Side - 184 - 17 - いちぞくかいぎ -
私の名前はエメリーナ・シェルダン15歳、ローゼリア王国の大貴族、シェルダンの分家に生まれました。
酷い父親のお小遣いのためにお金持ちの貴族、ナーリキーン家に売られ、そこで・・・とても恥ずかしい事をされていました・・・。
ある日、本家のおじさまがナーリキーン家の屋敷にいらっしゃいました、あの人達からは、「お前の姉の事を聞きたいと言っている、余計な事は喋るな」と言われ、客間に連れていかれました・・・。
瞳水晶を使って聞かれたのはお姉ちゃんの事ではなく私について、そして・・・私が受けた酷い仕打ちが明るみになり・・・私は今、シェルダン本家のお屋敷に来ています。
先にお風呂に入りなさいと言われてメイドさん達について浴室まで来ました、・・・でも私は・・・。
「・・・あの、すみません・・・私お風呂は一人で入りたいです・・・」
私と歳の近いメイドさん達は困惑し、そのうちの一人が少し年配のメイドさんを連れて来ました・・・メイド長さんでしょうか?・・・。
「旦那様からお嬢様のお身体に異常がないか確認するよう命じられております、せめて私一人でも確認させていただけないでしょうか・・・」
申し訳なさそうに私にお願いするメイド長さん・・・これから私はこのお家でお世話になる身、旦那様・・・という事はおじさまの意向でしょう・・・、従わない訳にはいきません。
「・・・はい・・・わかりました・・・ぐすっ・・・ひっく・・・うぅ・・・」
「・・・ではこちらへ」
とても広くて綺麗なお風呂、あのお家みたいに目に痛い金色の壁じゃないです・・・はっ・・・そんな事を考えてる場合じゃないの・・・これから私はこの人に・・・見られちゃう。
「どうか泣かないでくださいませ・・・お嬢様の心と身体の傷を確認させていただき、これから皆と一緒にゆっくり癒していきましょう」
「・・・はい・・・うぅ」
私は粗末なスカートとブラウスを脱ぎ下着姿に・・・メイド長さんが息を呑む音が聞こえて来ました・・・驚いているのでしょう・・・でもまだ・・・下着を脱ぎ・・・メイド長さんに全身を見られました。
下唇を噛んで恥ずかしいのを我慢していたのですが、私は耐えられなくなってその場で座り込み・・・泣き崩れてしまいました・・・。
「・・・お嬢様こちらへどうぞ、お湯を用意してありますからね」
メイド長さんが優しく声をかけてくれて・・・私は泣きながら隅々まで丸洗いされました・・・久しぶりの温かいお風呂・・・気持ちいいなぁ・・・。
・・・コンコン
「入れ」
「失礼します」
「エマさんか・・・彼女の状態は?」
「・・・あの・・・私・・・大抵のことには動じないつもりでしたが・・・あれは酷過ぎます・・・報告書はこちらに」
「・・・あぁ、ありがとう」
「こほん・・・では報告いたします、お嬢様は肌を見られるのを大変嫌がっておられましたので、私一人が浴室に同行して確認いたしました、先に連絡いただいた通り、腰のところに火傷の跡があります、それから・・・お嬢様の背中とお腹には大きな刺青・・・あの家の紋章と文字が彫られておりました」
「文字?」
「はい、口にするのも悍ましいのですが・・・「私はいやらしい雌豚です、メッチャー・ナーリキーンとその息子、トテーモの性処理の道具で所有物、どうぞ私を痛めつけて」と・・・」
「待て!、じゃぁリーナちゃんはクソ息子だけじゃなくてあの親父にも・・・」
「おそらく・・・あと、両方の乳首と・・・股間に貫通型の金属リング・・・拷問に使う目的で装着されたようで・・・3つとも継ぎ目が魔法で溶接されています、おそらく付けられた時には想像を絶するほどの痛みがあったものと・・・」
ドン!、バキッ・・・
「すまん、驚かせてしまったな、怒りで思わずテーブルを叩き壊してしまったよ・・・」
「はい、私もお嬢様がお風呂から出られた後、浴室の鏡を殴ってしまいました・・・勢い余って壁も少し・・・私のお小遣いから引いておいてくださいませ・・・」
「いや、いい、気にするな、気持ちは分かる」
「・・・」
「・・・今はどうしてるのかな?」
「お部屋に案内いたしました、メイド達には髪を乾かした後、リラックスできるお茶を淹れるよう命じてありますので今頃はお休みになられているかと・・・」
