表示設定
表示設定
目次 目次




10

ー/ー



 不安がまったくないと言ったら、嘘になる。でも踏み出してしまったら、もう後戻りはできないから。少しでも「いい彼女」になるために頑張らなくちゃ。

 だから、ずっと傍にいてね……って言葉には出せないけれど、そう念じながら桔平くんに抱きついた。
 
「キ、キスは嫌じゃなかったからね」
「……だからさ。この体勢でそういう可愛いことを言われると、忍耐が必要なわけよ」

 桔平くんが苦笑する。
 なるほど。身長差があるから、抱きついて見上げたらいい感じで上目遣いになるわけで。これはなかなか効果的ってことね。ただ、キスするのは難しいかな。全然届かない……。

「ほら離れて。服、入れろって」

 こういう余裕がない表情を見られるのは、ちょっと嬉しい。大好きな人に可愛いって思われるためなら、少しくらいずるくなってもいいよね。たまに抱きついちゃおう。桔平くんにもっと可愛いって思われたい。もっともっと、私にのめり込んでほしいから。

 とりあえず洋服をクローゼットにしまって、歯ブラシとかコスメを洗面所に置かせてもらった。それだけで特別な感じがして、なんだかウキウキしてしまう。

 夕ご飯を食べていなかったから桔平くんがデリバリーを頼んでくれて、それが届くまでの間シャワーを借りた。浴槽もすごく広いから、のんびりお風呂に浸かったら気持ちいいんだろうなぁ。

 髪を乾かして部屋へ戻ると、絵の続きを描いていた桔平くんが手を止めて、じっと見つめてきた。
 
「愛茉のその格好、好きだわ。部屋着にメガネ」
「え、なんで? イモくさいのに……」
「分かってねぇなぁ。それが最高に可愛いんじゃん」

 すっごくニコニコしている。なんでこんなにダサい姿が可愛いわけ? ずっとコンタクトしているのが辛いから、仕方なくメガネかけているだけなのに。

 届いた夕ご飯を一緒に食べている間も、桔平くんは上機嫌だった。今日は本当に、桔平くんのいろいろな表情を見ている気がする。それが全部私に向けたものなんだから、こんなに嬉しいことはないよね。

 ご飯を食べたあと、桔平くんはまた課題の続きに取りかかった。さすがにもう邪魔はできないから、私はベッドに寝転がって本棚から拝借した画集を眺めていた。桔平くんの香りに包まれている感じがして、すごく心地いい。そうしてウトウトしているうちに、そのまま寝てしまった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 11


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 不安がまったくないと言ったら、嘘になる。でも踏み出してしまったら、もう後戻りはできないから。少しでも「いい彼女」になるために頑張らなくちゃ。
 だから、ずっと傍にいてね……って言葉には出せないけれど、そう念じながら桔平くんに抱きついた。
「キ、キスは嫌じゃなかったからね」
「……だからさ。この体勢でそういう可愛いことを言われると、忍耐が必要なわけよ」
 桔平くんが苦笑する。
 なるほど。身長差があるから、抱きついて見上げたらいい感じで上目遣いになるわけで。これはなかなか効果的ってことね。ただ、キスするのは難しいかな。全然届かない……。
「ほら離れて。服、入れろって」
 こういう余裕がない表情を見られるのは、ちょっと嬉しい。大好きな人に可愛いって思われるためなら、少しくらいずるくなってもいいよね。たまに抱きついちゃおう。桔平くんにもっと可愛いって思われたい。もっともっと、私にのめり込んでほしいから。
 とりあえず洋服をクローゼットにしまって、歯ブラシとかコスメを洗面所に置かせてもらった。それだけで特別な感じがして、なんだかウキウキしてしまう。
 夕ご飯を食べていなかったから桔平くんがデリバリーを頼んでくれて、それが届くまでの間シャワーを借りた。浴槽もすごく広いから、のんびりお風呂に浸かったら気持ちいいんだろうなぁ。
 髪を乾かして部屋へ戻ると、絵の続きを描いていた桔平くんが手を止めて、じっと見つめてきた。
「愛茉のその格好、好きだわ。部屋着にメガネ」
「え、なんで? イモくさいのに……」
「分かってねぇなぁ。それが最高に可愛いんじゃん」
 すっごくニコニコしている。なんでこんなにダサい姿が可愛いわけ? ずっとコンタクトしているのが辛いから、仕方なくメガネかけているだけなのに。
 届いた夕ご飯を一緒に食べている間も、桔平くんは上機嫌だった。今日は本当に、桔平くんのいろいろな表情を見ている気がする。それが全部私に向けたものなんだから、こんなに嬉しいことはないよね。
 ご飯を食べたあと、桔平くんはまた課題の続きに取りかかった。さすがにもう邪魔はできないから、私はベッドに寝転がって本棚から拝借した画集を眺めていた。桔平くんの香りに包まれている感じがして、すごく心地いい。そうしてウトウトしているうちに、そのまま寝てしまった。