算を覚えたら・・・」
「覚えたら?・・・買えるようになる?」
「・・・なるかもしれないね、頑張ろう」
「うん」
「明日は私が喋ってる言葉を文字に書く試験をしますね」
「はーい」
「お姉ちゃん、はいこれ」
「うん、ありがとう」
「嬢ちゃん、今日はこれしか無いんだ、次はもっと持ってくるからよ」
「おじさん、気にしないで下さい、ある時だけで良いですよー」
「セシル嬢ちゃん、なかなかやるな、最初に計画を聞いた時はそんなの誰も来ねぇだろって思ったが・・・俺も早くやってれば良かったぜ」
「えへへ、私ほとんど動けないからね、これくらいしか思いつかなかった・・・」
「ガキはもちろんいい歳した親父や婆さん連中まで来るとはな」
「文字が読めて計算が出来たら・・・ここに住んでる人達が騙されるような事も減るだろうし、お店に書いてある内容が分かって便利かなーって、みんな文字が読めるようになりたいって思ってたんだよ、習う機会が無かっただけでね」
「で・・・これだけ食い物が集まった訳だが・・・完全に腐っちまってるのもあるな・・・あのガキども・・・」
「仕方ないよー、あの子達も自分が食べるのに精一杯だろうし・・・」
「お人好し過ぎるだろ・・・」
「でも私が自分の力で食料を集める方法・・・これしかないし・・・」
「さて食えるものと食えないもの分けるぞ」
「うん!」
こんにちは、私の名前はセシル・ミューラー12歳、訳あってローゼリア王都の地下深く、迷路のようになっている古い下水路に住むおじさんに拾われて一緒に住んでいます。
拾われた時私は怪我をしていました、その治療・・・傷にお酒をかけただけだけど・・・の為におじさんの全財産を使わせてしまって、それに私の食べるものまで確保しなくちゃいけなくなっておじさんは食料調達の為に走り回る事に。
それが申し訳なくて私が提案したのです。
ここに住んでいる文字が読めなかったり計算が出来ない子供達に私が勉強を教えよう、お礼はなんでも良いけどできれば食料が嬉しいな・・・おじさんに頼んで周りに住む人達に話を広めてもらったら子供達が沢山やって来ました。
子供達の親は自分が読み書き計算が出来ずに苦労していたから子供達には勉強させよう、そしたら地上で仕事につけるかもしれないし、ハンターになれるかも・・・そう考えて子供にお礼の食料を持たせて私の所に通わせる事にしたようです、中には自分も習いたいと言う大人の人も・・・。
このお勉強会を始めて10日、私も人に教える事に慣れてきて住人や子供達にも分かりやすいと好評です。
地下の下水路は真っ暗で、灯りはゴミ捨て場から拾って来たオイルランプが3つ、燃料は廃油として捨てられていた油を拝借して使っています、おじさんが拾ってきた木炭を使い下水路の床に文字を書いて教えているのです。
怪我をした私の足は・・・血は止まったものの傷が深くまだ痛いです、それに力が入らなくて一人では歩けません、おそらくもう二度と・・・。
「うん、2人が食べる分くらいはあるね」
「あぁ、そうだな・・・おっと、酒もあるじゃねぇか、こんなの持って来るのは・・・ベニーの奴かな」
「ベニーさん頭が良いよね、この間まで文字が全然読めなかったとは思えないよ」
「ここにはそんな奴腐るほど居るぜ、このクソみたいな場所で今まで生き延びて来たんだ、それなりに知恵もあるし頭もいい、馬鹿はここでは真っ先に死ぬ」
「それにおじさんも凄いよね、才能ありそうな子に魔法陣教えてるし・・・何者?」
「ただの浮浪者のおっさんだが」
「そんな事ある訳ないでしょ!、魔法陣だよ、それを中級まで起動できるなんて・・・もしかして元貴族?」
「こことは別の大陸の生まれだが・・・あまり素性は明かしたくない、それに上では何やら俺の事を嗅ぎ回ってる奴が居てな・・・念の為にしばらく上には行かない事にした」
「え・・・私の飲み水は?・・・まさかまた腐った雨水?、嫌ぁ・・・もうお腹痛いのや下痢は嫌ぁ!」
「安心しろ、ガキどもに謝礼の代わりに水を汲んで来てもらってる、だが洗濯や水浴びはしばらく我慢だな」
「わーん!、やだぁ・・・臭いのいやぁ・・・」
「贅沢言うな、傷を洗う水くらいは確保してやるが全身は無理だぞ、それと毎日傷は洗って靴を履いて寝ろよ」
「うん、私は学習したの、傷を出したまま寝ると虫が寄ってきて幼虫がわくの」