「・・・少し心配だね・・・安心して気が緩むのはいいが悲観して自害する可能性もあるな・・・アッツーシくん、天井裏で影に監視させよう、おかしな動きがある時は止めろと伝えておいてくれ」
「かしこまりました・・・」
「あの・・・お嬢様は向こうの家であのような事をされてよく自害されなかったですね、普通なら心が壊れてもおかしくないのに・・・」
「私も不思議に思って帰りに彼女に聞いた、死んだり使い物にならなくなったら家から逃げてどこかで暮らしている姉を探し出してお前のかわりにするぞって脅されていたらしい」
「・・・あぁ・・・何という事・・・」
「エマさん、辛い役目ありがとうね、これからもあの子の事を頼むよ」
「・・・はい」
「・・・ここまで大事になったか・・・仕方ないな、一族会議を開催するか・・・大伯父上達にはなんと言えばいいか・・・気が重いな」
私がこのお屋敷に連れてこられて15日、ようやくこのお部屋にも慣れ、家族の方達やメイドさん達とお話ししたり、お庭を散歩したり・・・とても穏やかな日が続いていましたが今朝になっておじさまの執務室に呼ばれました。
「リーナちゃんが受けたナーリキーン家での仕打ちへの後始末と、今後の事について一族会議を開く事になった・・・一族会議は知っているかな?」
「・・・はい、お勉強の時に家にあった本で・・・一族に大きな問題が起きた時、シェルダンの長達が集まって今後の事を決める会議・・・と」
「そうだね、で、明日の昼から会議が開催される、しばらく問題なんて無かったから随分久しぶりだ、今日の夕方辺りから我が一族の人々がお忍びでこの屋敷に集まる事になってる、会議の時にはみんなに紹介するよ」
「・・・はい・・・でも、私はなんて紹介されるのでしょう、・・・恥ずかしいな・・・お金で売られて、・・・性欲処理のための道具にされた女の子・・・とか?」
「大体の経緯は伝えてある、みんな尋常じゃなく怒ってる、リーナちゃんは恥ずかしがる事はないよ・・・って言っても恥ずかしいかな・・・君のお腹の中の子についてとか、君のお姉さんについて一族みんなで今後のことを考えようって相談する場だから顔は出して欲しいのだけど」
「はい、分かりました」
「・・・あと、君のお父さんも呼ばれてるから言いたいことがあれば遠慮なく言ってやりなさい、・・・私の予想では数日後に事故死か病死・・・なんて事になりそうだけど、君が殺すなって言うならそれもみんなで考えよう」
「・・・え」
おじさまが凄く怖い事をおっしゃられてたような気がするのですが・・・。
「・・・お父様がこのお屋敷に来ているのですか?」
「いや、逃げられたら困るからまだ何も言ってない」
「・・・明日までに来るのは無理なんじゃないでしょうか・・・私は王都まで護衛のハンターさんに連れられて10日以上かかりましたけど・・・」
「あぁ、転移魔法陣があるし無い所の人は大伯母様が迎えに行って連れて来る事になってる、君のお父さんは縛られて連れて来られるかもね」
「大伯母様?」
「そうだよ、我々の大伯母様・・・白銀の大魔導士様だよ、あの方もとても怒っていらしたから分家とナーリキーン家、無くなるんじゃないかなぁ・・・あと、君のお姉さんの事について先に話しておこう、辛い話になるのだけどね」
「はい、お姉ちゃんがどうかしたのですか?」
「ハンターの依頼でランサー大陸に行ってね、そこで魔物に襲われて大怪我をした、そこに住んでいる大伯母様がたまたま通りかかって助けたから命に別状はないしお話もできるんだけどね」
「・・・あの後ここに会いに来てくれた時、そのうち一緒に住もうねって言ってくれたのに・・・でもお姉ちゃんが無事でよかったぁ」
「あまり良くはないんだよ・・・魔物に襲われた時に右腕を食べられて左腕も動かない、胸から下に大火傷っていう相当な重傷でね、今は大伯母様のお家で療養してる、ハンターのお仕事はもう無理なんじゃないかな」
「・・・そんな・・・ハンターのお仕事楽しい、いっぱいお金貯めて一緒に暮らそうねって・・・ひっく・・・言ってたのに・・・もしかして私の為に危険な依頼を受けたんじゃ・・・ぐすっ・・・」
「あぁ、危険と言えばそうだね、熟練のハンターなら危険だって事を察知できただろうな・・・パートナーのハンターさんは金級に上がったばかりだったし気付かなかったのかも・・・危ないが巧妙に安全で美味しい依頼に見えるように作られていたようだ」
「・・・お姉ちゃん」
「会議の最後の方でナーリキーン家の2人も連れて来られると思うけど大丈夫かな?、ダメなら途中で退席していいからね」
「大丈夫・・・じゃないかも・・・でも、できるだけ最後まで見ておきたいな」
「分かった、じゃぁ明日までゆっくり休んでいてね」
「・・・はい」
お屋敷の3階にある会議室には沢山の人達が居ます。
丸い机を囲むように座っていて、大きな絵が飾っている前には小さな・・・お姉ちゃんくらいの背格好をした女の子、絵に描かれてる人と同じだぁ・・・あれが白銀の大魔導士様?、魔力量がとても多くて180歳を超えておられるとか。
「ロバートくん、この絵はなんなのですか!・・・恥ずかしいのです!、笑ってないでお父様も何か言ってよ」
「リゼお姉様・・・いや大伯母様、これは先々代が作ったものなので私に言われましても・・・お祖父様は可愛いなぁってよく眺めてましたけど」
「エリちゃんのお兄さんかぁ・・・あのクソガキ・・・」
大伯母様・・・リーゼロッテ様の右隣には30歳半ばくらいのご夫婦、お父様って呼ばれてたからお二人は大伯母様のご両親、アーノルド様とマリアンヌ様ですね・・・その隣、20代くらいの女性のようなお顔をした冷たい雰囲気の男性・・・大伯母様をお姉様って呼んでおられたので弟のコナンザ様でしょうか。
大伯母様の左隣に座るワイルドで筋肉質な男性がナイフを出して舌で舐めていらっしゃいます、誰でしょう、・・・じっと見ていると隣に座っているおじさまが教えてくれました。
「あの方は大伯母様の叔父上、シルベスター様だよ、今は4人ともギャラン・ローゼリアに住んでおられる、だからあの方々も分家の動きに気付けなかった事を後悔しておられたよ」
そうでした、シルベスター様・・・この5人がシェルダン一族の頂点、大叔母様の開発した国家機密の術により不老となっているそうです。
・・・リーゼロッテ様の正面には私とロバートおじさま、おじさまの隣はご子息で次期当主のジョン・ポール様と弟のジミー様、あと妹様もいらっしゃいますが今回は欠席です。
私の反対側にはロバートおじさまの弟で王妹殿下に婿入りされたジョニーおじさま、そのお隣は先代の当主でロバートおじさまのお母様であるエミリア様。
丸机に座っている人はこれだけですがお部屋の周りには机が置かれていて、そこにもシェルダン家の血族の方々が10数名ほど座っておられます。
この人達が今の統一王家と並ぶ大貴族、シェルダン家の一族です・・・うぅ・・・私、とても場違いなところに来てしまいましたぁ・・・怖いです・・・おじさまは私の手を優しく握ってくださっていますが・・・。
「では始めましょうか、皆様お忙しいところ集まっていただきありがとうございます、王家の目がありますので盛大な夜会は開催できませんが・・・この後ささやかな料理も用意しておりますのでお寛ぎください」
現シェルダン家当主のおじさまが挨拶します。
「まずは分家のシェルダンについての現状を説明します、事の発端は先代当主であるエミリア・シェルダンの双子の妹・・・レミリア叔母上の娘、ユミリア・シェルダンが我々一族の反対を押し切って下級貴族の男を婿養子に迎えた事から始まります、当時は一族の間でも問題視されたので覚えていらっしゃるでしょう」
お部屋にいる皆様が深刻なお顔で頷きます、お父様問題視されてたんだ・・・。
「金遣いが荒く、自分が偉くなったかのように振る舞うあの男、娘が産まれた頃から表向きは優しい夫を演じていたようですが、裏では当主である妻に全ての仕事を押し付け自分は遊び呆けていました」
皆様のお顔が一層険しくなりました、怖いです・・・。
「事実が表に出なかったのは妻であるユミリアが夫を庇い、本家に対して虚偽の報告をしていたから・・・夫は仕事をしている、昔は遊び歩いていたが今は大丈夫・・・我々は騙されていたのです、特に問題は起きていなかったし本家を訪れた時にもおかしな所は無かった為発覚が遅れました、これは2人を見抜けなかった当主である私の責任であり、ここに謹んで謝罪いたします」