「ははは、この前なんてセシル嬢ちゃん「いやだぁ!おじさん取ってぇ!」なんて泣きながら絶叫してたよな」
「あれほんとに気持ち悪かったんだよ!、今も夢に出るくらい・・・」
「おはよー」
「せんせぇおはよー」
「お姉ちゃんおはよー」
「あれ、今日は少ないね・・・さては試験するって言ったから逃げた?」
「ううん、隣のおじさんがねー、昨日の夜中に下水路の浅い所で魔物を見たって、だから大人達はみんなで見回りしてるの」
「魔物?」
「あぁ、俺もそれは今朝早くにベニーの奴から聞いたぞ、だから昼からは俺も見回りに出る・・・ったく何の魔物だろうな、ここは王都だから何年も魔物なんて出なかったのに」
「あのね、白くてすっごく大きかったって、牙もすごいの」
「そりゃおっかねぇな、肉が食えればいいんだが・・・美味けりゃ尚良いな」
「おじさん・・・討伐する気満々だね」
「あぁ、だが派手には戦えねぇ、下手すると騎士や衛兵にこの下水路の存在がバレるからな、ここは一番深いとこだから大丈夫だろうが知られたら治安の為なんて言って追い出される可能性がある、そんな事になったら俺達は行き場が無くなっちまう」
「は・・・初めまして・・・シルヴィア・ヒンニュウスキー・・・です・・・ふひっ・・・」
「・・・あぅ・・・こ・・・こんにちは・・・ふひっ・・・リーゼロッテ・・・です・・・」
「待て待て!、人見知り同士だとこんな酷い会話になるのかよ!」
「だってぇ・・・ドックおじさん・・・」
「博士ぇ・・・初めて会う人怖くて」
こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン15歳・・・もうすぐ16歳になるのです!。
今日は博士のお友達の娘さんと会う為にヒンニュウスキー家の王都邸に来ています、上級貴族らしく大きなお屋敷で、赤を基調にした極彩色の個性的な内装、まるで理世だった頃にお父さんに見せられた映画のサスペリアに出て来そうな感じ・・・。
実は知らなかったのですが私のお家・・・シェルダン邸から通り2つほどしか離れていないご近所さんでした。
「あの・・・娘をよろしくお願いします」
「は・・・はひっ・・・」
私に声をかけて来たのはダリオ・ヒンニュウスキー様、このヒンニュウスキー家の当主で法務大臣をされています、今日は娘さんのためにお仕事をお休みして診察に同席しています」
「本当に娘の痛みが無くなるのでしょうか・・・」
「はい・・・おそらく大丈夫かと」
そう私に尋ねたのは奥様のフィオーレ・ヒンニュウスキー様、とても美人さんなのです!。
「あぅ・・・痛い・・・痛いよぉ・・・」
そしてベッドの上で痛みに耐えている女の子は今回の患者で呪いの刃の被害者、シルヴィア・ヒンニュウスキーさん、今年で15歳になる女の子です。
「ひそひそ・・・」
「あぁ、ダリオ・・・事前に言ってあったから知ってると思うが嬢ちゃん・・・俺の弟子は極度の人見知りでな、他人と話すと時間がかかるしきちんと伝わるか怪しい、だから俺が通訳してやる」
「頼む・・・」
「さて、弟子の身体を見てくれ、今は上着を着てるから分かりにくいが、下に着てるのが呪いの進行や痛みを止めるスーツだ、おい嬢ちゃん脱げ」
「え・・・うん」
ぬぎぬぎ・・・
「見ての通り少しえっちだが我慢してくれ、布地の裏の魔法陣が呪いを吸い出して服に溜まるようになってる、交換は5日に一度が最適だが10日までならおそらく大丈夫だ、但し5日過ぎた頃から元の痛みに少しずつ戻って10日でほぼ効果が切れるから我慢しないで早目の交換が必要だ・・・嬢ちゃんスーツをめくって腹を見せろ」
ぺらっ・・・
ねばぁ・・・
「なっ・・・紫色の液体?」
「この液体は薬液だ、服を着る前に全身に塗ってもらう事になる、見た目は毒々しいし少し香料の匂いはするが無害、布で拭き取れば綺麗に取れるから安心してくれ、ただ・・・俺も身体に塗ってみたが相当気持ち悪い」
「服から染み出さないのだろうか・・・」
「防水の魔法陣を裏地に仕込んであるから外に漏れ出す事はない、・・・手洗いに行って排泄する時には肌に触れた周りが汚れるだろうが・・・その辺は試作品だから我慢してくれ、可能な限り改善するよう努力する」
「分かった・・・」
「このスーツは使い捨てだ、再利用できない事もないが手間がかかり過ぎて新しく作った方が早いらしい、5日に一度、弟子からこの転移魔法陣で新しいスーツが屋敷に届くようにしておく」