周りから声が聞こえてきます。
「やはり・・・」
「あれだけ反対したのに・・・」
「あのクソ野郎・・・」
「17日前、分家の娘であるアンジェリカが助けを求めてこの屋敷を訪れました、父親が母親に仕事を丸投げして散財している、1年半前に妹が金持ちの貴族に売られるという話を聞いた、本家に助けを求めようとしたが見つかり暴力を振るわれた、命の危険を感じたので屋敷を逃げ出し、領都から離れた街に隠れゴミを漁って生活していた・・・女性ハンターに拾われて王都まで連れてきてもらった、そういった内容でした」
「本家には上の娘が男と遊び歩いていて駆け落ちした、妹は偶然出会った金持ち貴族の令息に一目惚れして屋敷に押しかけており、そのまま結婚させる、妻は病に臥せっている、夫である自分以外を見ると錯乱するから見舞いは遠慮してほしい、医者に多額の薬代を請求されたから援助してほしい・・・そう報告を受けていたのですが、全て嘘である事が判明しました」
「アンジェリカからの報告を受け、私はその日に瞳水晶を持って下の娘、エメリーナが一目惚れして押しかけている筈の貴族家へ赴き、真偽を探りました、結果は・・・本人の尊厳がある為ここで口には出しませんが全て嘘だということを確認しました、詳細はお配りする資料に書いております」
・・・うぅ・・・読まれています、私があのお家でされた事が全部・・・恥ずかしくて消えてしまいたい・・・うぅ・・・ぐすっ・・・涙と鼻水が・・・。
ドン!、バキッ!
俯いて泣き出した私の後ろの机が3つほど折れました、何人かの人が分厚い筈の机を殴って叩き壊したようです、執事さんが手早く机を交換しています・・・あれ?、私の後ろに人の気配が・・・。
「・・・辛かったねエメリーナちゃん、気が付いてあげられなくてごめんね」
いつの間にか隣に来ていたマリアンヌ様が私を抱きしめて泣いておられます・・・。
「うぅ・・ぐすっ・・・うん・・・辛かったの・・・痛かったの・・・」
私も泣いてしまいました・・・会場のあちこちでも啜り泣く音が・・・。
「・・・ぞの後の・・・・ずぴっ・・失礼・・・その後の調査で分かった事があります、分家の婿養子であるアダムの実家は厳重に秘匿された呪術師の家系であり、妻のユミリアは術によって操られていたのではないかと推測されます、本人に確認しようとしたところ、ユミリアは4年前・・・つまり病に倒れた頃から亡くなっており遺体は行方知れず、更にその母親のレミリア叔母上も彼により殺害された疑いがあります」
「・・・あぅ・・・おがあざまぁ・・・死んじゃっでだの?・・・ぐすっ・・・ふぇぇ・・・」
ドン!
おじさまの報告を聞いてエミリアお祖母様は怒りで丸机を殴りました・・・パワー不足で机は折れていません・・・あ、手を押さえて痛がってます・・・初めて知りました、お母様が操られていて、お母様と・・・それにレミリアお祖母様も殺された可能性があるなんて・・・。
周りを見渡すと・・・。
ひぃっ!・・・このお部屋に居る人達全員の目が怖いです!。
「ユルサナイ・・・」
「・・・殺っちゃう?」
「もう殺っちゃおうよ・・・」
「コロス・・・」
「本人を呼んであるからこの後で言い訳があるなら聞こうか、おそらく誰も庇おうとは思わんがな、リーナちゃんはどうかな、あんなでも実の父親だ」
怖い顔で座っているアーノルド様が私に聞きました。
「・・・売られた瞬間からあの男を父親だとは思っていません・・・どうぞお好きなように・・・おそらくお姉ちゃんも同じ気持ちだと思います」
「ではそうしようか、みんな喜べ、誰も止める奴はいない」
「ナーリキーン家の方はどうしましょうか?、リーナさんにあんな酷い事をしたのですから・・・潰しましょう」
エミリアお祖母様が不穏な事を言い出しました。
「まぁ、タダでは済まさないつもりだが・・・さてどうしたものかな、直接潰したら王家に目をつけられるだろうし下手したらこっちが悪者になる、政略結婚したのだから嫁をどうしようが自由だって主張するだろうからな」
「暗殺・・・」
シルベスター様がナイフで机をゴリゴリやりながら物騒な事を呟きます。
「・・・あの!」
思わず声を出してしまいました。みんなの視線が私に集まります・・・怖いよぉ・・・。
「・・・当主様と子息は私に酷い事をしたので許せないのですが・・・領地経営をほとんど取り仕切っていた執事さんは2人と違って私に良くしてくれましたし・・・お家のメイドさん達も泣いている私に・・・身体を綺麗に拭いてくれたり、こっそりお菓子をくれました・・・お家を潰してしまうとその人達が路頭に迷うので・・・それだけは・・・」
「使用人には罪はないからな・・・だがあの2人をどうにかしたらそのうち家は潰れるだろう・・・」
ロバートおじさまが悩みます、すると腕を組んで考え込んでいたアーノルド様が私に向かって・・・。
「リーナちゃん、あの家の運営を勉強してたんだよね、執事さんと一緒なら任せても平気なくらいできるかな?」
「・・・はい、今も執事さんがお仕事のほとんどを取り仕切っていて、お給料を払いたくないから私に仕事を全部させてクビにするって・・・当主様が、・・・それを執事さんに言ったら、普通は怒って辞めてもおかしくないのに私一人でもできるように教えて貰えました、多分できるかと・・・」
「ならあのお家をリーナちゃんが乗っ取る・・・いや、慰謝料代わりに全部貰えばいい・・・元々あの家に嫁ぐ筈だったんでしょ、奴らも知り合いに言いふらして婚約手続きも済んでたみたいだし、そのまま話を進めてバカ息子と結婚しなよ」
私があの家を乗っ取る?・・・アーノルド様がとんでもない事を言い出しました。
「ナーリキーン家を名乗るのが嫌なら分家の方のシェルダンも潰れるだろうから、ナーリキーンのバカ息子が分家のシェルダンに婿入りしてシェルダンを名乗る、リーナちゃんに酷い事をしたあの2人は・・・ギャラン・ローゼリアで領地経営を学び直すって名目で連れ出して・・・その先で事故にでも遭ってもらおうか・・・どうだい?」
「それいいね!、事故じゃなくて・・・野盗っぽい奴らに連れて行かれて死ぬより酷い目に遭うっていうのはどうだ?」
シルベスター様が悪い顔で楽しそうに物騒な事を言い出しました・・・。
「あの家、金だけは持ってるからなぁ・・・どんな悪い事をして貯めたのかと思って一通り調べたけど意外とまともな事をしてるし法にも触れてない、おそらく執事さんが有能で一人で頑張ってたんじゃないかな、あの悪趣味な邸宅も全部潰してリーナちゃんの好きなように可愛く建て替えよう」
どうしよう・・・戸惑う私を置いてお話が進んで行きます・・・でも、私にとって悪いお話じゃないかも?。
「分家の動きに気付けなかったお詫びとして費用は全部本家で出そう、それまで使用人達はうちの本邸で再教育、建て直して新築になったところで向こうに移ってもらう、そしたら夫を亡くした可哀想な女当主としてあの家と使いきれない程の莫大な資産は君のものだ、お姉ちゃんとも一緒に住めるだろ」
おじさまも楽しそうに今後の計画を話しています。
「リーナちゃん、なんて素晴らしい考えだって顔してるね、もしナーリキーンの親族が文句を言っても君はシェルダンの一員だ、後ろにこわーいおじさんおばさんが居るからね、誰もそんな命知らずな事はしないだろう、誰か好きな人ができたら結婚してもいいし、後継が居なければうちの親戚筋から優秀な奴を養子に出せる」
「あの、ありがとうございます・・・あの家では酷い目に遭ったけど、教えてもらう領地経営は面白くて・・・昔から領地経営には興味があったのでやってみたいです」
「頼もしい領主様が誕生しそうだね、それじゃぁそんな感じでやっちゃおうか、ところで、君のお腹の中の赤ちゃんはどうする?、産むのかい、まだお腹も目立つほど膨らんでないし妊娠してそんなに日が経ってないようだが」
「自覚してからは・・・100日以上経っています、お腹も少し大きくなってきた気がします・・・赤ん坊に罪はないって考えようとしたのですが・・・いくら努力してもあの男の子供だと思うと愛せそうにないです・・・時々あの男と同じ髪と瞳の色・・・よく似た顔が私の中から出て来る夢を見て・・・私・・・おかしくなりそうで・・・ごめんなさい・・・」
「そうか、なら仕方ないな、腕のいい医者がいるから処置させよう」
「・・・はい、よろしくお願いします・・・ぐすっ・・・」