「この魔法陣はもらって良いのか」
「あぁ、弟子から直接スーツを届ける為の物だから他の場所に転送はできない、使い終わった後のスーツもこれに乗せて弟子に送ってくれ、それから連絡したい事があれば手紙も一緒に送ると折り返し返事を出す」
ささっ・・・
「これがスーツの現物・・・上と下、手袋と靴下で1セットだ、全部で3着あって2着は予備だ、弟子が忙しくて5日に一度対応できない時は予備を使ってくれ」
「これでようやく娘が楽になるのか・・・ありがとう、本当にありがとう」
「あの・・・私も同じだから・・・この娘の痛みや苦しみは・・・よく分かるの・・・でも被害者全員分は・・・どんなに頑張っても用意できないの・・・だからこの事は絶対に他言しないで欲しい・・・」
「分かりました、リーゼロッテ嬢、必ず約束は守ります」
「なぁダリオ、メイドや使用人の身内に被害者は居ないのか?、そこから漏れても困るのだが・・・」
「確かに下級貴族家の者だが2名ほど居る・・・彼らも苦しんでいるし娘の事で情報交換もしていた、できれば融通してもらいたかったのだが・・・」
「嬢ちゃん、そんな嫌そうな顔するなよ、だが無理なら無理と言って良いぞ」
「あの・・・他にも1人約束してるの・・・1つ作るのに1日か2日かかるの、・・・だから3人分だと5日おきに新しく用意するの無理っぽいの・・・私もお仕事あるし・・・これにかかりっきりになって過労で倒れちゃう・・・だけど10日おきに3人分なら・・・なんとかできると思う」
「だが9日目や10日目には痛みが酷くなるだろう」
「うん・・・それでも良いなら3人分・・・作るよ」
「それでお願いできますか・・・」
「ダリオ、お前らしいな、普通の貴族なら使用人の分を断ってでも自分の娘を優先させるだろうに・・・」
「あぁ・・・だがここで使用人2人の子供を見捨てたら私は自分が許せなくなる」
「使用人さんにも・・・口止めの徹底をお願い・・・これ以上数が増えたら私の限界を越えるの」
「博士ぇ・・・この娘を診察するから・・・」
「そうだな・・・ダリオと俺は男だから見られたら嫌だろう、部屋を出よう」
「あぁ分かった」
バタン・・・
「・・・ドック、リーゼロッテ嬢に負担をかけてすまない、だが娘がこれ以上苦しむのを見ていられないんだ」
「分かってる、今のスーツは試作品だから今後改良して交換時期を伸ばす努力をするつもりだ、20日に1回程度なら嬢ちゃん・・・弟子の負担も減るだろうしな」
「量産はできないのか?、それに陛下にもこの事は隠すのか?」
「俺も検証したが制作に特殊な工程が多過ぎる、魔法陣にしたって弟子の手作業だ、おそらく無理だろう、陛下には相談して味方に付けるそうだ、主にこの事が他の被害者に漏れそうになったら情報を握り潰すのに協力してもらう」
ガチャ・・・
「終わったの・・・入っていいよ」
「シルヴィちゃん?」
「お父様ぁ、凄い!、凄いの!、傷が痛くないの・・・ぐすっ・・・ほら動いても大丈夫・・・あぅ」
「シルヴィちゃんいきなり動いちゃダメ、今までほとんど寝たきりだったのに・・・」
母親のフィオーレ様が転びそうになったシルヴィアさんを抱き締めました。
「・・・うぅ・・・うぉぉぉぉ!、娘が・・・シルヴィちゃんが笑ってる・・・ドック!、リーゼロッテ嬢!、本当に感謝する、ありがとう!」
ダリオ様が周りの目も気にせず鼻水と涙を流して号泣しています、面倒だったけど作ってあげて良かったのです。
「レオーネ王国のお姉様にも連絡しなきゃ、従姉妹のレイアちゃんもすごく心配してたし・・・早くお手紙を出して安心させてあげないとね」
「そうだな、義姉様には奇跡的に体調が良くなったと連絡しよう」
「レイアちゃんかぁ、また一緒に遊びたいな・・・でもお父様、お母様・・・この格好少し恥ずかしいの」
「・・・確かにえっちだ」
「・・・それはどうしようもない」
「・・・あの・・・言いにくいのですが・・・そのスーツの上に・・・服を着る度に効果が減るから・・・上に何も着ないのが一番好ましいの」
「え・・・嘘・・・」
「着ても良いけど・・・重ね着すると傷が痛くなると・・・思う」
「そんなぁ・・・」
「大丈夫・・・慣れたら平気・・・リィンちゃん・・・王女殿下もそれと似た服を喜んで着てるから・・・」